MENU

「クイーン・オブ・ブラッド」はエイリアンの元ネタ? 

当サイトは「Googleアドセンス」や「アフィリエイトプログラム」に参加しており広告表示を含んでいます。
  • URLをコピーしました!

「B級映画の帝王」「低予算映画の守護神」として知られる映画監督 ロジャー・コーマンが2024年5月に亡くなった。
そのなかでも、1966年のSFホラー「クイーン・オブ・ブラッド」(Queen of Blood)は、門下生の若手スタッフに馬に喰わせるほど大量に製作した映画の一本なのだが、エイリアンとの類似性があるのだ。

目次

クイーン・オブ・ブラッドのあらすじ

宇宙旅行が日常化した1990年のアメリカ。ある日、国際宇宙研究所は奇妙な信号をキャッチする。解読してみると、それは異星人からのコンタクトであった。
異星人は代表者を二機の宇宙船に乗せ、地球へと派遣したという。だが異星人の乗った宇宙船は故障を起こし、火星へ不時着してしまった。

経緯を知った国際宇宙研究所は、女性をふくむ3名のクルーは、異星人の救助およびコンタクトを取るべく、ロケット型宇宙船に乗り込んで火星にむけて出発。
火星に到着したクルーは、墜落した異星人の宇宙船のうち一機を発見。宇宙船の内部を探索したところ異星人の死体があり、他の異星人はもう一機の宇宙船に救助されたと推測する。
助太刀として新たに2人のクルーが、別のロケット型宇宙船に乗って火星に到着。そうして遂に異星人と接触するが、それは罠だった。

クイーン・オブ・ブラッドはエイリアン?

観続けているうち「クイーン・オブ・ブラッド」はリドリー・スコットの名作中の名作「エイリアン」(1979)とストーリーに類似点が多いことが判明する。
正体不明の信号をキャッチして惑星へと到着する序盤から中盤。とりわけ宇宙服を着て火星を探索するクルーが宇宙船の残骸を発見するシーンは、吹き荒れる砂嵐を含めて「エイリアン」そのままに見える。

さて異星人と接触、自分たちの宇宙船に連れ帰ったクルーたち。肝心の異星人のデザインだが、女性の顔を緑色に塗って、なんとなく異星人っぽく見えるチープな衣装を着せたもの。
監督はカーティス・ハリントンであってもロジャー・コーマンの息がかかった、低予算映画なのだから仕方がない。
そんなチープな異星人とコンタクトを試みるクルーたちだが、さほど成果は上がらない。モヤついた気分で睡眠を取っていたクルーのうち1名が異星人に襲われ、吸血鬼のように血を吸われて死んでいく。

ここでも「エイリアン」とソックリなシーンが登場する。「エイリアン」の劇中、チェストバスターが胸から飛び出して死亡したクルーの遺体を、宇宙に遺棄するシーンがある。それと同じことを「クイーン・オブ・ブラッド」もやる。

異星人が攻撃的であることが分かった以上、迂闊に地球へと連れて帰るわけにはいかない。そう考えたクルーは研究所に連絡を入れる。だが議論のすえ「それはそれで貴重な学術的発見」と判断した研究所とクルーは、なんとか異星人を地球へと持ち帰るよう決定してしまう。
地球人の意向など意に介さず、ふたたびクルーを襲撃する異星人だったが、格闘のすえに倒される(ベッドのうえで自然死するような最期だが)。いよいよ地球へと到着するという瞬間、女性クルーは異星人が産み付けた卵が宇宙船内部にあることを発見した。

エイリアンのあらすじ

ここで『エイリアン』のストーリーを大まかに振り返っておこう。地球外知的生命体からのものと思われる信号をキャッチしたマザーコンピューターは、宇宙船の進路を変更。クルーを乗せて未知の惑星へと降り立つ。
そこには遺棄された異星人の宇宙船の残骸とエイリアンの卵があって、調査員は卵から生まれたフェイスハガーに身体を乗っ取られてしまう。

規則を無視して調査員を宇宙船に招き入れたクルーは、実のところ会社から「エイリアンを捕獲して生かしたまま地球に帰ってこい。クルーが全員死んでも構わん」と指令を受けたアンドロイドだった。
エイリアンに追われ死亡していくクルーのなかで、最後まで生き残って脱出したリプリー。しかし脱出艇にはエイリアンの卵が。

なんぼなんでも「クイーン・オブ・ブラッド」と「エイリアン」のストーリーは似すぎ、演出や映像や美術、SFXのクオリティを除けば、「クイーン・オブ・ブラッド」を観終わった私は少しばかり唖然としていた。

クイーン・オブ・ブラッドの製作と公開

そもそも「クイーン・オブ・ブラッド」の大半のシーンは、カーティス・ハリントンたちが撮ったものではない。
ソビエトのSF映画「大宇宙基地」(Nebo Zovyot 1959)を主に利用し、「火を噴く惑星」(The Planet of Storms 1961)と「Mechte navstrechu」(1963)を流用した映像だ。
デニス・ホッパーなどアメリカで撮影されたシーンは、だいたい1週間程度で撮影されたもので、やる気の出ないホッパーは終始、悶絶していた。

東西冷戦下、どうやってロジャー・コーマンはソ連の映画関係者とコンタクトを取り、あまつさえ商取引に成功したのか分からない。

まず「大宇宙基地」と「火を噴く惑星」だが、コーマンが雇っていたフランシス・フォード・コッポラやジャック・ヒルなど数名のスタッフに徹底した再編集を施させた。
サウンドトラックは一新、キャストはすべて英語吹替、一瞬では分らぬようソ連を示すアイコンは削除。オープニングにはアメリカの宇宙計画を説明する喧しいナレーションと展示映像をくっつけ、ラストにチープな宇宙怪獣を登場させた『燃える惑星 大宇宙基地』(Battle Beyond the Sun 1962)として公開した。

それでもロジャー・コーマンは投資額を回収できなかったか、まだ一儲けできると踏んだか、今度は『大宇宙基地』と『火を噴く惑星』をテレビ放映むけに『原始惑星への旅』(Voyage to Prehistoric Planet 1965)に再編集。さらにピーター・ボグダノヴィッチには貝殻で作ったビキニを着た若い白人女性のシーンを撮らせて、『金星怪獣の襲撃 新・原始惑星への旅』(Voyage to the Planet of Prehistoric Woman 1968)に再編集、公開させた。

『クイーン・オブ・ブラッド』はそうした、ソ連のSF映画を再利用した映画のうち一本、というわけだ。こうした商いを繰り返したことが、コーマンの「罪」に当たる側面である。
雇用を抑制していた大手スタジオの就職口から弾かれた新人を片っ端から業界入りさせた「功」の側面より、罪の側面ばかり目立ってしまう。

しかしダン・オバノンとロナルド・シャセットが制作した『エイリアン』のスクリプトが『クイーン・オブ・ブラッド』のストーリーと類似しているように、これらの映画を別の視点から観る者が当時いた。

ソ連のSF映画と『エイリアン2』

ターミネーター、エイリアン2、アビスなどが代表作で、「コーマン・スクール」出身だが、仕事のクオリティには自他を問わず厳しいことで業界関係者から恐れられている、ジェームズ・キャメロン監督。
それらのSFXスーパーバイザー、日本語で言えば特技監督を務めた人物にロバート・スコタック(Robert Skotak)がいる。

スタコックは8ミリカメラで撮影する自作のSFXの練習を重ねていた少年時代、コーマンが改変した一連のソ連製SF映画をドライブイン・シアターやテレビで観た。そして劇中のSFXを観て、大いに感銘を受ける。

実のところ、コーマンが改変したSF映画がソ連のものであることを、アメリカの観客は公開当時から知っていたらしい。スタコックは「『大宇宙基地』や『火を噴く惑星』は、キューブリックが『2001年宇宙の旅』で試みたSFXに先駆けていた」とインタビューで饒舌に語り、とうとう共産圏が崩壊する直前、ソ連のスタッフたちに会いに行った。

驚いたのはソ連のスタッフたちだ。「どうしてアメリカで公開できた?」「あの『エイリアン2』のシーン、どうやって撮った?」と訊ねること山のごとし。それはスコタックも同様だったが「貴方たちが手掛けたSFXは、沢山のアメリカ人が観ています。そして私みたいに夢中になったのです」と深く感謝を述べた。そして「あのシーンはどうやって撮ったのですか?」と、喜々と訊ねるのだった。

『エイリアン2』の劇中、エイリアン・クイーンの棲む惑星LV-426にキャラクターたちが突入するとき、そこには『大宇宙基地』や『火を噴く惑星』の記憶が横たわっている。『クイーン・オブ・ブラッド』を「監督」したカーティス・ハリントンも、『エイリアン』シリーズの元ネタとなったことが愉快であったらしい。

『ゴッドファーザー』から『タイタニック』までに至る蓄積のひとつに、ロジャー・コーマンが改変したソ連製SF映画はある。

クイーン・オブ・ブラッドは「スペース・ヴァンパイアQ」というタイトルでDVDが国内販売している。
気になった方はご視聴してください。

フォワード
¥1,285 (2024/09/16 18:11時点 | Amazon調べ)

※画像はイメージです。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

思った事を何でも!ネガティブOK!

コメントする

コメントは日本語で入力してください。(スパム対策)

目次