挨拶の時にいた子供は

お金を貯めるために築60年の古い3階建のアパートに引越し、部屋は2階の角部屋でしたので、上下左右の部屋へ挨拶に行きました。

古いアパート

隣には四十代ぐらいの男性が住んでいて、反対側の部屋に住んでいた男性は後に夜逃げして、その男を探しに警察がくるという事件が起きますが・・・その話はまた。
下の部屋は空き部屋で、上の部屋には30代ぐらいの女性と高校生の娘、それに人見知りするようで小さな男の子が後ろに隠れていました。

住み始めると、上の階から毎日のようにドンドンと子供が走り回る音が聞こえきます。
古いアパートですし、挨拶の時にある程度は予想していたので、元気な子どもだと微笑ましく思うぐらいです。
それ以外はこれといったトラブルもなく四年が経過し、ある程度のお金が貯まったので引き払う事にしました。

あの子は？

アパートを出る当日、来たときと同じように挨拶で回った時です。
上の部屋に行くと男の子はいません。
さっき自分の部屋で荷物を運んでいるときにも、上の階からドタドタと音が聞こえてきたので、ちょうど外へ遊びに行ったのろうと思って、「男の子は元気ですか？」と聞くと黙り込んでしまうのです。

何の気なしに「ご挨拶の時に後ろに隠れていたあの男の子、もう小学生ぐらいですよね・・・もう、元気に飛び回る足音が聞こえないとすこし淋しいです」と別れの言葉を言うと女性の顔は真っ青。

トラックの時間が迫っていたので、その場を後にしました。

あれからさらに5年

その頃、事故物件サイトが世間で話題になり、何の気なしに前に住んでいたアパート調べてみると事故物件の表示がされています。

てっきり隣の部屋の事かな？と詳細をクリックしてみると「児童虐待で死亡」と事件のあらましも書いてあるのです。
サイトの信憑性はともかくとして、男の子を可哀想に思ったのでした。

※画像はイメージです。