零戦が名機になった理由、それは世界で日本にしかないモノが使われていた。
ジュラルミンの種類と特徴
航空機の機体材料であるジュラルミンは、アルミニウムと銅、マグネシウム、マンガンなど数種類の金属の合金で、その量の配分などにより、ジュラルミン、超ジュラルミン、超々ジュラルミンの三種類に分類される。
ジュラルミンの特徴は軽さと強度であるが、その程度は種類によって異なる。
比重 | 硬度(HB) | 引張強さ(N/mm2) | |
---|---|---|---|
アルミニウム | 2.69 | 65 | 260 |
ジュラルミン | 2.79 | 105 | 425 |
超ジュラルミン | 2.77 | 120 | 470 |
超々ジュラルミン | 2.8 | 160 | 570 |
普通鋼 | 7.87 | 130 | 400~510 |
ステンレス | 7.93 | 180 | 520 |
超々ジュラルミンは鉄の35%ほどの比重なのに鉄より頑丈である。
この金属があらばこそ、航空機というものが存在し得る。
ジュラルミンの開発
ジュラルミンは1906年にドイツで開発され、これを骨格に使用した飛行船・ツェッペリン号は第一次世界大戦でロンドン爆撃を敢行した。
各国はジュラルミン開発を競い、1927年には米国で、強度を増したジュラルミンが超ジュラルミンと名付けられた。
飛行船から飛行機へ、そして羽布張り複葉機から全金属製単翼機へという航空機の発展に、ジュラルミンの進化は欠かせなかった。
日本のジュラルミン研究は、1916年、日本海軍がツェッペリン号の骨材を入手したところから始まり、海軍が研究依頼した住友伸銅所が、1919年試作に成功した。
さらに1935年に開発された、航空機機材に使用し得る超ジュラルミンは、全金属製低翼単葉機・九六式艦上戦闘機に使われた。
零戦を生んだ超々ジュラルミン
九六式艦戦は西欧諸国製戦闘機の性能と比して遜色ない、最高レベルの戦闘機だった。
しかし海軍はそれを上回る次期戦闘機を開発を目指した。
十二試艦上戦闘機、後の零式艦上戦闘機である。
海軍による十二試の要求性能は、九六式艦戦に続いて設計を担った堀越次郎をして、「当時の常識では考えられない性能で、もし本当に実現するなら、 世界レベルをはるかに抜く」と言わしめた。
「もし本当に実現するなら」との言に、実現不可能なのではないか、という堀越の本音が読み取れる。
それほどに常識外れの要求性能だったのだ。
設計上の最難関は重量軽減だったが、高速度と高運動性能に必要な機体強度とは反比例する。
強度に無関係な箇所をくり抜くなど、堀越はグラム単位に至るほどの重量軽減に悪戦苦闘していた。
一方、住友では1936年に、超ジュラルミンの強度を上回る、超々ジュラルミンの特許を出願していた。
堀越はこれを主翼の桁に使い、約30kgの重量大幅軽減に成功し、常識外れの性能を備えた世界一の戦闘機の実現が目前となった。超々ジュラルミンの採用について堀越は、日本の航空機史上画期的な事件と述べている。
無敵の零戦の実態を解明するために、破片まで拾い集めて研究していた米軍は、アリューシャン列島で不時着した無傷の零戦を入手した。
そして部品に使われている日本製超々ジュラルミンが、世界には未だ存在しない高硬度だったことに軍技術者は驚愕した。
米国アルコア社がこの日本製超々ジュラルミンをベースに、現在の航空機にも使用されている、超々ジュラルミン75S開発に成功したのは、1943年のことだった。
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