30年少し前の話になるけど、友人Aと一緒に心霊スポット探索に行くのにはまっていた。
その頃はインターネットがなく、情報は雑誌の特集、噂や人づてが主で、有名な場所ならまだしも、行ってみたら何も無かったというようなガセネタも多かった。
山奥の集落
ある日、俺とAは少し離れた町にある心霊スポットへ向かう事にした。
なにより顔見知りの同じ趣味の仲間からの情報なので、信憑性が高いのだ。
その心霊スポットというのは人が寄り付かない山奥の集落で、そこは昔は栄えていたけれどある事件が起きてからは人が引っ越していき、今では誰も住んでいない曰くありの集落と言われている。
集落すべてが心霊スポット、いままでにはないスケールに胸が踊る。
少し道が悪くて到着まで思った以上に時間がかかってしまったが、夜の9時過ぎには到着することができた。
そこは今は使われていない舗装されていない林道を山の中に入っていき、道が途切れた辺りの斜面に沿って数件、昔ながらの木造住宅た立ち並び、いくつかは倒壊してしまっている。
俺はさっそくAと一緒に探検しはじめた。
ほとんどの家の中は古くなっていはいるが家財道具がそのまま残っていて、どこもさっきまで、ここで誰かが暮らしていたようだ。そんな状態だからだとおもうが、あちこちから人の気配のようなものを感じてしまう。
12時を周った頃にはだいたい見回り、残りは一軒。
「今回も幽霊は出なかったけどまあ楽しかったな」・・・いつもと同じだ。
ちょっとした食い違い
最後の家を探検し建物から出ようとした時、背後から「助けて」ってたぶん女性の声が聞こえた。
何度も聞こえるんだから絶対気のせいじゃない。
俺たちはどこから聞こえるか家の中を探すと、ある部屋から聞こえていると気づいたが、ドアには鍵がかかって開かないのだ。
「助けて」って声はだんだん小さくなっていき、どうするって話になった。
Aはしばらく黙り込んでから「開けないほうがいい」と言った。
「こんなところに女性がいるわけない、仮に同じように探検しているのであれば車できている筈だけれど、見当たらないのおかしい」
「それに誰がドアに鍵をかけて閉じ込めたんだ」
俺は好奇心と共に探検していて閉じ込められたのであれば助けなければ、という思いを持っていたのだが、Aの意見も正しいと思い結局引き返すことにした。
だが納得がいかない思いもあり、帰りの車ではいやな沈黙が支配していたのを覚えている。
あれから
Yとはそれから疎遠になり、心霊スポット探索も熱が冷めた。
風の噂では病気で亡くなったという話もあり、連絡をとってみれば良いのだけれども、たとえ生きていても亡くなっていても、なにかが引っかかって行動ができない・・・というのが正直な思い。
なんだったんだろうと今でも思う。
本当に女性が閉じ込められたのだろうか。それともナニか別のモノだったんだろうか今となってはわからない。
廃村は今でもあるが確かめにいくのは嫌だ。
※画像はイメージです。
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