「石ノ森章太郎」氏と言えば、半世紀に渡って愛され続け尚も新たなファン層を開拓し続ける「仮面ライダー」を生み出した巨匠である事は誰しもご存じの所でしょう。
そんな氏が送り出した作品にあって、言うなれば「仮面ライダー」「秘密戦隊」に続く「第三極」を形作ったと言えるビッグタイトルが「サイボーグ009」です。
他の2作が高い拡張性で、現在に至るまで連綿とシリーズを受け継いで行く作品となった事に対し、本作は「石ノ森章太郎」氏が積極的に参画する事で凄まじく高い完成度にまで至り、「伝説」を築き上げたと言える「第2シーズン」は今日でも語り草となっています。
石ノ森氏の手に拠る「サイボーグ戦士、誰がために戦う」のOPテーマが導く安息無き戦いと、何処までも人間であろうとする悲哀が生み出す、今見返しても見応え抜群のドラマをご紹介致します。
モノクロからカラーへ。アニメーションが成熟を遂げた時期に生み出された圧倒的クオリティに驚愕する!
原典となる「サイボーグ009」は、作者である「石ノ森章太郎」氏が長い構想と幾度かの中断と再開を経て終生執筆されたビッグタイトルであり、それ故アニメシリーズ化において設定の変更を余儀なくされる事もあったとされます。
その中にあって「石ノ森」氏の存命中、企画にも精力的に参加された作品として完成される事になったのが今回紹介する「第2シリーズ」。
その存在感は、現在に至るも「サイボーグ009」を知る人がイメージする姿そのものと言っても過言ではなく、最も原作に近い姿を得たものとされています。
この「第2シリーズ」は 1979年3月6日から、翌年の1980年3月25日まで放送され、「第1シリーズ」がモノクロであったのに対してカラーで放送された。物語は、サイボーグ戦士達を生み出した悪の組織「ブラック・ゴースト」を潰滅させた後から始まります。
世界に影の如くにして蔓延る難敵「ブラック・ゴースト」を遙かに凌駕する圧倒的な力を前にして、サイボーグ戦士達が自らを象徴する力を最大限に活かし戦う姿は、現在の作品と比しても遜色の無い迫力と、同時に作中を通じて物語の世界観に満たされている悲壮感をドラマティックに表現するものして抜群の見応えを誇ります。
また物語の幕開けを飾る「宇宙樹編」において敵対する事となる「北欧神話」の幻想的な世界観は、サイボーグ戦士という現代に生きる人間の姿と、超技術で以て作り出された存在という鮮烈な対比を描き出しており、その激しい衝突を通して全編に渡る魅力的な作品性を突き付けています。
今日において数々の作品に著されるようになったこの「神秘と超技術の交錯」という構図を印象付けた一作という意味においても、間違い無く一見の価値がある作品です。
石ノ森作品の真髄は「恐るべき敵」に有り!世界の深淵にあって「正義」を待ち受けるその正体を見届けよ!
「仮面ライダー」「サイボーグ009」と、石ノ森章太郎氏作品において表題を飾る主役の姿は常に印象的であり、その煩悶を抱えて尚戦い抜く姿勢が物語を熱く彩る事はいずれの作品においても大きな魅力と言えます。
しかし、その「煩悶」を作り出す大いなる源泉として彼らの前に立ちはだかる「悪」こそは、氏の作品における重要な要素であると言えるでしょう。
本作「サイボーグ009(第2シリーズ)」において、物語冒頭から圧倒的な力を見せ付けていく「北欧神話の神々」はまずその存在感十分と言えるものです。
理知的にして凶悪、神々しくも荒々しい、文字通りの「神話」の現出たる彼らは、同時に背景として「ブラック・ゴーストが潰えた以降の存在」となって立ちはだかる事により、正に「人智を越えた」存在としてサイボーグ戦士達を圧倒します。
それは同時に「そんな高次の存在と刃を交えられるサイボーグ戦士達とは何なのか」という更なる煩悶を生み出す事となり、激しい戦いの影で苦悩が静かに積み重ねられていくドラマとなっていきます。
そしてその傍らで、彼らが守ろうとしている「人々」…その「業」とも言える存在である「ネオ・ブラック・ゴースト」が再び侵食を始めるという、あまりにも苦悩に満ちた、しかしそれ故の「現実」を突き付けてくるドラマが展開していくのです。
その懊悩や苦難は、最早いっそ陳腐であるとすら言えてしまうものかもしれませんが、それを陳腐と言わせないだけの畳み掛けるような展開、或いは9人の「戦鬼」達が常に抱えている「ごく普通の人間」としての人間性で表わされる穏やかさを通じて普遍性を得る事で、今改めて見返すとも色褪せないドラマとして見応えを持っています。
折しも昨今、親から子、子から孫へ
折しも昨今、親から子、子から孫へとそのファン層が受け継がれて3世代を数えようかという状況から、その人気の有り様が真に「国民的」と言えるものとなる中で、過去これらの作品で育った世代が自分達の触れた作品を「共に」楽しむ作品として「シン~」を銘打った作品に代表されるような形でも見受けられるようになりました。
映像媒体も数を増やし、多くの作品へ触れる事が出来るようになった今、改めてこの同じ巨匠の手から生み出された作品にも楽しみが見出されていって欲しいと思う次第です。
サイボーグ009 (C) 石森プロ・東映
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