小学三年生のときの話です。
夏休みが始まったばかりでウキウキしていた僕たち仲良し3人組は、学校のプチ遠足で一度行ったことがある、家から少し離れた公園で遊ぶことにしました。
流行りのアニメごっこやかくれんぼ、ブランコなどで遊んでいると、あっという間に時間が過ぎていきました。
夏だったこともあり、空はまだ明るかったのですが、公園の時計を見るともう七時を過ぎていたのです。
思わず顔を見合わせ、「やばい、帰らないと怒られる!」と皆が慌てます。
トイレ
ところが、友人のAちゃんが「お腹が痛い」と言いだしてトレイに飛び込んでいきました。
「おいおい急いでるのに、アイツなんだよ!」
僕達はかなりイライラしながら待っていましたが、なかなか出てきません。
「早くしろよ!」
トイレに向かって怒鳴りつけても、それこそ、ウンともスンとも言いません。
怒りよりも、なんだか心配になってきて、トイレの中まで様子を見にいくと”シクシク”とすすり泣くような声が聞こえてくるのです。
幽霊とかと思いましたが、そんな事はなく、声の主はAちゃん。
「どうしたの?」と声をかけると、Aちゃんが怯えた声で言いました。
「鍵があかない、怖いよ、寒いよ、痛い!」
8月の蒸し暑い夜なのに寒い?
いったいなにが起きているのだろう?
背筋に冷たいなにかを感じながらも、助けない事には帰れません。
そんなとき、Bちゃんが「中から鍵をあけよう」と掃除用具入れに入っていた大きなポリバケツを持ち出し、踏み台にして上の隙間から入ろうとしました。
しかしその上に乗った瞬間、バキッと音を立て真っ二つに割れてしまい、落下して地面に叩きつけられたBちゃんがのたうち回っています。
トイレの内側と外側のダブルで阿鼻叫喚。
次は順番が回ってくるんじゃないか・・・恐ろしくなった僕は「親を呼んでくるからまってろ!」と叫んだあと、ダッシュで家に向かったのでした。
もしかすると
全員の親と一緒に公園に駆けつけたところ、閉まっていたはずの鍵がなぜかあいていて、トイレの中から汚物まみれになって震えていたAちゃんが無事に救出されました。
うずくまっていたBちゃんは、バケツから落ちたのが原因で捻挫してしまったようです。
どうしてこんなことになったのか親たちに説明し「夏休みだからって、羽目を外しすぎだ」と怒られているのをよそ目に、泣きじゃくりる二人の様子をみると、背後に薄青い人の形をした何かが覆いかぶさるようにぴったりと張り付いているように見えます。さらにトイレの奥から、同じような青白い影がじっとこちらを見つめているようにも。
「もしかすると、これは幽霊??」
そう思うと、ふつふつと恐怖が湧き上がり、ごめんなさいと何度も叫びなから親の車に飛び込みました。
家につけば、ご飯もたべずに布団に潜り込み、頭から布団をかぶって朝まで震えてすごしました。
数日後、親から信じられない話を聞いて青ざめました。
昔、あの公園のトイレで殺人事件があったのだと。
想像以上に怖がる姿が面白かったのか、お母さんが「幽霊に呪われたんじゃない」なんて言ってからかってきますが、僕としては心当たりがあるので、冗談じゃありません。
しばらく夜になると怯えていました。
でも、お祭りやお盆休みの旅行、花火大会などのイベントが目白押しの夏。
怖いことより楽しいことのほうが忙しくなり、公園での出来事なんてすっかり忘れてしまいました。
終わらない夏
その後、それぞれが夏休みを過ごし、新学期が始まりました。
久しぶりに仲良し三人組で顔を合わせるはずでしたが、Aちゃんの姿がありません。
「Aちゃんちはお金持ちだから、海外旅行でも行ってるんじゃない?始業式はサボってるんだろうね」
Bちゃんとそんな話をしていると、手に小さな花束を持った先生が教室に入ってきました。
そして、Aちゃんの机の上に花束をそっと置いた瞬間、クラス中がざわめきに包まれました。
先生の口から語られたのは、信じがたい知らせでした。
旅行中、Aちゃんの家族は高速道路で玉突き事故に巻き込まれたのです。車は大型バスと別の車に挟まれ、身動きが取れない状態で、一家全員が命を落とした。
ほんの一か月前まで、あんなに元気に笑っていたのに。教室中が沈黙し、涙を流す子もいました。
しかし、不幸はそれだけで終わりません。
それから二週間後、今度はBちゃんが入院することになったのです。
通っていたスイミングスクールでふざけて飛び込んだ際、運悪くプールの底に頭をぶつけ、脊椎を損傷してしまいました。命に別状はなかったものの、下半身は動かなくなり、車いす生活を余儀なくされることになったのです。
Aちゃんは事故で身動きが取れずに命を落とし、Bちゃんは水の底で身動きが取れなくなった。
その事実に気づいたとき、背筋がぞっとしました。
あの公園のトイレで起きた事件、助けを求めながら動けなくされた被害者の怨念が、いまもそこに残っていて、誰かを道連れにしようとしているのではないか。
そう考えると次は、僕の番なのかもと思って、眠れない日々をすごしたのです。
※画像はイメージです。


思った事を何でも!ネガティブOK!