映画やドラマのトラウマシーンのように、今でも鮮明に頭に焼きついている光景があります。
それは、私がまだ小学校に上がる前の、ある夏の日の出来事でした。
家族と父の友人家族で海水浴に出かけ、その帰り道だったと思います。父の運転する車の中で、私は遊び疲れてぼんやりと外の景色を眺めていました。
やがて道路は渋滞し、車はほとんど動かなくなり、少し進んでは止まり、また止まるの繰り返し。
父が前方を見ながら「ああ、これか」と声を上げ、私はその声につられて前を見ました。
その光景は惨事でしかなかった
そこには事故車がありました。
車は道路の片側を塞ぐように横たわり、原形をとどめないぐらいに変形し、周囲には部品が散乱しています。
警察官が交通整理をしている、その横をゆっくりと通り過ぎました。
そのとき、私は見てしまったのです。
運転席か助手席かは分かりませんが、血まみれの人が仰向けになって動く様子はありません。
幼い私は、恐ろしい光景に息を呑み、声も出せずにただ見つめていました。
ふと、誰もその人を助けようとしていない事に気がついたのです。
警察官は交通整理を続けるだけで、車内に駆け寄る様子はなく、救急車の姿も見えません。
もし本当にあの人が瀕死だったのなら、こんな状況になるはずがありません。
オルゴールの音
ぼんやりとした意識の中で、オルゴールの音が聞こえてきたのを、妙にはっきりと覚えています。
明るい曲調ではなく淡々とゆっくりとしたメロディーで、金属を弾くようなキンキンした響きでしたが、どこから聞こえていたのかは分かりません。
事故車の中だったのか、私たちの車内だったのか、それともまったく別の場所だったのか。
でも、その音を聞きながら、血まみれの人が残っている事故車の様子を見ていたのをはっきり覚えています。
ですが、最近になって父にこの話をすると、海水浴へ行ったことは覚えているけれど、事故については記憶にないと言うのです。
あれは本当に起きたことなのか?
すると、この記憶は私の夢だったのでしょうか。
疲れて眠ってしまい、そのまま見た夢だったと考えれば、辻褄は合います。
けれども、夢にしてはあまりにも生々しいのです。
車体の歪み方も、血の色も、そしてあのオルゴールの旋律も、細部まで思い出せます。
そして今でも、ときおりあのメロディが不意に頭の中で鳴り出します。
気になって口ずさんでみたこともありますが、誰一人その曲を知りませんでした。
家族も友人も、聞いたことがないと言います。私自身も、あの時以外に同じメロディーを耳にしたことはありません。
偶然なのかもしれませんが、不思議なことに、その曲が流れると決まって良くない出来事が起こります。
※画像はイメージです。


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