超古代文明といえば有名なものだと「アトランティス」など聞き覚えがある者も多いだろう。先史時代、その当時では有り得ないと言わしめる程の高度な文明発達が起きていたのではないかと推測される、実に浪漫溢れる俗説だ。
1つの遺物によって今までの常識や通説がひっくり返るかもしれない大発見。今回はそんな超古代文明と呼ばれるものの中から、とある島の沖で発見・回収された機械装置について紹介していこうと思う。
アンティキティラ島の機械
アンティキティラ島の機械とは、同名の島の近海にある沈没船から回収された機械装置だ。1901年、考古学者であるヴァレリオス・スタイスによって発見された。といっても、当時はこの発見された機械装置についてまともな調査をされることはなかった。
この点はまあ、無理もない。発見されたのは沈没した船の中。2000年以上もの年月、海の底に沈んでいたそれの保存状態は決して良かったとは言えず、錆や珊瑚がこびりついたその銅塊が後述するような高性能トンデモ機械装置だとは一見しては誰もわからなかっただろう。
その精密な構造や重要性といった価値に周囲が気づくのは発見後何十年も後になる。
世界最古の計算機
この機械装置が製作されたのは紀元前3世紀から紀元前1世紀中頃の間と古代ギリシャ時代である推定され、世界最古の科学計算機といわれている。紀元前3世紀から1世紀頃といえばヨーロッパはローマが勢力を強めていた頃だが、日本は弥生時代あたりである。
計算機といっても、そろばんや電卓のような機能ではない。この装置は内蔵されている30以上もの歯車が回転する事で太陽や月、その他の天体の位置を計算する。当時のギリシャ人が知り得た惑星の数は5つ。推測では、それら全ての位置を計算できたといわれている。
この機械装置に搭載された機能は挙げれば紙面に書き尽くせない程あるので抜粋していくが、この装置1つで任意の日付の月の満ち欠けや暦の周期、日食の予測も出来る。
外側のリングは365日のカレンダーを表示し、4年に1回1日分目盛りを修正する事で1太陽年の誤差の修正も出来るのだが、この点が特に驚愕。当時はまだうるう年の概念がなく、これが実際に含まれる最古の暦が成立するのはこの装置が開発された100年後だという。
当時の古代ギリシャ人がいかに高度な計算・観測技術を持っていたかを物語っている。また部品の1つ1つも複雑かつ精密で、機械工学的観点からも高度な技術を有していた事がわかる。
古代文明に挑む現代科学技術
アンティキティラ島の機械の洗浄には数十年を費やした。1951年、系統的調査に携わった科学史家のデレク・デ・ソーラ・プライスは論文でこの機械を「最古のアナログコンピュータ」と称した。アンティキティラ島の機械が何故沈没船に乗せられていたかはいまだに不明。
またこの機械には回収されていない部分や試作品、類似する別の機械の存在があるとして度々調査され、近年には新しい部品が随時発見されている。研究プロジェクトによる研究も進み、高分解能X線断層撮影などの技術を用いた解析を基にした当時の機械装置の復元模型の作成も行われている。
当時の地理学、天文学、機械学の集大成たる超古代文明を現代の科学技術で解明するとはなんと浪漫の溢れる試みか。紀元前、古代ギリシャに生きた先人達が培っていた知識と技術、そして構築していた宇宙観。当時の高度に発達した超古代文明に…歴史や常套が覆される高揚に魅入られた者達の、現代の科学技術を駆使したアプローチは今後とも続くだろう。
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