2021年現在でも世界各国の軍隊の歩兵装備の基本として用いられているのがアサルトライフルであり、日本語では突撃銃と訳されている自動小銃の一種である。アサルトライフルは具体的な定義で言えば、拳銃弾とフルサイズの小銃弾との中間に位置する威力の銃弾を使用し、半・全自動の切り替えが可能な自動小銃の事を指す。
フルサイズの小銃弾とは、西側でばかつての標準であった7.62x51mmNATO弾などの事であり、アメリカのM-14や西ドイツのG3、自衛隊も64式小銃でその弱装弾を採用していた。これらの7.62x51mmNATO弾を使用する小銃はバトルライフルとも呼ばれており、弾薬が強力である分、特に全自動射撃時の反動も大きく制御は容易ではなかった。
代わりに西側諸国を中心に普及したのが5.56mmの小口径高速弾を使用するアサルトライフルで、その先駆けとなったのはアメリカのM-16であり現在のM4カービンに至るまで不動の地位を占めている。
一方で旧ソ連はそれ以前の1949年に7.62x39mm弾を使用するAK-47を採用、アサルトライフルの運用では西側諸国を大きくリードしていた。
アサルトライフルの登場と歴史
アメリカでは空軍が1962年、陸軍が翌1963年に5.56mmNATO弾を使用するM-16を採用、前述のように旧ソ連は1949年に7.62x39mm弾を使用するAK-47を採用、1974年には5.45x39mm弾のAK-74へと進化させている。
アサルトライフルの奔りと思われるのは、イタリアで1890年に開発されたチェイ・リゴッティ小銃であり、当時のイタリア軍の小銃弾6.5mmx52カルカノ弾を使用し、半・全自動射撃が可能だった。
これとほぼ同時期にフランスがロシニョールENT小銃を試作、6x60mm弾を使用し半・全自動による連射が可能だったが、当時の小銃の倍以上の重量があり実用化はされていない。
現代のアサルトライフルに近いコンセプトの銃としては1916年にロシアで開発されたフェドロフM1916自動小銃が挙げられ、日本の38式歩兵銃用の6.5mmx50SR有坂弾を使用し半・全自動連射が可能だった。これは6.5mmx50SR有坂弾が当時の標準的な小銃弾よりも弱装弾であり、全自動時の連射にも適していることで採用されたと見られるが、設計者としては軽機関銃的な用途を想定していたようだ。
そして遂に第二次世界大戦中の1943年、ドイツ軍で既存の小銃弾を切り詰めた7.92x33mmクルツ弾を使用し連射が可能なMP43、後のStG44が正式採用され近代的アサルトライフルの原型となった。
アサルトライフルとマシンガン・サブマシンガンの相違点
アサルトライフルに対しマシンガンはときの主力小銃と同じ銃弾を使用し、発射時に薬室を閉鎖するオープン・ボルト方式が多く基本連射にて使用され、兵士が携行可能なものは軽機関銃と呼ばれる。
アメリカ軍が1917年に正式採用したブローニングM1918自動小銃は、名称こそ自動小銃だが20発の箱型弾倉を備え、半・全自動とも可能だったがオープン・ボルト方式であり軽機関銃的に運用された。
オープン・ボルト方式は構造が簡便であり連射性に優れているが、銃弾を発射する際に薬室を閉鎖する特性上、全自動連射による弾幕の展開が主用途であり半自動時の命中精度は低かった。
一方サブマシンガンは拳銃弾を使用し、基本的には全自動連射で使用するオープン・ボルト方式の携帯型機関銃であり、第一次世界大戦の塹壕内等の至近距離で敵を制圧するために開発・使用された。
サブマシンガンは拳銃弾を使用する事から威力の面では他の銃銃火器に劣り、第二次世界大戦までは使用されたが、以後は全自動連射も可能なバトルライフルやアサルトライフルの登場で軍での使用は急速に衰えた。
但し1970年代以降は拳銃弾を使用しつつも、発射前から薬室を閉鎖するクローズド・ボルト方式により半自動時の命中精度も高い西ドイツH&K社のMP5が評価され、法執行機関等の特殊部隊で世界的に採用されている。
代表的なアサルトライフル1 M-16の系譜
20世紀を代表するアサルトライフルの一つがアメリカ空軍が1962年、陸軍が翌年に正式採用したM-16であり、製造元のアーマライト社ではAR-15の形式名でベースとなったのは7.62mm口径のAR-10だった。
このAR-10を5.56mmに小口径化したものがAR-15だが、これが正式採用される前のアメリカ軍は7.62x51mmNATO弾を使用するスプリングフィールド社製のM-14を主力小銃としていた。
M-14は半・全自動の切り替えが可能で20発箱型弾倉を備えていたが、第二次世界大戦期のM-1ガーランドの延長線上にあり、威力はあるが全自動時の反動が大きく、取り回しや木製銃床に難がありベトナム戦争で問題視される。
これに替わったM-16は銃床等にも腐食に強いプラスチックが多用されており、デザイン上もピストルグリップを備えるなど、旧態然としていたM-14から一気に近代的なアサルトライフルへの転換が図られた。
但しベトナムのジャングル戦でのアメリカ軍の苦戦もあり、当初は威力不足や動作不良への過大ともいえる批判に晒され、決して最初から順調な地位を築いたとは言い難い。
しかしA1からA4まで随時改良型がリリースされ、5.56mmの小口径高速弾の利点の全自動時の反動の少なさや、銃弾の軽量さから兵士個人の携行可能な弾数増加は次第に評価され、当初の悪評を覆したと言える。
1987年には銃身長を切り詰めて伸縮可能な銃床を備えたM4カービンが正式採用され、今に続くアメリカ軍の正式小銃の座を不動のものとして君臨するに至る。
また2000年代にはアメリカ軍の依頼を受けたドイツのH&K社が、M4カービンに近代化改修を施したHK416をリリースしており、ある種M-16の最進化版として完成の域に達したモデルと言えるだろう。
代表的なアサルトライフル2 AKシリーズ
アメリカ軍が1962年にM-16を正式採用する13年も前の1949年、当時のソ連軍が採用を決め、以後20世紀で最も使用された軍用銃としてギネスブックに認定されているアサルトライフルがAK-47である。
AK-47はソ連軍戦車兵であったミハイル・カラシニコフが設計を手掛けたアサルトライフルで、ドイツが投入したStG44のコンセプトやデザインの影響が見受けられ、先行開発されていた7.62x39mm弾を使用する。
この7.62x39mm弾自体が半自動小銃のSKSカービン等に用いられた、フルサイズ小銃弾を小型・弱装弾化したもので、その点もドイツのStG44の7.92x33mmクルツ弾と同様に反動の軽減が考慮されたものだ。
AK-47の特筆すべき特徴は一言でい言えば並外れた耐久性の高さにあり、その堅牢な作りは悪環境下でも優れた動作性能を誇り、寒冷地から熱帯まで地球上のあらゆる場面で使用する兵士から高い信頼を得た。
ベトナムの戦争のジャングル戦でもM-16が威力、メンテナンス面で当初評価されなかった事と対照的に、弾薬のストッピング・パワーと作動不良の少なさからアメリカ軍兵士が鹵獲品を好んで使用したとも言われる。
StG44と同様に元々30連初の弾倉を標準としていたAK-47は、装弾数の多さ・全自動時の反動の少なさから小柄な体格の北ベトナム軍や解放戦線の兵士にも適しており、アメリカ軍の脅威となった。
以後も1959年に改良型のAKMに進化し、1974年には5.45x39mmの小口径高速弾に使用弾を改めたAK-74が採用され、更にAK-100、AK-200とその系譜は現在でも進化を続けている。
代表的なアサルトライフル3 その他
アサルトライフルと言えばAKシリーズやM-16の2大系統が世界中で数多く採用されているが、兵器の国産化の観点から自国産のアサルトライフルを選択する国や、独自の基準で採用を決めている国も多い。
日本も国産化を推進している国の一つで、1989年に5.56mmNATO弾を使用する豊和工業製の89式5.56mm小銃を陸上自衛隊で正式採用しているが、2015年以降から代替が検討されているとも言われている。
後継も豊和工業の新型小銃と見られるが、ドイツのH&K社製のHK416やG36、オーストリア・シュタイヤー・マンリヒャー社製のステアーAUG、ベルギー・FNハースタル社のSCARなどを候補とする報道も見られた。
ステアーAUGは引き金よりも後方に薬室があり、銃床の内部に弾倉を持つ独特なブルパップ方式を採用、一時期は銃身長のわりにコンパクトでアサルトライフルの主流になるかとも思われたが次第に廃れきている。
これはその構造上、銃床部に頬を付けて射撃する場合、顔にほど近い位置から排莢するため、発砲音や熱を感じやすい事や、M4カービン等の登場でコンパクトさに優位性が薄れた為とも考えられている。
G36は1996年からドイツ軍が採用しており、ステアーAUGもオーストリア軍が1977年に採用するなど5.56mmNATO弾を使用するものの、さほど新しいアサルトライフルとは言いがたい。
FNハースタル社のSCARは2000年代にアメリカ特殊作戦軍のトライアルに向けて開発されており、これらの中ではHK416と並んで世界でも最新の部類に入るであろうアサルトライフルである。
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