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米空軍で100年間運用? 超重爆撃機ボーイングB-52ストラトフォートレス

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近年では国同士の軍隊が直接の戦闘を行う「戦争」が極めて少なくなった事もあり、1990年代以後の中国軍の台頭はありつつも、世界最大の軍隊を抱えるアメリカにおいても兵器の寿命は延びる傾向にある。
2021年現在の年数を鑑みれば、アメリカ陸軍の戦車・M1エイブラムスは1981年の正式採用から40年、アメリカ海軍のアーレイバーク級駆逐艦は1991年の就役から30年を経過する等、主力兵器も例外ではない。

しかしアメリカ空軍の爆撃機・B-52ストラトフォートレスは1955年に運用が開始された機体で、現時点で既に66年が経過しているが少なくとも2050年台まで継続される計画で、実に100年に及ぶ配備が目前となっている。
B-52ストラトフォートレスはアメリカの航空・軍需企業大手のボーイング社が開発を担った大型の戦略爆撃機だが、如何にしてここまで長年の運用される事になったのか、少し歴史を紐解いてみたい。

目次

課された役割が変化してきたB-52

アメリカ空軍が100年と言う長期間にわたってB-52ストラトフォートレスを運用する事になった背景には、一言で言うならばこの機体が必要とされる要件が各時代で複雑に変化してきた事が最大の理由に挙げられる。
B-52ストラトフォートレスは、同じくボーイング社が開発し太平洋戦争において日本を絨毯爆撃したレシプロ機のB-29爆撃機や、やその後ジェットエンジンとなったB-47爆撃機の系譜を汲む戦略爆撃機だと言える。

そもそも戦略爆撃とは直接敵軍の戦力を攻撃するものでは無く、太平洋戦争時のB-29爆撃機による日本への絨毯爆撃に見るように敵国の施設や設備を破壊、同時に人員も殺傷して継戦能力を奪う事を目的としていた。
1955年から運用が開始されたB-52ストラトフォートレスは、当初は冷戦中の旧ソ連への核爆弾による先制若しくは報復攻撃用の戦略爆撃を敢行する機体であったが、大陸間弾道弾や潜水艦発射型弾道弾の発達でその任を降りる。

同時に1965年になるとB-52ストラトフォートレスは、所謂「北爆」と言われる当時の北ベトナムへの通常爆弾による絨毯爆撃任務に使用され、太平洋戦争時の日本と同様に同国の継戦能力を奪う目的で投入された。
以後は1990年の湾岸戦争、2001年のアフガニスタン紛争、2003年のイラク戦争にも投入され、これらでは搭載する兵装は長距離巡行ミサイルや精密誘導爆弾となり、これらの大量搭載と長時間飛行能力が改めて評価され今に至る。

USAF, Public domain, via Wikimedia Commons

B-52ストラトフォートレスの開発から今日までの歴史

B-52ストラトフォートレスは、第二次世界大戦中の1945年にアメリカ軍が求めた時速500キロメートル以上、航続距離8,000キロ以上という要求に応えるべく、ボーイング社が開発を開始したXB-52に端を発する。
翌年1946年には第二次世界大戦は終わったものの、先ずXB-52は6基の機関部を備えた機体として計画され、以後4基に減らされたが機関部のジェット化と後退翼を持つ機体に修正され、今の形状に近づく。

1950年代に入り機関部は8基とされてアメリカ空軍での採用が確定、1952年に初飛行を経た後、1955年から実戦配備が開始され、旧ソ連への核爆弾による先制及び報復攻撃用の戦略爆撃機として24時間体制で運用される。
このためB-52には主としてヨーロッパの旧ソ連との国境空域を攻撃範囲に収めていたが、1966年にスペイン、1968年にグリーンランドで核爆弾を搭載した状態で墜落事故を起こし、同時に大陸間弾道弾等の発達から核爆弾の運用は終えた。
それでもその後の1991年に旧ソ連が崩壊するまでは、通常兵器搭載による24時間体制での運用は継続、ベトナム戦争、湾岸戦争などの実戦にも投入されて戦後のアメリカを代表する爆撃機として君臨した。

1986年にはロックウェル社製の可変翼を持つ超音速爆撃機・B-1ランサーが配備されるも、B-52全てを代替するには至らず、1997年から配備された全翼のステルス爆撃機B-2スピリットの登場でも同様だった。
これは寧ろ旧ソ連との冷戦構造が終焉した後には、後継予定だったB-1ランサーやB-2スピリットの維持コストが費用対効果に照らして見合わないと判断された事が大きく、B-52の延命を促進したとも言える。

B-52ストラトフォートレスの延命対策

2021年現在、アメリカ空軍が運用しているB-52は全機が同機の最終型であるH形で76機あり、これらはプラット&ホイットニー社製のTF33エンジンを8基搭載しており、これを換装するプロジェクトが進められている。
換装するエンジンには2021年9月にイギリスのロールス・ロイス社製のF130エンジンが選定され、2038年までに76機のB-52H型全機への換装作業が行われる予定で、これにより2050年代までの運用が可能となる見込みだ。

ロールス・ロイス社製のF130エンジンは現状のプラット&ホイットニー社製のTF33エンジンよりも4割ほども燃費効率が向上するとも言われており、他にも機体への近代化改修を施す可能性も指摘されている。
しかし開発・製造を行い、エンジン換装も担当するボーイング社からは、8基のエンジンを現行と同様の位置に配置する事の是非についても検討を行う方向とされており、平坦な作業とは言い切れないようだ。

これはB-52としては最終型とは言え、現行のH型76機は全機が1960年代に製造された老朽化した機体であり、経年劣化による金属疲労等を考慮して緻密な計算の上で最適な換装を目指すしかない事を意味するのだろう。

Balon Greyjoy, CC0, via Wikimedia Commons

驚異の100年運用に見るアメリカ空軍の戦略

アメリカ空軍では1997年から僅か20機だけが製造され、其れ故に1機あたりが2,000億円以上の高額となった全翼のステルス爆撃機B-2スピリット、これを近代化させたB-21レイダーを2025年を目途に配備すると目されている。
このB-21レイダーは現時点で凡そ100機が配備される予定で、それによりB-2スピリットやB-1ランサーは全機退役するが、これからエンジンを換装するB-52ストラトフォートレスと2機種での戦略爆撃機体制となる。

今の時代に新型のB-21レイダーを100機も調達しようとするアメリカ空軍の計画にも驚きを隠せないが、かくも長年にわたってB-52ストラトフォートレスを運用しようとするのはそれに匹敵するインパクトを感じる。
これはイラク戦争以後のアメリカが、完全に制空権を掌握している空域であれば、B-52の持つ火力の費用対効果の有用性を手放せないと考えている証しであり、アフガニスタンからの撤退にも懲りていない事は明白だろう。

featured image:Balon Greyjoy, CC0, via Wikimedia Commons

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