「恐ろしい、恐ろしい。空に鉄の鳥。アメリカの兄弟に突っ込んでいく。兄弟は落ちてしまう。たくさんの人が死ぬ」
そのヴィジョンが降りてきたのは、米同時多発テロが発生するはるか以前のことだった。
彼女の名はババ・ヴァンガ、正しくはヴァンゲリヤ・パンデヴァ・ディミトロヴァ。母国ブルガリアの人々は愛と崇敬をこめて、ヴァンガおばあちゃんと呼ぶ。
彼女の主な予言はこのような結果。
- 第二次世界大戦の勃発 的中。
- チェルノブイリ原発事故 的中。
- 冷戦終結・ソ連崩壊 的中。
- ダイアナ妃の死去 的中。
- 米国の黒人大統領は第44代で誕生 的中。
- 米大統領は第44代で終わり外れ。
- 2011年の北半球放射能汚染かろうじて的中。
人は未来を読めるのだろうか。まだ見ぬ歴史が予言であるなら、未来を変えることができるのだろうか。それとも人類は、定められた運命に突き進むだけなのか。
バルカンのノストラダムス
ババ・ヴァンガは、自身の言葉どおり1996年8月11日に85歳の生涯を閉じた。生前に数千項目もの予言を残し、歴史上の重大事件をことごとく言い当ててきた盲目の予言者である。
西暦5000年よりさらに先の世界まで見通したその予言は、戦争、地球環境の激変、新たな人種の誕生、宇宙由来の難病、人工太陽、地球外生命体との同化など衝撃的な内容だったことから、社会主義体制下のブルガリア政府によって国家最高機密に指定された。
予言の解禁は、ブルガリアの民主化を待たなければならなかった。
バルカン半島に女ノストラダムスがいるらしい ——風説を耳にしたジャーナリストがヴァンガを探しあて、彼女のもとを訪れて、その言葉を世界に伝えはじめたのだ。2014年には政府が「予言の一部を段階的に公開する」と発表した。
これまで彼女が言い当てた事象を振り返ると、第二次世界大戦の勃発、チェルノブイリ原発事故、ソ連崩壊、ダイアナ妃の死、アメリカ同時多発テロ、スマトラ島沖地震など、歴史に名を刻んだ大事件・大事故が多い。的中率はソースによって異なり、70%から85%と幅があるものの、これらのパーセンテージをみれば神がかり的な確率といわざるをえない。
いや、的中率うんぬんよりも、外れたとされる15%から30%の予言のほうが気になるという人もいるだろう。的中した予言は注目を集めるが、外れた予言は忘れ去られる傾向にある。悪い予言が外れたところで、不幸になる人もいない。
当たらなかった予言には、4人の元首暗殺計画、米大統領は第44代で終わり、ヨーロッパの消失などがある。いずれも2016年までに現実化すると予見されたものだ。
「米大統領は第44代で終わり」というのは、「第44代米大統領はアフリカ系」とセットで予言されたもの。バラク・オバマ氏の当選は的中したが、第45代にドナルド・トランプ氏が就任したため、額面通りに解釈すれば一部は外れたことになる。しかし、外れた部分は何かの暗喩ではないかという見方も多く、そうなると話は違ってくる。成否を判断するにはもう少し時間が必要になるだろう。
「ヨーロッパの消失」についても同じことがいえる。「わたしたちがよく知る欧州は存在しなくなる」とヴァンガは説明しているが、これも時期がずれただけだとしたら。
いっそのこと、どこかの研究者が「ババ・ヴァンガの外れた予言&言い訳集」を上梓してくれないだろうか。
ヴァンガおばあちゃんとは何者か
ヴァンガは1911年1月31日にストルミツァで生を享けた。
転機が訪れたのは12歳のとき。ある日、竜巻に巻き込まれ、激しい砂嵐で両目を傷つけられて、不幸にも光を失った。
しかし、失明した彼女に不思議な力が宿る。自身の予知能力の正体について、ヴァンガはこう説明している。
「得体の知れない、高度な生き物が夢のなかで未来の出来事を告げるのです」
胎児の将来を言い当てたり、数百年前の人々の霊と対話することもできたといわれる。
時は第二次世界大戦下。その予知能力が世間に広まると、戦地に赴いた家族の安否を気づかう人々がこぞってヴァンガの言葉を仰いだ。その的中率はきわめて高く、噂を聞きつけた為政者たちもアドバイスを求めて彼女のもとを訪れた。そのなかには国王ポリス3世やアドルフ・ヒトラーの姿もあったという。
「昨日の新聞なんて誰も欲しがらない」とローリング・ストーンズは歌った。気になるのは、やはり明日の世界である。ヴァンガが残した言葉を駆け足でご紹介しよう。
ババ・ヴァンガが予見した未来
2018年以降の予言を抜粋する。
- 21世紀
中国が新たな超大国になる。新しいエネルギー源の発見。金星へ有人宇宙飛行。極地の氷が溶け、水位が上昇。すべての身体器官が再生可能になる。人を数秒で老いさせる病気。人工太陽が暗闇を照らす。 - 22世紀
地球外生命体のサポートを受けた水中文明がはじまる。動物が人間に近づく。火星のコロニーが核保有国になり、地球からの独立を要求。 - 23世紀
宇宙船が地球に新たな病気をもたらす。白、黒、黄色の融合による新たな人種の誕生。 - 24世紀
宇宙から恐ろしいものが接近。 - 31世紀
火星との戦争が勃発。 - 38世紀
地球上のすべての生物が死滅する。しかし人類は他の惑星に移住。 - 39世紀
移住した惑星の気候の影響で、人間は生物学的に変異する。 - 46世紀
神との通信が可能になる。不死を達成。 - 47世紀
地球外生命体との同化。 - 5076年
宇宙の果てを見つける。 - 5078年
宇宙の境界の外に出る決定を下す。 - 5079年
世界の終わり。
中国の台頭、再生医療、宇宙戦争、神との通信といったショッキングな言葉が並ぶが、やはりネガティヴな内容が目立つ。予言や占いはネガティヴなほうが「的中した」と判断されやすい傾向にあることが研究で示唆されている。悲劇的であればあるほど、記憶にも残りやすいのだろう。
懐疑的な目でみれば、陰謀論でおなじみの「権力側の思惑」がこめられているように思えないでもない。さらにうがった見方をすれば、しょせんは国家の管理下にある、操作が可能な予言なのである。世人には真贋を検証するすべがない。
ヴァンガの言う世界の終焉。「世界の終わり」と聞くと、あたかも人類が滅亡するようなイメージが先行するが、彼女は人類の終焉とは言っていない。「世界の終わり」にいたるまでの流れに注目してみよう。5076年の「宇宙の果てを見つける」、5078年の「宇宙の境界の外に出る決定を下す」である。人類は宇宙規模でさまざまなものに出会い、宇宙の多くを知り、大きな進化をとげた末に、地球を捨てて新しい宇宙に旅立つ決断を下すのだろうか。
「ウラジーミルの栄光」が意味するもの
ここ最近、話題を呼んでいるのが、2018年に明らかになった新たな予言の内容だ。
1979年にヴァンガはある人物と対談しており、その折に語った言葉を東欧の複数のメディアが報じたのだ。
「すべてが溶ける。氷のように。けれど、ひとつの場所が無傷で残る。それはウラジーミルの栄光です」
「たくさんの犠牲者。それでも、誰もウラジーミルを止められない」
「ロシアがすべてを奪う。そして世界を支配する」
注目すべきは、もちろん「ウラジーミル」だろう。現在の世界情勢に照らして考えれば、ウラジーミル・ウラジーミロヴィチ・プーチン氏以外には考えられない。1979年といえば、彼はまだ20代。ヴァンガには、このKGBの新参エージェントの姿がみえていたのだろうか。
「たくさんの犠牲者」は戦争による犠牲者、「すべてが溶ける」は核攻撃と解釈する人は多いようだ。ロシアvs.世界の戦争が勃発し、ロシアが勝利するとも読みとれる。
幼少期から身体が弱く、長くは生きられないだろうと思われていたババ・ヴァンガ。
85歳の大往生をとげたのは、天から託されたメッセージを人類に伝えるためだったのだろうか。
人は生まれ落ちた瞬間から、死に向かって生きている。
その未来は闇か、光か。
※画像はイメージです。
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