戦車や飛行機といった絵面が派手な兵器が未だ登場しない19世紀のミリタリーは、フィクションのモチーフとしてもやや地味で埋もれがちな存在。しかしクラシカルで華やかな騎兵や、古式ゆかしい武器の数々などちゃんと調べれば面白いもので溢れている時代でもある。
そんな「深掘りすれば面白い」19世紀のミリタリーをモチーフにした架空戦記漫画が今回ご紹介する『軍靴のバルツァー』だ。いわゆるファンタジー漫画でありながら、やや埋もれがちだった19世紀のミリタリーにスポットを当てたこちらの作品。今回はその見所に迫ってみよう。
マニアも納得の面白さ?『軍靴のバルツァー』のここに注目
今回ご紹介する『軍靴のバルツァー』は、19世紀のヨーロッパ(おそらくプロイセンとその周辺国)をモデルにした架空の国々を舞台にした架空戦記漫画。ヴァイセン王国の優秀な軍人である主人公バルツァーが、同盟国バーゼルラントの軍事顧問として赴任。バーゼルラント軍を改革しつつ国家間の争いに巻き込まれていく、というのがざっくりした粗筋だ。
旧弊な考え方に捉われた小国バーゼルラントの軍隊をバルツァーがどう改革していくのか、そして次々と直面する難局にどう立ち向かってい行くのかが本作の大きな見所。
だがここでミリオタとしてはバルツァーたちが使う装備や、作中に登場するさまざまな兵器、それらがどう使用されているかにも注目したい。本作にはライフル銃や大砲、鉄道や気球など19世紀当時実際に戦場を彩った武器や乗り物がふんだんに登場する。
本作のファンタジー世界に精巧に落とし込まれた19世紀の兵器たち、そしてそれらを用いた戦闘描写はとても詳細でリアリティたっぷり。フィクションの軍事考証がどうしても気になってしまうオタクも唸らされること請け合い。またさらに詳しい設定が気になったあなたは、バルツァー達が使用した兵器や戦術の元ネタにあたってみてもいいだろう。必ず何か面白い発見があるはずだ。
兵器だけじゃない!『軍靴のバルツァー』は政治もおもしろい
やや埋もれがちな存在だった19世紀のミリタリーにスポットを当て、それらをファンタジー世界に精巧に落とし込んだ『軍靴のバルツァー』。しかし見所は兵器や戦闘描写の精緻さだけではない。作中に登場する軍人や政治家、王族らの交錯する思惑や、それによって巻き起こる国家間の手に汗握る駆け引きも本作の大きな見所。
架空の世界の国々が舞台ながら、本作の政治や外交の描写はかなりリアリティがあり、手抜きがない。国内外の様々な問題に翻弄されながら小国バーゼルラントが、そしてバルツァーたちがどう立ち回っていくのか、架空の国の話とわかっていても読んでいるとハラハラしてしまう。ミリタリー好きだけでなく、歴史好きやポリティカルサスペンス好きも楽しめる作品と言えるだろう。
このように、『軍靴のバルツァー』は今まで埋もれがちだった19世紀のミリタリーにスポットを当て、見所満載の歴史ファンタジーに昇華した読み応えのある作品だ。この機会にぜひ読んで、19世紀のミリタリーと彼らが生きる世界に思いを馳せてみてはいかがだろうか。
軍靴のバルツァー (C) 中島三千恒 新潮社 / 月刊コミックバンチ
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