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出窓の怪

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本州最北端に位置する私の実家は、いわゆる「出る」家だ。
前々から不可解なことが起きていたらしいが、私が聞いた話で印象的なものが二つある。

一つは、私がまだ幼かった頃の話。
母が幼い私を寝かしつけ、少し離れた居間で作業をしていたところ、突然私が騒ぐ声が聞こえたという。
母と祖母が慌てて私が寝ていた部屋に行くと、私は脱走防止用の子ども用の柵をガタガタ揺らしながら母と祖母を呼んでいた。大泣きしている私に二人がどうしたのか聞くと、その部屋にあった窓を指さして、
「女の人が、外から窓を叩いてくる!」
と、泣きながら訴えたという。

母が慌てて窓を見ても、誰もいなかったという。
私が寝ていたその部屋は二階にあり、私が指さした窓は出窓だった。母は窓の外も確認したが人はおらず、また人がいたような痕跡もない。後日確認しても不審者の報告もなかった。
幼い私が見た夢と言われてしまえばそこまでであるし、私にその頃の記憶がないため夢かどうかの判断はもうつかない。
しかし祖母によると、「あの騒ぎ方は『夢で見た』ような反応ではない」そうだ。

もう一つは、私が中学生の頃の話。
その当時、私と母の部屋は壁一枚を隔てて隣り合っており、私はその壁に沿うようにベッドを置いていた。
そんな夏の休日、母は夕飯を作りながら「寝る時さ、壁蹴ってる?」と聞いてきた。私は母の質問の意図も分からないまま、「いや、蹴ってないと思うけど」と答えた。
その答えに母は「まあ、そうだよね。そんなわけないわ……」と曖昧な表情をした。私がなぜそんな質問をするのかと聞くと、母は存外アッサリ答えた。
「昨日の夜、子どもが壁を走る音がしたんだよね。アンタの部屋がある方の壁から」
しかし私はその説明では納得いかずに少し食い下がってみた。
「それは……私が寝てる間にうっかり蹴ってるかもじゃん」
母は私の言葉をすぐに否定した。
「いや、でもさ、それならもっと大きい音すると思うの。でもその音、本当に小さい子どもが走る音だったし……そもそも、壁一面を走ってたんだよ? 端から端まで。ベッドで寝てるからって、そこまで広範囲に足、伸ばせないでしょ?」

その言葉に、私は何も言い返せなくなった。
壁を走っていたであろう子どもはどこにいたのだろうか。母の部屋か、それとも……。
ただ一つ言えるのは、その時の母の部屋には、幼い私が指さしたのと同じような出窓があったということだけだ。
他にも母と祖母は色々な不可解な話をしてくれたが、その現象が起きているのは高確率で「出窓のある部屋」だった。

私は、この現象を『出窓の怪』と名付けている。
今は家中の出窓にまじないをしているので「出窓の怪」は身を潜めているが……さて、いつになったら「出窓の怪」は私の実家から出て行くのだろうか。
ちなみに、この家は一度有名な霊能力者からお祓いを受けているそうだが、それは私が生まれるずっと前の話だそうだ。

ペンネーム:天ヶ瀬百合人
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※画像はイメージです。

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