今回紹介するのは、1980年公開、大藪春彦先生の代表的小説を映画化し、主人公の伊達邦彦を松田優作が演じた事で話題を呼んだ「野獣死すべし」です。
この映画は、大藪晴彦先生の小説を読む愛好家の間では、別物の作品として見られており、松田優作の映画として有名になりました。それだけに松田優作の演技が際立ち、劇中に出てくる伊達邦彦の存在が、恐ろしく、そして輝かしく見えてしまう、そんな作品でもあります。
あらすじ
主人公を演じる為に、松田優作は極限までにやせ細り、奥歯を抜いて、幽鬼みたいな陽炎の存在感のある男を演じ、劇中の中で活躍する、その姿に筆者は息をのんでいました。
刑事を雨の中に襲い、ナイフで殺害した後に、拳銃を奪う。違法カジノにて強盗殺人事件を犯し、大金を手に入れた主人公 伊達邦彦は、かつては東京大学を卒業したエリート。スポーツに射撃、頭脳明晰と、全てに恵まれていた人生でしたが、報道関係者としてベトナムへと渡り苛烈なる戦場の狂気に駆り立てられ、日本に戻っても、戦場で見た狂気を忘れられず、犯罪へと手に染めて。その姿は、恐怖映画を見るよりも恐ろしく、そしてなぜか惹かれてしまうカッコよさがありました。
作中で、コルト・シングル・アクション・アーミーが登場します。これは映画のテクニカル・アドバイザーを行ったトビー門口氏の私物のモデルガンで、グリップは19世紀末に実銃用に作られたアンティーク品だったと知った時は、驚いたものです。
みどころ
特にグリップの裏側に書かれていた文字、その中に隠されていた歯など、本物だったらしい。劇中でクラシックを聞きながら、こめかみに銃口を向けて、引き金を引き、死んだ真似をする姿は、実に恐ろしいモノでした。そして銃を分解し、文字と歯を見つけて感化されていく主人公。この作品の中で見る松田優作は、セリフまでに聞きほれてしまう程の演技を行っていきます。
特に相棒となる鹿賀丈史が演じる真田徹夫に恋人を殺すように言い、君は今確実に神さえも超越するほどに美しいと褒めたたえ、直情的な野獣として生きていく事を進めるシーンは、必見でもあります。
松田優作を語る上で、是非に見て欲しい作品です。
野獣死すべし (C) 1980 角川映画
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