「黒目がちな人」という言葉が表すように、黒目が大きい人は可愛らしいイメージがあります。そのため、カラーコンタクトなどを使って、黒目を大きく、見せようとする人は少なくありません。
では、極限まで黒目が大きくなったらどうなるのでしょう。通常ならば白目であるはずの部分が黒目になったら? それはかなり、不気味な容姿になるはずです。
こうした恐ろしい目に関わる都市伝説に「黒い目の子供」というものがあります。この都市伝説はどんなものなのでしょうか。都市伝説の背景や歴史、さらには、その正体について考察していきます。
「黒い目の子供」の概要
「黒い目の子供」とは、アメリカやイギリスで目撃されたとされる、子供の姿をした怪異的な存在(UMA)です。Black eyed children(kids)を略して「BEC(BEK)」と呼ばれることもあります。これ以下の本文では、BECの呼称で統一していきます。
BECの特徴は、その名の通り、白目の無い真っ黒な目をした子供の姿をしているということ。年の頃は6歳からティーンエイジャーくらいまでとされており、生気のない、青白い肌色をしていると言います。
基本的には2人一組で行動し、深夜の家の玄関に現れて中に入ることを懇願するとされています。ときには、車を運転中の人の前に現れてヒッチハイクをするという噂も。
どことなく死人や幽霊を連想させる見た目であり、子供の姿をしていることも相まって不気味さが際立っています。
代表的な目撃例
BECは1980年代から語られている歴史のある怪異です。そのため、数多くの目撃情報があります。その中でも新しく、特徴的なイギリスでの体験談を見ていきましょう。
イギリスのイングランドに、キャノック・チェイスと呼ばれる田園地帯があります。ここは美しい自然が残ると同時に、幽霊やUMAが出ることで有名です。そしてその中には、BECの目撃談も少なくありません。
2021年のこの場所で、若いカップルがキャンプ中にBECを目撃しました。深夜に響く子供の笑い声に引かれ、森の中に分け入っていったところ、少女のBECに出会ったと言います。BECの動きは到底人間にはできないもので、笑い声は目の前の少女ではなく、周囲から響いているかのようだったとか。
恐怖に慄きながら逃げ出した2人は、超常現象に詳しい作家に相談し、この体験談が公のものとなりました。
「黒い目の子供」の歴史について
「黒い目の子供/BEC」という都市伝説は、どのように生まれたのでしょうか。
正直な所、BECの成立についてははっきりしていません。1990年代中頃のアメリカ・テキサス州の記者が書いたものを始まりとする説が一般的ですが、1980年代以前からイギリス国内で目撃され続けていたとする話もあります。
特にイギリスでは、先に挙げたカップルの相談を受けた作家、リー・ブリックリー氏がBEC研究の第一人者であることもあり、タブロイド紙が大きく扱うなど盛り上がりは大きいものです。
どちらの説が正しいのかは分かりません。しかしここでは、少し現実的な観点からBEC成立の歴史を探っていきましょう。
世界各地に、口頭で語り継がれてきた口承伝承と呼ばれる怪異譚があります。それは、古くから口伝いに語られることによって、少しずつ形を変えながら今に残っている恐ろしい存在たちの話です。しかし、BECは違います。
BECは比較的近年に成立し、しかも、インターネットの発展により広がっていった怪異譚です。文字を媒介として人々に広まっていく、都市伝説の中でもより新しい形の、「インターネットミーム」や「クリーピーパスタ」と呼ばれるものに近いでしょう。
BECの目撃談は、「光の無い黒い目をした子供」や「家や車に入りたいと伝える」といった一定の共通点を持ちながらも、様々な話型があります。先に挙げたカップルの目撃談などは、少し変わった形の目撃談だといえるでしょう。
インターネットで語られる都市伝説は、昔の伝説よりも早く人々の間に広がります。広がるスピードが速いということは、話が変形していくのも早く、類話も生まれやすいのです。
もしかするとBECは、これからも変化を遂げていくのかもしれません。
「黒い目の子供」の正体を探る
BECが本当にいるにせよいないにせよ、その正体は気になるものです。ここでは、BECと呼ばれる彼らの正体について、考えていきたいと思います。
BECの正体については、インターネット上で調べられるだけでもいくつかあります。代表的なものは、悪霊/悪魔説と宇宙人説でしょう。
BECが目撃されることの多いアメリカやイギリスは、共にキリスト教徒の多い国です。キリスト教徒にとって、悪魔は恐怖の象徴です。そして、その悪魔に従う悪霊もまた、恐れるべき存在でしょう。BECの不気味さからも、それを悪魔や悪霊の仕業として考えられても不思議ではありません。この説は、先に挙げたタブロイド紙も支持しているものです。
次に宇宙人説。宇宙人といえば、人間とは違う目をしているはずです。特に、グレイタイプ(写真にも残っている、一番メジャーな印象の宇宙人)のと呼ばれる宇宙人は、吊り上がった目に白目の無い、大きな黒い目をしています。「黒い目」という特徴が重なったことで、BECと宇宙人が結びついたのかもしれません。
そしてもう1つ、筆者がBECの正体として考えたものがあります。それは、ごく身近にある違和感や不安感、安心できる場所がなくなる恐怖といった感情が、「真っ黒な目の子供」として表出したものではないか、ということです。
真夜中に、外にいる子供。どんなイメージが湧きますか? 不良とは思わずとも、変な時間に外にいることに対する違和感を覚えるはずです。
また、BECの最大の特徴である真っ黒な目は、人に恐怖感を与えます。「目は口ほどにものを言う」と言いますが、目を見ただけで、それが異形の存在であることが分かるのです。それがどんなに可愛らしい声をしていても、白目の無い目で見つめられたら怯えてしまうことでしょう。
さらにBECには、家や車の中に入りたがるという特徴があります。家や車の中はいわゆるパーソナルスペースで、ほとんどの人が安心感を覚える場所の1つ。そんな所に入り込みたがる(よく分からない)存在は、「安全圏がなくなるかもしれない」という恐怖を煽るものになります。
家にいても襲ってくるかもしれない恐怖や不安感。そうしたものが、BECという形を取って都市伝説と化したのかもしれません。
「黒い目の子供」に遭遇したら?
「口裂け女」の例を見れば分かりやすいのですが、日本の都市伝説に登場する怪異には、対抗策が用意されていることが少なくありません。べっこう飴を舐めさせるなり、「ポマード」と唱えるなりすれば、生き残れる可能性が充分にあるのです。
しかしBECはそうではありません。
明確に「殺される」などの描写こそないものの、「こうすれば撃退できる」という方法もないのです。
どうやって対処すればよいか分からない。これは、先に述べた「恐怖や不安感」をより分かりやすい形で見せつけるものでしょう。「出会ってしまったらどうしよう」と考えるのは辛いものです。
さて、もしあなたの目の前にBECが現れたらどうしますか?
※画像はイメージです。
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