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人の世に未来への意志を問うハードアクション「ブラスレイター」

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「白馬の乗り手は勝利の上にもなお勝利を」「赤馬の乗り手は平和を奪い争乱を」「黒馬の乗り手は価値を計り厳格なる統制を」「青白き乗り手はその名を『死』といった」・・・「(黙示録の)四騎手」と通称され、キリスト教の聖典として一角を為す新約聖書において、最も印象的なモチーフの一つとされます。

その中にあって唯一「死」という名を冠し、その名に違わぬ役割を与えられたのが「BLASSREITER(ブラスレイター)」…ドイツ語で「青白き乗り手」を意味する第4の騎手です。

その名をタイトルに頂く本作は、命を落としたはずの者が異形となって生者を襲う…黙示録の終末を迎えるかのような近未来を舞台に、誰が異形かも分からなくなる猜疑心に蝕まれる中でヒトがヒト足らんとする意志と、ヒトを逸脱する事での「救済」を囁く意思が交錯する物語です。
猛獣の如きバイクを駆って駆け抜けては切り捨て去る、異形の青き騎士が見据える先にあるものとは!

目次

重厚なデザイニングと鮮烈なアクションが描き出す、猛り狂うフルメタルモンスターズ

猛然と画面を駆け回る重火器満載の戦闘バイクが追い詰めるのは鎧の如き金属質の身体を持つ異形の怪物…本作においてまず印象付けられるのが、圧倒的質量を凄まじいエネルギーで振り回して見せるパワフルなアクションシーンです。
刺々しく無機質な金属片が幾重にも折り重なる事で作り上げられる強靱な中に非合理な艶めかしさを漂わせる融合体(デモニアック)に対し、迎え撃つのはシンプルな厳めしさを組上げ荒れ狂う暴威に形を与えたような人類側擁する兵装の数々。

制作された10年程前の当時にあって「板野サーカス」等と呼び声高き板野一郎氏を監督・シリーズ構成に迎え、デザイニングに名を連ねるのは当時メジャーへ駆け上がらんとしていたニトロプラスを支える存在であったNiθ(ニシー)氏。
「マブラヴ」「デモンベイン」等の作品名からピンと来る方であれば、そのデザイニングにも納得される事でしょう。

2020年現在においてその両名が名を連ねたとあれば、色めき立つ方は決して少なくないと言えるであろう重厚な布陣が織り成す映像は、往年のファンならずともその圧倒的迫力において正しく一見の価値あり。
後年、主要キャラクターが立体化も為された格好良さをまずはご堪能下さい。

夜よりも深く身を切るように切なく。声無き叫びに満たされた「光の無い物語」

本作が持つ妙味はそのアクションに留まるものではありません。苛烈極まる戦いの影で、戦いに赴く者達が守ろうとするもの…平穏な生活や日常といった立ち返る場所が、蝕まれ、無残に崩れ去って行く様を「耽美」とすら言える描き方によって緻密に抉り出していく物語展開が、本作をあまりに印象深い作品として仕上げています。

それは異形が跋扈する現実離れした計り知れない世界の問題ではなく、人と人、人と社会、或いは社会と社会…2020年代を迎えた今日にあってあまりにも「現実」的な酷く生々しい残酷さの中、塗炭の苦しみに喘ぎ、悩み、苦しむ果てに死すら救済となる程の絶望を湛えた声無き叫びによって満たされた物語と言えるものです。
シリーズ構成に板野一郎氏と共に名を連ねる虚淵玄氏、脚本におけるチーフライターとして小林靖子氏の両名が記されている事で、その物語性について頷いてしまう人も少なからず居られるというものかもしれません。

個々の人間…中には「幼い」という形容すら当てはまる年少者にあってなお、生きるという行為において等価となる人間を濃密に描きながら、人と人との相関、ないし社会という不定形概念によって歪められる群像劇を見事に一つの物語として染め上げてみせる手腕は、2008年という時期において既に一方ならぬ高みへ至っていた事を実感させてくれるものとなっています。
その深く、苦しみに満ちた「生ける絶望」の中にあって、人は何を見出そうとして生きるのか…是非その結末を見届けて頂きたいと思う次第です。

はてさて

制作スタッフ陣において主軸を為す4名を改めて眺め、今となっては再結成する事だけでも高いハードルを感じてしまうビッグネームが一堂に会した豪華さを感じずに居れない本作。

2008年という制作時期であるからこそ出来たという奇跡に思いを馳せる一方で、決して看板倒れなどではない、それぞれが持てる実力を結集して完成した事が徹底して伝わる作品と言えるでしょう。
その「物語」が絶望に彩られた絵空事ではなく、醜悪な現実として押し寄せつつある事を肌身に感じる今、改めて圧倒的クオリティと共に「実感」して頂きたい珠玉の一作です。

東映ビデオ
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(C)2008 GONZO・Nitroplus / Blassreiter Project

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