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武家屋敷に行くので立ち会ってくれ!

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古い話になるが、幼少の頃から付き合いのある親類の住職から連絡があった。
その用件は、武家屋敷に行くので立ち会ってくれ──。

住職は親戚の叔父で僕が学生なのを良いことに、暇であろうと──いつも突然に脈絡のない連絡をしてくる。つまり、なにか厄介事が起きて手伝いが欲しいのだろう。

たぶん初夏~盆には少し早い位、そんな時期だったと思う、夏休みだった事もあり住職の目論見どおり暇だった。
嫌な予感はするのだが断る理由もなく、住職の住む寺へ向かった。

久々にあった住職はやたら笑顔だ、しかも夕飯がやたら豪華だ。
これは余程の事なのだろう、この時、既に悪い予感は当たったと確信したのだ。

目次

はてさて・・・

次の日の朝早く、早速、くだんの古い武家屋敷へと連れていかれた。
想像した通り、石垣の上半分が白い壁の長い塀に取り囲まれた、やたらでかい屋敷だ。このご時世にどうすればこんな屋敷に住む事ができるのであろう?

手入れた日本庭園を抜けて屋敷の中へ、玄関には虎の絵が書かれた豪快な衝立があり、まさに武家住宅。
奥の座敷に通され、どんな戦国武将が現れるのであろうかと思っていると、やってきたのは普通のオヤジ──ガッカリだ。
だが以外に短気な性格のようで、なんのもてなしも無い──改めてガッカリだ。

気を取り直して本題に移ろう。
屋敷の封印の間に案内された。そこは三畳程の小さい部屋、ただ天上がやたらと高い。
そして封印された場所というのは壁。一見ただの壁とあまり違いは無いのだが、壁ではないと気が付く者は封印の意味が判る者なのだ。

住職である叔父はもちろん解る側、僕はというと何度もこんな事でこき使われたので、よくも悪くも解ってきてしまった。おそらく叔父の策略なのだろう、クソオヤジにハメられた気はするのだが・・・致し方ないのが本音だ。なぜなら暇なのもともかく、破格な金額を頂けるオイシイバイトでもある。

封印の間

元々その部屋は「座敷牢」だったらしいのだけれども、牢とは名ばかりで捉えられた者は殺される事が前提。その部屋がやがて「呪物」と化して封じられたというのだ。
この武家屋敷に住んでいた子孫たちは、「この部屋には近づくな」という言い伝えを頑なに守って生活してたそうで、ほとんど全員が良い死に目にあっていないらしい。

今回、住職が呼ばれたのはそろそろ封じ直しが必要だという理由らしいが、実際は観光資源としてマイナス要因があっては人が呼べない、行政の印象が悪くなれば助成金をチュルチュルすることが出来なくなるからが持ち主の本音だそうだ。呪物の付いた武家屋敷というだけでとんでもない話だが、ロクでもない話でもある。

封印するには一度封印を解いてから、改めて封印しなおす。ガスを抜くように悪い呪物を発散させ、一度やっておけば50年ぐらいは何事もないらしい?

封印作業

ぎっちりと封印された部屋へ扉を開くと外の光で浮かび上がる室内。
視界に入ったのは飛び散ったのであろう血の跡。畳も壁も天上も室内は一面血みどろ。どす黒く変色し経年を思わせるが、どうしても年月を経たように感じられない妙な生々しさがある。

詳細な手順は割愛させて頂くが、しばらく読経と儀式を行い一旦封印する。これを2〜3日行う。
簡単なようでそうでは無い。

夜は武家屋敷に泊まるのだけれど・・・「夜中に絶対に起きるな」と住職はニヤリとしながら言った。

古い囲炉裏端に布団を敷いて、夜中に起きてはいけないが起きてしまう可能性もあるので寝る前に深酒をし、次の日は二日酔い確定だと思いながら酔い潰れた。

迂闊だ

だがしかし・・・朝だと思って目を覚ますと夜中の1時半頃。
あれだけ呑んだのに、全く呑んでいないように頭がスッキリ覚醒してしまった。

家の中は真っ暗には違いないが真っ暗ではない、屋敷が炎に取り囲まれている。
障子にメラメラと火の手が上がっているのが映る、これは本物ではない。そう確信できたのは、熱くもなく、音もないからだ。
しかも夏の夜らしさもない、肌寒い程の空気感。唖然として障子の向こうの炎を見ていると・・・。

「XXXXXXXXXXXXXXXX」

背後から声がハッキリ聴こえたのだが、なにを言っているのかは不明瞭だ。
振り返ってはいけない。
返事をしてはいけない。
何のリアクションもとってはいけない。
そういう代物なのは気配で分かる。

やがて取り囲むように声が聞こえてくる。
当然、目視はしていないが見えるのだ。

怖い怖い

たぶん合戦で着るような鎧を着た者から、よくある昔話で出てくるような着物を着た人。
男性、女性、子供、大人とそれぞれいるのだが、共通して血まみれの姿。
血が床にポタリ、ポタリと落ち、その度にどんどん増えいき、自分をぐるりと取り囲んだ。

怖すぎて声も出ない。それでも声や息が漏れそうで、震える両手で口を必死に抑えた。
肉眼ではなにもないはずの真っ暗な深夜の武家屋敷、何かが蠢き、視えていた。

その何かは血が落ちる度に増えていった。
ある一点で雰囲気が変わり、1つの鎧武者が刀を振り上げ、それに従うように他の武者たちも刀を振り上げた。
そして一斉にたくさんの刀が振り下ろされた!

「ああああああああああ!!!!!!」

暗転

気がつくと住職に起こされ、ニヤニヤしながら「未熟者」と罵倒された。
ムッとしたものの、きちんと朝が迎えられた事に安堵した。

しかし目が覚めたのは囲炉裏端ではなく、襖を挟んで隣の部屋。
ふと元々寝ていた部屋の布団があった辺りの床を見ると真新しい傷が増えていた。
昨晩の出来事は何処までは本当で、何処までが夢だったのだろうか?

数日して儀式も滞りなく終わり、体験に動揺冷めやらぬまま住職と帰路にはついた。
あの日の夜中以外に奇っ怪な体験はしなかったのは、最初の邪気のような物が強烈だったからだろうと思う。

住職はあの夜の出来事については何も話さない、自分もなにも言わなかった。
経験から住職は解っていたのだろう・・・ある意味でハメられたと思うと腹が立つ・・・。
だがしかし!渡されたバイト代の金額からすれば──万事OKだ!

※画像はイメージです。

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