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ロボットは人間足り得るか?不気味の谷現象の真実

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ファミリーレストランに接客ロボットが導入され、注文をとる姿を見かけることも増えた昨今。
今回はロボットが人に近付く過程で避けて通れない、不気味の谷現象の真実を追求しました。

目次

不気味の谷現象とは何か?

不気味の谷(uncanny valley)現象とはロボット工学者の森政弘が1970年に提唱した学説で、ロボット工学以外にも芸術・心理学・生態学など、幅広い分野に適用されます。
これは人工物の外見や行動が人を模倣する過程で起こる、生理的な拒絶反応をさします。

わかりやすい例として挙げるのが、家電メーカー・ソニーが1999年に発売したペットロボットAIBO。
ソニーショックでロボット事業が縮小されたものの、2018年にはaiboと改名し、コンスタントに生産が続けられています。
家庭用掃除機のルンバやaiboを「気持ち悪い」と感じる人は、いたとしてもごく少数ではないでしょうか。
対して、Engineered Arts社が開発したAmecaはどうでしょうか?

金属の機械部品と人間を再現した顔部分とがちぐはぐで、些か気持ち悪さを感じませんか。
2014年に感情を理解する人型ロボットとして登場したPepper(ペッパー)の甲高い声や、張り付いた笑顔が苦手な人はきっと多いはず。

レオナルド・ダ・ヴィンチの不朽の名画『モナリザ』が不気味といわれるのは、写実性や立体感を極めすぎ、不気味の谷に落ち込んでしまったせいです。
不気味の谷のグラフを見ると、当初は好感を持って上昇していたグラフが、技術の到達点において急激に落ち込み、そこからまた上がっていくのがわかります。
この急降下した「谷」部分こそ、パラダイムシフトの転換点なのです。

何故人は人に近いロボットを嫌悪するのか?

では何故不気味の谷現象が起こるのでしょうか?
前述のルンバやaiboは、人間が親しみを持ちやすい姿に設計されました。aiboの由来が相棒をもじっていることからも、その役割はおわかりいただけますね。
また、ルンバの丸く平べったいフォルムからは攻撃性が取り除かれています。

対して人に極めて近いロボットは、それが人なのかロボットなのか、本質はどちらなのか混乱を招きます。
皆さんは分離困難仮説をご存知でしょうか。
これは分離困難な異物を回避したがる人間の習性で、この世に存在しない青いイチゴや銀色のブドウ、あるいは虎と蛇と犬のキメラなどを、私たちの本能は脅威と見なすのです。

現在の技術では人間と完全に同じロボットの再現は不可能であり、外見や動作に強い違和感が生じます。
瞼の不規則痙攣や関節のメタリックな金属部品など、見た目が人に近いからこそかえって気持ち悪さが強調されるジレンマ。
これは何もロボットに限った話ではなく、デパートのマネキンやホラー映画のゾンビに、私たちが覚える感情とよく似ています。

姿かたちは人なのに前者は瞬きもせず、後者は明らかに人と異なる動きをするのですから、非生物的な嫌悪を煽るのは仕方ありません。
ドラえもんが国民的人気を勝ち取れたのは、丸っこくデフォルメされたビジュアルの親しみやすさによるもの。
ドラえもんの見た目がPepper君だったら、のび太たちはあっさり受け入れられたでしょうか?

不気味の谷現象は昔からあった?『ホフマン物語』のオリンピア

「不気味の谷」現象は1970年に名付けられましたが、それに類する心の働き自体は昔からありました。
ドイツ・ロマン派の詩人E.T.A.ホフマンの『砂男』には、一風変わったヒロイン・オリンピアが登場します。
主人公のナタナエルは物理学者・スパランツァーニの書斎を訪れた際、彼の娘・オリンピアに一目惚れします。

スパランツァー二に紹介されたオリンピアは大変美しい少女で、歌唱の能力に秀でていました。
後日オリンピアにプロポーズしにきたナタナエルは、スパランツァー二と知人が彼女を引っ張り合い、激しく口論する現場を目撃。するとオリンピアの眼球が回りながら飛び出し、ナタナエルはショックで卒倒してしまいました。
なんと、オリンピアの正体は人形だったのです!

自動人形(オートマタ)の語源は自動機械。ギリシャ語の「自らの意志で動くもの」をさし、主に12世紀~19世紀のヨーロッパで作られました。
当時から既に人間を模した精巧な自動人形を怖がる声があり、不気味の谷現象の萌芽が興味深いです。

このカウンターとして語られるのが、ギリシャ神話の『ピグマリオン』。
口うるさく厚かましい現実の女性に失望したピグマリオンは、自分の頭の中だけに存在する理想の恋人の彫像を作り上げ、完成品に恋をしました。
物言わぬ彫像に服を着せ食事を用意し、献身的に世話するピグマリオンを哀れんだ女神アフロディーテは、彼の願いを叶え、彫像に命を吹き込みます。
不気味の谷に落ちた者とそれを乗り越えた者、真実の愛を手に入れたのは果たしてどちらなのか・・・考えさせられる結末ですね。

オクターヴ タサエールのピュグマリオンとガラテア
オクターヴ・タサエール, Public domain, ウィキメディア・コモンズ経由

猿でもわかる不気味の谷

近年の研究において、猿にも不気味の谷が存在することが判明しました。
アメリカプリンストン大学の進化生物学者たちは、五匹の猿に数枚の画像を見せました。
猿の顔のデフォルメイラスト・実物に近いCG画像・実際の猿の写真がその内分けです。
結果、実物に近いCG画像を見る頻度は他と比べ極端に低く、猿もまた本物に近い偽物に違和感を抱く事実が立証されます。

人間の乳児に対しても同じ実験が行われました。
実験に用いられた画像は三枚、赤ちゃんの母親・見ず知らずの女性・母親と女性の合成写真。
最後の写真は顔の左半分が母親、右半分が別の女性にモーフィングされています。
さて、赤ちゃんの反応は・・・意外な事に、大半が三枚目の写真で泣きだしてしまいました。
三枚目を二度と見たらがない赤ちゃんもおり、赤の他人の写真より、半分母親半分別人の写真に恐怖を覚える傾向が見て取れました。

ちなみにこれは月齢9か月以降の赤ちゃんに現われる傾向で、それ以前は特に変化なしだそうです。
月齢9か月前の赤ちゃんは、蛙・蜘蛛・蛇を嫌悪せず、手掴みにも抵抗を示しません。
「怖い」「不気味」などの感情は9か月以降に発生するもので、それ以前は「快」「不快」の二極が占めている、とする説が有力です。

人類は不気味の谷を乗り越えられるか?

AIの進化に伴い、ロボットは急激に人に近付いてきました。今後もし人間にしか見えないロボットが誕生したら、我々は彼等を受け入れられるでしょうか?
フランスのゲーム会社クアンティック・ドリームが開発した『Detroit: Become Human』は、アンドロイドが普及した近未来が舞台のアドベンチャー。

本作では人間にしか見えない高性能アンドロイドと、彼等を迫害する人類の対立を軸に、不気味の谷問題が解決したとは言い難いディストピアが描かれました。
仮に不気味の谷を乗り越えられても、今度はロボットに仕事をとられる問題が浮上します。
海外の脚本家やイラストレーターがAI生成ツールに著作権を侵害され、仕事を奪われることを危惧してデモを起こしたニュースは、AIと人類の共存の難しさを語っています。

不気味の谷のその先へ

以上、ロボットの進化を語る上で外せない不気味の谷の学説を検証しました。
数十年後には人間と見分けが付かないアンドロイドが生まれ、不気味の谷を克服した世界が実現するかもしれません。
皆さんは不気味の谷に対してどんな意見をお持ちでしょうか、コメントお待ちしています。

※画像はイメージです。

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