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ミシガン湖で任務に就いた米空母ウルヴァリンとセーブル

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アメリカ内陸のミシガン湖に存在した2隻の米海軍空母の任務とは?

第二次大戦中のアメリカ海軍に、外洋に出て来ず内陸の湖の中で活動していた空母があったのをご存じだろうか。

その湖とはアメリカ大陸の五大湖のひとつ、ミシガン湖である。
そしてその空母とは、五大湖に就航していた二隻の貨客船を空母に改造した「ウルヴァリン」と「セーブル」で、共にシカゴを母港として空母搭乗員の育成のために大きな役割を果たしていたのである。

目次

ミシガン湖の訓練空母

ウルヴァリンは1942年8月、セーブルは1943年5月にそれぞれ就役した。この2隻は姉妹艦であったが微妙に要目が違っている。

■ IX-64 ウルヴァリン USS Wolverine


作者 User Felix c on en.wikipedia [Public domain または Public domain], ウィキメディア・コモンズ経由

ウイキペディアによると、ウルヴァリンは基準排水量7,200トン、全長150m、全幅30m 最高速力18kt、乗員270名となっており、セーブルは基準排水量6,584トン、全長163m 全幅17.7m 速力18kt 乗員300名となっている。

機関は両方とも蒸気機関で両舷に外輪を備えた外輪船であるが、外輪は舷側の囲いの中に収容されていたため、いわゆる黒船の様なモロに見える外輪船ではなく、一見すると島型空母の体裁を保っている。

湖水上での離発艦訓練専用であるので、もちろん対空装備は全くなく、格納施設も一切ないので固有の搭載機も無かったようである。この二隻は第二次大戦初期の空母の不足を補い、太平洋や大西洋上での日独潜水艦の脅威を気にせず、ミシガン湖上で粛々と大量の艦載機搭乗員を育成し続けた。

■ IX-81 セーブル USS Sable

作者 US Navy (US Navy and Marine Corps museum collection) [Public domain], ウィキメディア・コモンズ経由

この2隻によって育成された搭乗員の数はなんと18,000名近くに上り、離発艦の回数は2隻合計で116,000回にも上るのである。

太平洋で暴れ回ったあのハルゼー提督の機動部隊も、この2隻の蒸気機関空母がなければ戦力になっていなかったと言っても過言ではない。

訓練空母の役割

ただ、湖の上でのんびりと訓練をしていたのかと言うと決してそうではなかったようである。ミシガン湖は湖とは言え瀬戸内海よりもはるかに広く波も風も外洋並みである。

そんな環境で、前線でくたびれた機体を使って未熟な搭乗員が離艦発艦の訓練をするわけであるから、当然事故が多発し1943年から1945年までの間に120機以上が離発艦を失敗して墜落したと言う。

しかしその過酷な訓練に耐えた搭乗員が太平洋戦線に出てきた事を思えば、大戦末期の米機動部隊の圧倒的な強さには、ミシガン湖の荒波での訓練が大いに寄与していたのかも知れない。

■ ウルヴァリンとセーブル

作者 Official US Navy Photograph from Joe Radigan MACM USN Ret., [Public domain], ウィキメディア・コモンズ経由

太平洋戦争の緒戦の日本海軍航空隊の技量は確かに優れていたが、後続を育てられず優秀な搭乗員が消耗する一方であったのに比べて、太平洋上の米機動部隊はミシガン湖という強力な後方基地を持っていたのである。そして次々と若い戦力を育て続けたのが湖上の空母「ウルヴァリン」と「セーブル」だったのだ。

そして

戦後、ミシガン湖からは40機以上の艦載機が引き揚げられたと言うが、今もまだ100機近くの機体が湖の底に眠っている。
また、これら二隻の空母も1945年の末に相次いで除籍され、数年後にひっそりと解体されている。

機動部隊の華々しい戦果のかげには、錬成途上での多くの犠牲と地味な任務の積み重ねがあったのである。

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