私は趣味で占いをしています。あくまで趣味レベルなので、気が向いた時に友人や知人を占う程度ですが。
今回はその占いを通じて関わることになった出来事をお話したいと思います。
占って欲しい人がいる
話の発端は私が所属する、社会人アウトドアサークルの知人との会話でした。
「占ってほしい人がいる。」
知人の釣り仲間にAさんという男性がいるらしいのですが、不可解な出来事に悩まされているというのです。
「何か罰当たりなことでもしたんじゃないの?心当たりは何かあるの?」
キャンプや釣りなどのアウトドアのフィールドには、忘れ去られた祠や古墳、無縁仏など、ほんらい粗末に扱ってはならないものが草木に埋もれていることがたまにあります。それらを遺物とは知らずに腰掛けたり、立ち小便をする等、罰当たりなことをすると祟りのようなものを受けてしまうことがあります。
「うん、ある。あれしか考えられない。あれは・・・」
夏の出来事
以下は知人の話をまとめたものです。
去年の夏、知人とAさんは渓流釣りを楽しむために北海道へ旅行に行ったそうです。道東の雄大な自然を満喫しつつ、ニジマスを狙っていました。
ふと気づくと、さっきまで抜けるようだった青空がどんよりと曇って、ひと雨くるかな・・・そう思った時
「かかった!!」
Aさんの興奮した声に振り向くとロッドが極端にしなり、そこから伸びるラインが水面に吸い込まれています。
これはかなり大きい。
2人がかりで必死に吊り上げてみると、知人はその異様な姿に息を呑みました。
ニジマスやアヤメ、またはライギョとも全く違う見たこともない魚だったのです。
かなり大きくて100cm以上は確実にあり、全体的な雰囲気はウツボに近い。背びれと胸びれが大きいウツボ・・・それだけでも異様なのですが、特に気味が悪いのがその目。
一般的な魚の目とは違い、黒目と白目のはっきりした、哺乳類の目・・・まるで鹿の目だったそうです。
釣り上げた魚は暴れるでもなく、まるで死んだように横たわり、その奇怪な目だけがギョロギョロと忙しく動いています。
知人はゾッとして、
「これは早くリリースしよう。気持ち悪いよ。」
と訴えますがAさんは逆にムキになり、
「いや、釣ったら食うだろ!動画も撮ろうぜ!」
と焚き火で焼いて食べると言い張ります。
Aさんと異変
このAさんは癖の強い性格で、すぐ強がって無茶をするので、あまり人が寄り付かないのだそうです。
しかし強いリーダーシップを発揮することもあるため、そこを魅力に感じて知人は付き合いを初めたのですが・・・。
河原に無惨に散らかった焚き火の後、生焼けの怪魚をぐちゃぐちゃにつつきまわして、
「不味い、くそ不味い。」
と下品に笑いながらスマホ撮影をするAさんの姿を目の当たりにして、今後の付き合いは控えようと決意したそうです。
「それで、そこからは距離を置いてたんだよ。」
「しばらく経ってAから連絡が来た。お前んとこ変なこと起きてないかって。」
どうも旅行の後、Aさんの奥さんに腹痛や血便が続き、原因不明のまま自宅療養となり、次に娘さんが不眠と精神疾患を患い入院。さらには職場の従業員・・・。
Aさんを中心に体調不良者が続発しているそうなのです。
「Aさん自身には何も起きてないんだ。ただ周りの人間にじわじわと良くないことが広がってきてるんで、いよいよ誰もAさんには近づかなくなってしまって。経営している会社も傾いてきているらしく、見るに見かねて・・・・」
「サークルの中で、こういう事は君に相談すると解決する事があると聞いたので・・・」
私にはほんの少し霊感があり、他者の霊的な問題と解決方法がなぜか解るのです。上手くコントロールできていないので、調子のいい時だけしか出来ませんが、それでも頼みやすいのか相談する人が後をたたないのです。
占いの約束した日
2週間後、居酒屋の個室座敷、占いを約束した日です。テーブルを挟んで、私の向かいに知人とAさんが座りました。
初めてみるAさんはイメージと違い、神経質そうな目つき、顔も太っているというよりは浮腫んでいる。正直嫌な感じが漂っていました・・・そして、不気味なほど生臭い。
早く終わらせたくなった私は、挨拶もそこそこに「話はあらかた聞いておりますので。」とタロットカードを広げます。
私にとってタロットを繰るのは集中するための手順でしかなく、実は絵柄も見ていません。
占いというより霊視に近いのかもしれません。
自分を透明にしていって、相手の波長に同期するイメージ・・・。
吐き気がする。鳥肌が立つ。
テーブル上の刺身や肉料理がただの生き物の死肉にしか見えない。加工された生き物の死骸。
死骸たちの中心にはAさん。
あたまが痛い、Aさんが気持ち悪い。
Aさんを一目見た時から直感していました。
この人は助けられない。この人の肩を持ったら私にまで災いが降り掛かる。
「これからは、なるべく肉や魚を食べないで生活してください。あと、可能な限り生き物を殺さないように生きていってください。」
これが私が言えるギリギリです。
以上が私が経験した出来事で、しばらく悪夢にうなされました。
後日談
その後、アイヌに「イコンタビブ」と言う魔魚についての伝承があることを知りました。病や災いを運ぶ存在だと言うことです。Aさんが殺して食べたものが「イコンタビブ」だったのではないでしょうか・・・そして呪われた。
その後のAさんがどうなったのかは知りません。知人もあれからすぐにアウトドアサークルを辞めてしまい疎遠になったので詳しくは解りませんが、二人とも良い噂は耳にしません。
キャンパーや釣り人、登山者。アウトドアを愛する人々の大部分はマナーを守り自然を楽しんでいます。ただ一定数、草木や生き物の命をまるでおもちゃのように自分勝手に扱う人がいることも事実です。
心を改めないといつかAさんのように呪われてしまうかもしれませんね。
我々は自然への敬意や畏怖の念を忘れずにいい付き合いをしていきたいものです。
思った事を何でも!ネガティブOK!