私は友人たちと、県内某所にある廃病院へ向かった。
きっかけは、私が普段見ている推しのユーチューバーが、廃墟探検の動画を投稿したことだった。
内部の様子や探索の過程が妙に現実的で、単なる心霊ネタというよりも、社会から切り離された場所を覗き見るような感覚が面白かった。
その動画の事を友人にLINEで話すと盛り上がり、「知っている廃墟があるから、実際に行ってみないか」という流れになった。
大きな廃病院
県内では最恐クラスの心霊スポットとして知られており、幽霊を目撃したという話や、侵入した者が霊障に悩まされたという噂が絶えない。
6階建てぐらいのかなり大きな建物で、営業していた頃は多くの患者で賑わっていたのだろうと想像できる。
だが現在は、窓ガラスの大半が割れ、理解に苦しむ位置にまで落書きが残され、かつて人々を治療していたとは思えない、荒れ果てた外観だった。
この病院で治療を受けた患者や、働いていた医療従事者が見たら、何を思うだろうか。
しかし、当時の面影が色濃く残っているからこそ、退廃した廃墟が面白く感じるのだと思う。
廃墟に侵入してみた
話は戻るが、私たちはスマホをライト代わりに、病院の中へ入っていった。
内部は想像以上に荒れ果てており、床には医療器具のものだったらしき金属片や、崩れ落ちた天井材が散乱し、プライバシーといはいったいと感じられるほど、患者のカルテまでが無造作に放置されていた。
しばらく建物内を歩き回ったが、特に目立った異変は起こらなかった。
友人は刺激を求めているようで、「二人で一緒にいても怖くない」と言い出した。
結局、各自ばらばらに行動し、動画を撮影して、あとで見せ合おうという話になり、私は病室が並ぶ上の階へ向かい、友人はよりスリルを求めて地下へ行くことになった。
30分後に入口で落ち合うと決めて、私たちは別れた。
30分後
私たちは合流し、落ち着いた場所でお互いの体験を話すためにファミリーレストランへ向かった。
まずは私の話で、病室には入院患者用のベッドが整然と並び、千羽鶴がそのまま残されている部屋もあったこと。ナースステーションには、患者からの感謝の言葉が書かれた色紙が今も掲示されていたこと。
在りし日の病院の姿を想像すると、どうしても少しセンチメンタルな気分になった。
それを聞いた友人は、得意げに自分の体験を語り始めた。
地下で小さな光の粒のようなものを見た、幽霊、たぶん人魂だろう。
さらに、女性の泣き声や、人影のようなものを見た。
とっさに動画を撮ろうとしたが、その時点で携帯電話はすでに操作不能になっていたという。
「携帯が壊れたのが、何よりの証拠だろ」
幽霊に遭遇すると電子機器が壊れる、という話を引き合いに出し、友人は興奮気味に語った。
確かに、そういう話を聞いた事があるので、霊的ななにかであると思う。
話し終えた友人は、「なんか、やけにだるいな。霊障かもな」。
そう笑ってはいたが、顔色はあまり良くなかった。
その日はそこで解散し、それぞれ自宅へ帰ることにした。
呪われた友人
数日後、友人は目に見えて調子を崩し始めた。
倦怠感や頭痛、吐き気が襲い、夜になると眠れないようで「誰かに見られている気がする」とLINEしてくる。
「やっぱり、あそこに行ったのがまずかったんじゃないか?」
私たちは本気で怯えていた。
携帯が壊れたこと、小さな光を見たこと、泣き声を聞いたこと・・・結論からすると霊障。
最恐の心霊スポットに入った以上、何かを連れてきてしまったのではないかと考えるのも無理はない。
見舞いにいくと病室のベッドで、何度も同じことを口にした。
「あの病院だ。あそこに行ったせいだ」
私も否定できない。
心霊スポットに行った直後から体調を崩し、原因不明のまま悪化していく。
どう考えても、なにかの呪い以外の説明が思いつかない。
ある時、容態が急激に悪くなった。
集中治療室に移され、面会制限がかかり、友人は戻ってこなかった。
お通夜で親御さんから聞いた話では、原因を特定できない全身不全だったらしい。
結局、最恐の心霊スポットに行った友人が、原因不明のまま死んだという事実。
見えないモノに殺される
友人は死んだ・・・そうなると、次は自分の番ではないかという恐怖が迫ってきた。
最恐の心霊スポットとして知られる、廃病院に行ったのが原因だ。
私はあちこちの神社や寺を回ってお祓いを受けた。自称霊能力者にも相談した。
「幽霊に殺される未来」を信じて、日々を過ごしていた。
そんな折、その病院が解体されると聞いた。
詳しい事情は分からないが、長年放置されていた理由は、レントゲン室周辺の放射線量が高く、数値が落ち着くのを待っていたかららしい、という話だった。
正直に言えば、腑に落ちなかった。
放射線量がそんな短期間で下がるのだろうか、廃病院のレントゲン室でそこまでの問題が起きるのか?
だが、心霊とは無関係の廃墟探索サイトで、あの病院のレントゲン室でガイガーカウンターが反応した、という記事を見つけた。
友人が言っていた「小さな光の粒」、突然壊れたスマホ、不気味な声や体調不良。
それらは偶然でも、幽霊でもなく、放射線だった可能性はないのか?
亡くなった友人と私との間には、決定的な違いが一つある。
地下に降りたのは、友人だけ。
私は今のところ、何の症状も出ていない。
確証はない。断定もできない。
ただ、少なくとも幽霊の仕業だとは思えなくなった。
本当に恐ろしいのは、幽霊でも、呪いでもない。
放射線も幽霊も目に見えない。
だが、どちらも人を死に追いやることがある。
※画像はイメージです。


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