15世紀頃、南アメリカ大陸にて最盛期を迎えた「インカ帝国」。
安寧生贄のために生贄を捧げる習慣があったのでした。
インカと生贄
インカ帝国は宗教と政治が密接に関係しており、太陽信仰を重んじていた国家で、皇帝は「太陽の子」として神の化身となり政治を行う頂点としての存在。
その下にいる人々は、皇帝に仕える身分の「貴族」、神殿などで儀式を担当する「聖職者」、その他大半を占める「農民」といった3つ身分に分けられていたのです。
「太陽の国家」の大きな特徴の一つとして、国に降りかかる災いに関しては人間や動物を生贄に捧げ、太陽の神殿「コリカンチャ」にて儀式を行う風習がありました。
アンデスの山頂でミイラとして発見された、13歳の少女のミイラもこの儀式にて生贄として捧げられたとされているのです。
どのようにしてこのミイラが選ばれたのか
この13歳のミイラ「ドンセリャ」は、どのようにして生贄にされ、儀式に参加する事になったのでしょう?
前述の通り、宗教と根深い国家であるために、生贄の儀式は国の命運を左右する重要な役割があったとされます。
生贄に関しても重要な役割があったとされ、生前からどの人間を生贄にするか、現代でいう審査のようなものがあったのでしょう。
生贄になるのは、政治に影響を及ぼさない「農民」階級で健康的な幼い少女であることを条件に、候補の中から特別な意義も無くランダムに生贄として選出されたと推測しています。
なぜ女性なのかといえば、立場が弱く労働力として男性には劣るとみなされ、男性とされる神も多かったことから、生贄として神に「嫁ぐ」という意味合いも大きかったのでしょう。他の国の生贄をみても大多数は女性でありますので。
「ドンセリャ」が選出された本当の真意はわかりませんが、彼女が生贄に選ばれ、そしてその命を神に捧げる事になったのは事実であります。
どのようにして儀式が行われたのか
生贄に選ばれたドンセリャの待遇は悪くなかったようで、儀式が行われるまでの間は食べるものに困ることはなかったようです。
健康な身体を神に捧げるという意味合いも込められ、むしろ、庶民階級では食べることが出来ない、豪華で栄養があるものを食べさせられていた。
儀式が近くなるとアルコールや強力な中毒性を持つ、今で言う麻薬を摂取させていたというのです。
日本でも巫女が日本酒を飲み身体を清める風習があり、おそらくインカでもアルコールには神力が宿り、酒を飲むことで、神のご加護と恩恵を得られると考えらていたのでしょうか?
そこに麻薬を接種させて、生贄という大役のプレッシャー、儀式の苦痛や死への恐怖をも紛らわせたりする役割があったのでしょう。このような手順を踏んで最終的にドンセリャは、ヤク漬けのような状態でおぼろげな意識のまま、生贄として神に捧げられたのであった。
そして今
実際にインカ帝国が儀式による恩恵を受けられたかは定かではないが、800年余りの時を越えて私達の眼の前に現れた「ドンセリャ」。
その表情には苦痛はかんじられず、夢を見ながら眠っているような安らかな「寝顔」のようにすら感じる。
生贄になった彼女は悲劇だったのでしょうか?
ドンセリャはアルゼンチンのMAAM (サルタ高地考古学博物館)で見ることができます。
日本からアルゼンチンまでは飛行機で24時間ほどかかるが、800年に比べれば短いものです。
※画像はイメージです。
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