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ダムダム弾ってどんな弾丸?

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現在世界各国の軍隊で使用されている弾薬は、ハンドガン、サブマシンガン、PDW、アサルト・ライフル、ライト・ヘビー・マシンガンと言った区分を問わず、等しくフルメタル・ジャケットと呼ばれる形式である。

フルメタル・ジャケットは核となる鉛の周りを銅やニッケル鋼で覆うようにコーティングされた弾薬であり、概ね貫通力が高い傾向にあるが、こうした形式だけではなく先端が円錐状に窪んだホローポイント等も時折目にする。
ホローポイントはかつてであれば357マグナム弾や44マグナム弾など、主としてリボルバー用の強装弾として用いられていた事を思い浮かべる方も多いと思えるが、皆様はいかがであろうか。

そんなホローポイントの一種とも言えるものに「ダムダム弾」と呼ばれる弾薬があるが、その殺傷能力の高さから軍隊での使用が禁じられたと言う触れ込みが一人歩きし、実態は少し異なっている感もある。
そんなイメージ先行型の「ダムダム弾」について、その起こり、軍隊での使用禁止に至った背景を含めて、今回僅かながら歴史を振り返ってその実態に迫ってみたいと思う。

目次

「ダムダム弾」が開発された場所・目的・経緯

「ダムダム弾」は1986年に当時イギリスが植民地としていたインドで、カルカッタ近郊に設置されていたダムダム兵器工廠において、イギリス軍のネビル・スニード・バーティ・クレイの手によって開発された弾薬である。
ネビル・スニード・バーティ・クレイが開発した弾薬は、ソフトポイント弾頭を持つ.303ブリティッシュ弾MkIIスペシャルと命名され、当時採用されていたフルメタル・ジャケットよりも高い殺傷力を示した。

これは目標である敵兵に対してフルメタル・ジャケットが貫通しやすく、急所を撃ち抜かない限り致命傷を与える事が困難だった事に比して、弾着時に弾頭を体内で飛散する事を狙った生み出された結果であった。
この時点でも既に狩猟用としてはホローポイントは存在しており、ネビル・スニード・バーティ・クレイもこの強力なストッピング・パワーを軍用ライフルに応用する意図をもって.303ブリティッシュ弾MkIIスペシャルを開発したと思われる。

イギリス軍もこの.303ブリティッシュ弾MkIIスペシャルの高い抑止力を評価したが、当初この弾薬は弾頭底部も非コーティンだった為、中心の鉛以外の部分が銃身内に残り、次弾を発砲する際に最悪銃身が破裂する等のトラブルにも見舞われた。
その後イギリス軍では本国で.303ブリティッシュ弾をMkⅢ、MkⅣとアップ・デートし、最終的に弾頭底部にコーティングを施し、先端に円錐状の窪みを持たせたものをMkⅤとして採用、これらが所謂「ダムダム弾」だと呼称されて行った。

Liersch & Co., Gustav, Berlin, Public domain, via Wikimedia Commons

1899年のハーグ条約によって署名国では使用が禁じられた「ダムダム弾」

前述のようにイギリス軍では.303ブリティッシュ弾MkⅤとして採用されていた「ダムダム弾」だったが、当時世界最強の国家として君臨していた同国に対し、その勢いを削ごうと新興のドイツがこれを槍玉に挙げる。
その理由としてドイツは戦場において必要以上の苦痛を与える可能性が高い「ダムダム弾」を非人道的だと非難したが、これはあくまでイギリスを貶めたいドイツの政治的なプロパガンダではあったが功を奏した形だった。

1899年にイギリスやドイツ、フランスなどヨーロッパの主要国を始め、アメリカや日本など先ず24ケ国がハーグ陸戦条約に署名、これによりイギリス軍は.303ブリティッシュ弾MkⅤを実戦で用いる事は出来なくなり、訓練等で使用するに留まった。
イギリスがドイツの指摘にって折角開発した.303ブリティッシュ弾MkⅤを諦めたのは、当時の国際的な風潮に表立って逆らうのは得策ではないと判断した為とも目されるが、そもそも自身でも植民地以外での使用は想定していなかったとも言われる。

これは暗に有色人種との戦闘には使用しても、白人同士の戦闘には使用するつもりが当初からなかったと指摘される事もあるようだが、何れも想像・推定の域を出ない領域の問題だとは感じられる。
しかしこの後、.303ブリティッシュ弾はイギリス軍においてフルメタル・ジャケットとしてMkⅥ、MkⅦへとアップ・デートを重ねるが、弾頭部への工夫によってMkⅤに劣らぬ効果があったとされ、事実上は形骸化していたとも言えそうだ。

「ダムダム弾」は仮にハーグ条約の規制が無くとも、自然と軍での使用は淘汰された?

前述のように所謂「ダムダム弾」たるイギリス軍の.303ブリティッシュ弾MkⅤは、ドイツによって必要以上に苦痛を与える可能性が高い非人道的な弾薬だとして、ハーグ陸戦条約に署名した国々で規制を受けた。
これによって「ダムダム弾」の使用は全て国際的に非合法なものとされたのかと言えば必ずしもそうとは言いきれず、それはこのハーグ陸戦条約が主として国家間の相互の正規軍による戦闘の規定を定めたものであるからだ。

つまり正規軍同士の戦闘ではない、昨今で言うところの中東での対テロ戦争のようなゲリラ的な敵との戦いにおいてはその限りではないとの解釈も可能であり、また狩猟等の用途への使用は全くの対象外である。
しかし仮にハーグ陸戦条約が無くとも軍隊に置いての「ダムダム弾」使用は何れ淘汰されたと思われ、その根拠はこれも前述の.303ブリティッシュ弾MkIIスペシャルの時のトラブル、連続発砲に危険を伴う可能性があった為である。

1914年に勃発した第一次世界大戦においては、戦闘の中心的な銃器に機関銃が使用され、当然これは複数の弾丸を連続射撃してその強力なファイア・パワーを以て敵を制圧する兵器であったため、動作不良は最大の問題だった。
また同時に機関銃による攻撃はその1発あたりの破壊力が相対的に低下しようとも、それを上回る量の弾薬を発射する方が合理的で確実性も高く、軍隊における「ダムダム弾」の有用性は打ち消されたと考えられるのだ。
そのため遅かれ早かれ「ダムダム弾」を軍隊において主力小銃の弾薬とする意義はハーグ陸戦条約が無くとも、早晩に兵器としての合理性を欠いたものとなり、自発的に廃れていったのではないかと言うのが結論である。

一部分が誇張されて流布され、誤った解釈によって形成された「ダムダム弾」のイメージ

「ダムダム弾」はハーグ陸戦条約で国際的に軍隊での使用が禁じられた事、その元となったドイツによる非人道的な弾薬との指摘、弾薬自体の対象物に対する効果等が混ざり合い、非常に特殊で危険な弾薬のように尾ひれがついて語られて来た。

殊にそれが非人道的な必要以上に苦痛を与える可能性がある弾薬であるとする点から、世界的に同義上から禁止されるに至ったと言う解釈は本質的ではなく、その証拠としてもっと悲惨な例えば毒ガス等が第一次世界大戦では使用された。扱いが難しく一歩間違えれば自軍の兵士ににすら甚大な被害を与えかねない毒ガスのような兵器であっても、それを使用すると言う軍の決断が下されれば実戦投入された歴史を見れば、「ダムダム弾」だけが例外の筈がない。

そういえばベトナム戦争時にアメリカ軍がM-16を新たな正式小銃に採用した後、日本では同銃が銃床等にプラスチックが使用されている事から他のAR-7などと混同され、水に浮く仕様であるとの誤った説が流布された事もあった。
今にして思えば情報に乏しかった1970年台の日本の銃器情報は笑い話にしかならないと思う反面、逆にSNS等で容易に一個人が情報を発信出来る現在は、寧ろデマですらものすごい勢いで拡散される危うさも、あた否定できない。

※アイキャッチはイメージです。

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