老河口作戦 最後の騎馬襲撃戦

大戦末期、日本軍が行なった歴史上最後の騎馬襲撃戦とは

第二次世界大戦も終焉間近かの1945年3月。中国大陸で日本軍の騎兵連隊による敵飛行場襲撃・制圧作戦が行なわれた。それが老河口作戦である。

中国大陸では1944年からヒマラヤを越えてB29が進出、中国大陸の各飛行場から日本本土への空襲に参加するようになっていたが、その年の秋に行われた日本軍の大陸打通作戦によって、多くの飛行場が日本軍に占領され、1945年にはB29はサイパンに基地を移していった。

ところがP40やP51戦闘機とB25爆撃機を主力とするアメリカ軍航空部隊は中国大陸内でも益々強化され、日本の航空部隊にはそれを跳ね返す力は到底残っていなかった。

そこで再び考案されたのが、機動力のある騎兵連隊による敵飛行場占領作戦であった。

■シベリア出兵における大日本帝国陸軍騎兵連隊
[Public domain]
当時は機械化の遅れていた日本軍でさえ騎兵連隊のほとんどは捜索連隊と名前を変え車両編成で作戦することがほとんどであって、乗馬編成の部隊は中国大陸では第4騎兵旅団(第25・26騎兵連隊)のみだった。この作戦は、まさに19世紀の主力の騎兵部隊が20世紀の主力の航空部隊を封じ込めるために動員されるという、稀に見る珍しい作戦であり、この戦いは事実上世界史上最後の乗馬騎兵による襲撃作戦となったのだ。

作戦は3月22日に発動され、第4騎兵旅団は河南省の帰徳を出発、約300キロの距離をを4日で走破。戦車第3師団の火力の援護を受け途中の敵の拠点を次々と粉砕、26日には米軍戦闘機の有力な飛行場のある老河口に到着した。

ただし、老河口飛行場攻撃を察知した米軍機の攻撃が激しく、昼間はほとんど動けず夜間の強行機動を余儀なくされた。

また、騎兵部隊の進路確保に協力した戦車第3師団の方は、皮肉にも燃料不足と悪路に悩まされ、徐々に乗馬部隊よりも遅れを取って老河口飛行場の攻撃には一部しか間に合わないという事態になっている。

老河口飛行場への攻撃は3月27日の早朝開始された。

陸軍航空隊の一式隼戦闘機10機、99式軽爆6機が援護に駆けつけ、爆弾で滑走路に穴をあけ米軍戦闘機の発進を妨害し、在地の敵機に銃撃を加えて飛び去ると、騎兵連隊が突撃を開始した。この時の飛行場襲撃に参加したのは第25騎兵連隊の約1700名である。

■ 一式戦一型(キ43-I)
San Diego Air & Space Museum Archives [Public domain], via Wikimedia Commons
騎兵部隊は怒涛のように飛行場を走り回り、対空陣地の中国兵を蹴散らした。飛行場の守備はもっぱら対空装備だけで、地上軍に襲撃されることは想定していなかったと見られる。

騎兵部隊による飛行場襲撃のシーンを想像すると、居並ぶ地上の敵機を片っ端から焼き払うシーンを思い浮かべてしまうが、この時はどうも老河口飛行場にはあまり多くの敵機は残っていなかったようである。飛行場への襲撃を察知した米軍はすでに機材と人員の多くを後方の基地へ避難させていたのだろう。米軍パイロットを捕虜にしたという記録もない。

それでも第25騎兵連隊は独力で27日夜には完全に飛行場を制圧・占領し、大量の満タンのドラム缶と数十両のトラックを捕獲した。この襲撃作戦の目的はあくまで飛行場を占領し米軍に使わせないようにする事なので、所期の目的は達成されたといえる。

だが老河口の飛行場から数キロ離れた所には強大な城壁に囲まれた老河口城市があり、そこには数千人の中国軍が逃げ込んでいると思われた。単に飛行場を制圧しただけでは、城内の敵が再び奪還に出るのは必至であるため、後続の歩兵2個師団(車両編成の第110・115師団)と第3戦車師団が数日後には老河口城市を包囲後略する予定だった。

旧日本陸軍 [Public domain], via Wikimedia Commons
にもかかわらず、ここで速戦突破をいさぎよいものとする騎兵部隊の気風がアダとなり、飛行場を制圧した第25騎兵連隊は、今度は馬を下りて歩兵となり、堅固な城塞攻撃に向かい、大損害を被る事になってしまう。この時、同じ第4騎兵旅団のもう一つの連隊、騎兵第26連隊は、なぜかほとんど戦闘に参加せず、25連隊が老河口城市攻略のために大損害を出すまであまり動いていない。旅団としてはあくまで任務は飛行場制圧までだという認識があったのだろうか。

4月に入り、ようやく老河口城市は激戦の末に陥落、その後老河口飛行場は敵に奪還されることもなく4か月後にはそのまま終戦に至った。
当時はすでに硫黄島は陥落、沖縄戦が始まった時期であり、中国の奥地の飛行場ひとつを占領したところで、大勢には何も影響のない事ではあった。

しかしこの老河口作戦は、世界史上最後の大規模な騎馬襲撃戦となったのである。


Writing by ヒデさん

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