誰も知らない家族？

まだ携帯電話より家の固定電話が多かった当時、年に一回くらい、役所から居住者の確認をする電話があったのでした。
昨今は個人情報保護などで考えられませんが、役所の方が家族の名前を言って、続柄を答えて、居住者の確認をするというものだったのです。

えつこ様はおられますか？

僕が家の電話を取っても良い年頃になった時に、その電話に出た事があります。

電話の会話は、
「そちらに◯◯様は、住んでおられますか？」
「父です。」
「ありがとうございます。では、◯◯様はおられますか？
「母です。」
とこんな感じで、弟、妹まで、家族全員の名前を聞かれるのですが、最後に「そちらに、えつこ様はおられますか？」と聞かれました。

僕の知る限りでは親戚にもいないので、「うちには、いないです。」と答えると・・・。
「あれ？そうですか…わかりました！」と言って電話が切られます。

翌年、あの電話にまた出たのですが、同じように最後「そちらに、えつこ様はおられますか？」と聞かれました。
「いえ、いないです。」と答えると「お婆様とか住まわれてないですか？」と聞かれ、
「いえ、おばあちゃんは一緒に住んでないし、名前も違います。」と返答しました。
「あれ？おかしいなぁ…？わかりました！ありがとうございました！」と同じように電話を切られたのです。
その時は、去年も言われたなぁ・・・くらいに思っていたのですが・・・。

えつこさんって誰だよ！

そこから数ヶ月が経った頃、リビングのこたつでテレビを観終わり、風呂に入ろうと立ち上がったところ、同じこたつで寝ていた母を起こしてしまった。
「わりぃ、起こしちゃった？」と謝ると、母は「えつこさんは？」と聞いてきます。

「え？誰それ？」と問いかけると、「さっきまで一緒にいた、えつこさんよ！」とさも当たり前のように言い返してきたのでした。
いよいよ怖くなり「何言ってんの？！大丈夫？！えつこさんて誰だよ！」と怒鳴りつけます。
すると母は我に返り、「あれ？私、何言ってんだろ？」。

詳しく話しを聞けば、夢の中、コタツで向かい合わせに、「えつこさん」という人と会話をしていたが、突然いなくなったところで目が覚めたので、「えつこさん」を探していたそうなのです。
ただ、顔も声も、なにを話していたかも思い出せないらしい・・・。
その時、例の電話を思い出し母にその話しをすると、母親の身内に「えつこ」は居ないので、見当が付かないそうです。

それからしばらく経って

いつしか居住者の確認をする電話が廃止され、「えつこさん」の事をすっかり忘れていた時の事です。

なにげなく取った電話が、多分年配の女性と思われる方からで・・・。
「ああ、〇〇君（僕の名前）」と親しげに話しかけてきたので、とっさに「どちら様？」と聞くと、からかわれたかの口調で「もう！あたしよ、えつこよ！」と答えてきた。
僕はびっくりしてもぐもぐしていると「えつこさん」は、「今日、帰るの遅くなるから、◯◯ちゃん（母の名前）に伝えておいてね、お願いね」と言って電話が切れたのです。
ちなみに、母にこの事を話しても「えつこさん」の事自体すっかり忘れていて、なに気持ち悪い事いってんのと全く信じてもらえませんでした。

僕は怖くなって、市役所で調べてもらったのですが「えつこさん」は家族の中にはいません。ではなぜ「えつこさん」が家族にいるか確認したのかを問だ足しても当時の記録は残っていないらしいのです。
そして、それ以来「えつこさん」から電話がくる事はありませんでしたが、彼女は一体誰だったのでしょう？
皆さんの家族、1人増えてたりしませんか？

※画像はイメージです。