今日ではインターネットの普及により、以前とは比較にならないほど多くの情報をYouTubeなどの動画サイト等を中心にして気軽に視聴出来るようになり、軍事情報関連のコンテンツも多い。こうした動画サイトはもちろんの事、多数のウェブサイトでこうした情報を見ることが可能だが、所謂第5世代戦闘機と呼ばれている最新鋭の戦闘機に関する内容もよく見かける。
第5世代戦闘機とは軍事関係者が便宜上設けた分類で、アメリカ軍等が公式に認めた区分ではないが、それに該当する機体はロシアのSu-57、中国のJ-20、FC-31、アメリカのF-22、F-35と限られる。2021年時点で実用化されているのは僅かにこれら5機種しか存在しない第5世代戦闘機であるが、当然最初に実用化したアメリカのF-22ラプターとF-35ライトニングⅡが最も知名度が高い。
F-22ラプターはアメリカ空軍が保有するのみで他国には輸出されずに生産自体が終了しており、F-35ライトニングⅡは日本を含めアメリカの友好国に多数採用されていると言う正反対の機体でもある。いずれにせよ実際にはアメリカとその友好国にしかF-22ラプターとF-35ライトニングⅡは存在しないため、現実の戦闘で対峙する可能性はほとんど無いが、仕様・スペックから能力を比較して見た。
第5世代戦闘機の現状
そもそも第5世代戦闘機と一般に呼ばれている戦闘機の最大の特徴は、敵のレーダーに探知されにくい機体そのものの設計、レーダー波を吸収する塗装などステルス性能を有している点にある。このステルス性能に加えて音速を超える速度での巡航性能、つまりスーパークルーズによる巡航飛行が可能な機体である事や共同交戦能力が外せない必須の要件として挙げられる事が多い。
アメリカ以外で第5世代戦闘機を実用化しているのは、前述の通りロシアと中国で、ロシアのSu-57は2020年の運用開始時点では量産機は2機、2028年でも76機の製造に留まる規模だ。中国のJ-20は2017年に運用が開始され、2019年末時点で凡そ50機が製造されていると見られ、FC-31は2012年に試作機が初飛行したものの量産機は確認されておらず、一応輸出用とされている。
そうした状況下、初の第5世代戦闘機であるアメリカのF-22ラプターは、2005年から運用が開始されており、試作機8機を含めて総数で195機が生産されアメリカ空軍のみが保有している。続くF-35ライトニングⅡはアメリカと開発パートナー国として開発資金を拠出した国々及び日本のような友好国に販売され、2021年4月時点で600機以上、最終的には4,000機以上の生産が見込まれている。
アメリカのF-22ラプターとF-35ライトニングⅡは共に同国のロッキード・マーチン社が開発した機体であるが、その目的・用途と生産方式が大きく異なる機体であると言えるだろう。
F-22ラプターの特徴
F-22ラプターの諸元は、乗員1名、全長18.92m、全高5.08m、翼幅13.56m、翼面積78.04㎡、空虚重量19,700kg、最大離陸重量38,000kgと公表されている。機関部にはP&W製F119-PW-100 A/B付きの双発のターボファンエンジンを搭載し、最大速度マッハ2.42、航続距離約2,960kmmとされている。
アビオニクスとしてはノースロップ・グラマン社とレイセオン社が協同開発したAN/APG-77レーダーを機首部分に搭載しており、約250kmの探知距離を誇る。兵装はGE社製のM61A2 20mm機関砲を固定で装備し、胴体下部と側面の合計3ヶ所にウェポンベイを備え、ステルス性能を損なわない状態で用途に応じたミサイル・爆弾類を搭載できる。
具体的には空対空兵装として、中距離用にはサイルAIM-120C AMRAAMを6発若しくはAIM-120Aを4発、短距離用にはAIM-9L/M サイドワインダー2発、AIM-9X サイドワインダー2000を2発搭載可能だ。空対地兵装としては、対地誘導爆弾GBU-32 JDAMを2発若しくは、GBU-39 SDBを8発搭載するが可能となっている。
F-22ラプターは当初アメリカ空軍も700機以上の調達を計画していたが、ソ連崩壊による冷戦構造の終焉なども影響し、僅か195機の生産で終了したため、1機あたりは約368億円にもなった。元々第4世代戦闘機として実戦で撃墜されたことがないF-15イーグルを越える最強の制空戦闘機として計画されたが、それ故に要求性能も高く高コストな機体だった感は否めない。
F-35ライトニングⅡの特徴
F-35ライトニングⅡには、通常滑走路で運用する空軍仕様のA型と、短距離離陸・垂直着陸可能で強襲揚陸艦等向けのB型と、カタパルトを備えた航空母艦で運用するC型の3つの仕様が存在する。ここではF-22ラプターと運用条件を同一とするため、通常滑走路で運用する空軍仕様のA型の諸元を比較対象として記述したい。F-35ライトニングⅡA型は、乗員1名、全長15.67m、全高4.39m、翼幅10.67m、翼面積42.74㎡、空虚重量13,290kg、最大離陸重量31,751kgと公表されている。
機関部にはP&W製F135-PW-100の単発のターボファンエンジンを搭載し、最大速度マッハ1.6、航続距離約2,200kmとされている。
アビオニクスとしてはノースロップ・グラマン社とレイセオン社が協同開発したAN/APG-81レーダーを機首部分に搭載しており、約167kmの探知距離を誇る。
兵装はGE社製のGAU-22/A25mmガトリング砲を固定で装備し、胴体下部2ヶ所にウェポンベイを備え、ステルス性能を損なわない状態で用途応じたミサイル・爆弾類を搭載できる。具体的には空対空兵装として、中距離用にはサイルAIM-120C AMRAAM等を4発、短距離用にはAIM-9X サイドワインダー等を搭載可能だが、日本の99式空対空誘導弾の運用は困難とされている。対地兵装としては、 JDAM2発と各種の中距離空対空ミサイル2発を搭載可能であり、更に空対艦兵装としてウェポンベイ内に収まるノルウェー製のJSMなども2発搭載する事が出来る。
ステルス性能を考慮しない場合、主翼等の下部のハードポイントに各種のミサイルを懸架する通称ビースト・モードでの運用も可能で、その場合はウェポンベイと合計で約10トンの兵装量となる。ビーストモードは別として空対空、空対艦、空対地の様々な兵装をウェポンベイに収容出来る事から、F-35ライトニングⅡは多目的に対応するマルチロール機と見るのが一般的な解釈だ。
F-35ライトニングⅡA型は、2021年現在現在1機凡そ100億円とされているが、日本が導入するA型・B型合計147機の場合平均単価は1機126億円程度となり、付帯費用等も含まれる為大凡の目安と考えた方が良い。
F-22ラプターとF-35ライトニングⅡが対戦した場合の想定
前述の様にF-22ラプターのコンセプトは、敵戦闘機の排除を行い完全にその空域の制空権を握る為の史上最強の制空戦闘機であり、高機動性と高いステルス性で相手を先に撃墜するものだ。それに対してF-35ライトニングⅡは、空対空、空対艦、空対地の様々な任務に対応する汎用性の高さが秀でており、実際に両者が空中戦を演じた場合の結果の想定は中々に困難だ。
多分今やそのような状況には至らないと思われるが、万が一有視界戦闘が発生したとするならば、双発の強力なエンジンで機動性の高いF-22ラプターに分があるのではないだろうか。逆に現在でも発生する確率の高い離れた距離での戦闘になれば、後発のF-35ライトニングⅡには赤外線追尾機能も付与されているため、レーダー自体の探知距離は短くとも正確に捕捉可能と思われる。
加えてウェポンベイ内の兵装搭載量でも上回る事からF-35ライトニングⅡの優位性が発揮され、F-22ラプターを撃墜できる可能性は高くなると考えられる。F-35ライトニングⅡ二は今後も電子戦能力のアップ・デートも随時施されると思われるので、その優位性は上昇する事はあっても下降する事は無いとここでは予想したい。
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