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レジスタンスのために作られた「リベレーター(FP-45)」は世界最安の拳銃?

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拳銃・ハンドガンと言えば、法執行機関等に代表される警察においては主力武装、特殊部隊や軍隊においては護身用の武装として2020年代でも数多く使用されている銃火器である。
アメリカにおいては陸軍が1911年に採用し、以後70余年の長きに渡って正式拳銃の座にあったコルトM1911A1はつとに有名な拳銃であり、今でも多くのカスタムが世に出されている。

アメリカ軍でもコルトM1911A1の後継のベレッタM9からは9mmパラベラム弾を使用する事となったが、かつての45ACP弾のストッピング・パワーは今でも根強い需要がある。
日本語では「解放者」と訳される、名称だけは勇ましい「リベレーター」を通称とするその拳銃は正式名は「FP-45」であり、そうした45ACP弾を使用する中でも変わり種のひとつだろう。

目次

リベレーター(FP-45)とは?

「リベレーター(FP-45)」は第二次世界大戦中の1943年3月、ドイツの占領下に置かれていたポーランドの軍人が、抵抗運動を行うレジスタンスに武器を供給する目的で着想した。
そのコンセプトは安価で大量に且つ短期間で製造できる銃火器を目指したもので、アメリカ軍にその構想が採用され自動車製造大手で当時は多くの軍需品を手掛けていたGM社に依頼された。

GM社の技術者らはアメリカ軍正式採用の45ACP弾を使用し、単発で極限まで部品点数を減少させた「リベレーター(FP-45)」の設計を僅か2ヶ月で終えて実際の製造に着手した。
そして1943年9月には「リベレーター(FP-45)」を何と100万丁、製造に要したコストは1丁あたり2.1ドルと言う、驚異的な数量の生産と低コストをあっさりと実現してしまう。

British Government, Public domain, ウィキメディア・コモンズ経由

リベレーター(FP-45)の仕様

「リベレーター(FP-45)」は徹底した製造コスト削減と短期間での大量生産が求められたため、銃身にはライフリングすら施されておらず、従って命中精度云々を論ずる以前の代物である。
一説には有効射程距離は良いところ3メートル程とも言われているが、Youtube等のコンテンツで「リベレーター(FP-45)」を実射している映像を見ても7ヤードの距離でほとんど当らない。

それでいて「リベレーター(FP-45)」は45ACP弾と言う大口径の拳銃弾を使用する事もあり、両手で保持していてもかなりの反動で銃が暴れる様子が確認出来る。
「リベレーター(FP-45)」は全長141mm、銃身長100mm、重量450グラムの本体に45ACP弾を単発で装填して射撃を行う拳銃だが、この450グラムという軽すぎる本体重量には弾薬が強力過ぎるのだろう。

同銃は単発式ではあるものの、グリップの中には予備の45ACP弾を5発収納することが可能であり、一応その本体に最大で6発の弾薬を収める事が可能な設計とはなっている。
しかし当然安全装置などの機構は持ち合わせていないため、薬室に弾薬を装填したまま携行するのは、事実上行えないというのが実態だ。

「リベレーター(FP-45)」は発射後には薬室内に残された空薬莢を、銃口前部から棒を差し込んで排出する必要があり、この点からも連続して発砲することはかなり困難である。
因みにこの銃には12コマでその使用方法を解説したイラストが付属されていたが、このイラストは何とあのウォルト・ディズニーが手掛けたものとなっている。

リベレーター(FP-45)の評価と実態

「リベレーター(FP-45)」は本体、10発の45ACP弾、解説イラスト、木製の薬莢用の排出棒を1セットとしてGM社からは出荷されたが、100万丁中、実際に戦場に送られたのは僅か25,000丁程だったと言う。
本来ナチス・ドイツの占領地域のレジスタンスに向けて空中から投下して供与する事が想定されていたが、現場の軍司令官達にはその有用性を認められず、実際使用された記録もほとんど無い。

これは25,000丁程しか本来の用途に投入されなかった為と言うより、やはり圧倒的に武器として有効に使用できる状況が無かった事が原因であり、武器としてのコンセプト倒れの好例だろう。
またヨーロッパ戦線以外にも太平洋戦線にも一部が送られたと言うが、こちらも実戦で成果を挙げることも無く、アメリカ軍兵士らもそれがGM社製の武器であると知る者はほとんどいなかった。

単発拳銃「ディアガン」
PhantomassCC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

大半の「リベレーター(FP-45)」は、使い途も無いため廃棄されたり、他の物資に再利用するためにスクラップとして処分されることなり、溶かされて歴史から消えていった。
ただ後年のベトナム戦争の際にも、アメリカのCIAによって同様のコンセプトの銃・「ディアガン」が製造され、こちらはアルミニュウム製の9mmパラベラム弾使用の単発拳銃だった。
しかしこの「ディアガン」もやはり本家の「リベレーター(FP-45)」と同じ運命を辿り、ほとんど実戦で使用されることもなく5,000~6,000丁が生産されただけで姿を消している。

eyecatch source:British Government, Public domain, ウィキメディア・コモンズ経由

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