「絶景かな!絶景かな!」の名台詞で名を馳せた、日本が誇る伝説の大泥棒「石川五右衛門」…江戸の昔から愛された破天荒なキャラクターが舞台をテレビゲームの世界に変えて、装いも新たに登場した作品が「がんばれゴエモン」シリーズです。
高い技術力に裏打ちされた豊かな表現力が作り上げるアヴァンギャルドでパンキッシュな「お江戸」の世界を軽快に駆け抜けて行く様は、過去の名キャラクターを再現しながら新しい「かぶき」を印象付けたものでした。
今回はファミコン時代にあってアクションゲームというジャンルに様々な要素を盛り込む事で作品性を強く印象付けたシリーズにあって、新たな処理能力と大容量を収める事で一挙に世界観を拡げ「がんばれゴエモンシリーズ」を強く印象付ける事となったスーパーファミコン時代3作品を紹介致します。
がんばれゴエモン ゆき姫救出絵巻
スーパーファミコン進出第1弾にして圧倒的完成度で「がんばれゴエモン」ワールドを打ち立てたと言えるその「奥行き」に驚愕する!
スーパーファミコンのリリースより時間を置かない1991年に登場したのが、スーパーファミコン時代の第1作となる「がんばれゴエモン ゆき姫救出絵巻」です。
ファミコン時代において既に完成していたアクションゲームとしての基本的な骨子…奥行きのある街中を歩き回り、情報収集や探索の助けとなるアイテムを購入する探索パートと、最奥に待ち受ける強敵を倒すべく縦横に張り巡らされた罠を踏破するアクションパートに分割された章立てをクリアしていく手順を踏襲しつつ、ハード面の強化によって一挙に広がった表現の幅とステージ容量を活かした正統進化形と言える作品です。
シンプルな操作感と複数のパワーアップ概念
そのゲーム性において白眉と言えるのはシンプルな操作感の中に複数のパワーアップ概念を組み込む事で難易度を「ゲームの進行に沿って」調整出来るようにした部分です。
これは「武器レベル」「お金」が敵を倒して手に入れるアイテムとし、手に入れた「お金」でアイテムを「購入」する事で行動範囲を拡げて更に多数のアイテムやお金を手に入れる事が出来るようになったり、強力なサブ武器として銭形平次よろしく(本作の道中でちょっとした強敵として出現します!)「お金(小判)」を投げつけたり、場合によっては難関ステージをスキップする「裏道」のような要素を探し出せるようになるといった工夫が随所に張り巡らされていました。
こうした「隠しフィーチャー」…「裏技」や「隠しコース」と呼ばれる要素を見つけ出すのも大きな楽しみとして存在しており、中には攻略とまるで関係の無い、然りながら驚く程の作り込みが為されたミニゲームや、子供には見せられない(?!)お色気要素の存在もあったものでした。
世界を形作る「演出」
こうしたゲームそのものとは大きく関わらない要素にあって、世界を形作る「演出」として見逃せなかったのが「日本全国を渡り歩く」という要素です。
旅立ちは「江戸」の街、長屋が居並び大小の商店が軒を連ねるような街並みを後にして、四国を駆け抜け淡路島から近畿は奈良、京都を駆け抜け伊賀の里から吹き飛ば(?!)され、島根は出雲で道を示され一路南国沖縄(琉球)へ…と、「土佐」「大和」といった旧国名で示される案内を横目に、行く手を阻むちょっと不気味でユーモラスな敵キャラや体力回復アイテムにご当地の名物や妖怪が姿を見せて、雑学的な興味も刺激される味な作り込みが為されていました。
かくも盛り沢山の要素をスーパーファミコン初期のわずか数百キロバイト…現在なら4G回線でも1秒掛からず送信出来てしまう程の容量に詰め込んで見せたという事には改めて驚きを隠せないものです。
がんばれゴエモン2 奇天烈将軍マッギネス
圧倒的完成度をそのままに、正統進化で更なる驚きを見せた、見所楽しみ満載の存在感は正しく伝説級!
「がんばれゴエモン」という作品性を完成させた前作からおよそ2年を隔てた1993年、更なる新要素を引っ提げつつスーパーファミコンという環境…コンピューターとしてのハード性能はもとより、操作性等のプレイ感覚も含めた細かな部分まで磨き上げた正統進化にして最高傑作と言って過言ではない作品が「がんばれゴエモン2 奇天烈将軍マッギネス」です。
選べるキャラクターと二人プレイ
前作において完成されたハードコアなアクション性を元に、キャラクターを前作からの主人公コンビである「ゴエモン」「エビス丸」の2人に加え、からくり忍者「サスケ」のそれぞれ操作感覚が違う3人から選択出来るようになりました。二人プレイの場合は同キャラ選択が出来ない為に、大体の場合ここで使いやすく格好いいサスケを取り合い、使いにくいお笑いキャラのエビス丸を押し付け合う展開となったものでした…。
機動力やジャンプ力、武器性能がそれぞれにかなり異なる為、キャラクター選択によってステージ難易度が変わるだけでなく、敵の撃破演出なども変わってくるので実際の所「楽しみが3倍」となっている事にプレイを重ねて気が付くようになっていたのです。
アクション性もバリエーションが増大し、新要素として幾つかのステージに配置された敵の操る乗り物を奪って攻略の助けとする要素や、前作から踏襲したおんぶアクション…2P同時プレイの要素として、地面に伏せたプレイヤーの上へ飛び乗る事でジャンプアクションを下のプレイヤーが、攻撃アクションを上のプレイヤーが担うといった分業が可能になる事に加え、おんぶの組み合わせによって計6種類の特殊サブ武器が使えるようになる等、細かな中にも多くの楽しめる要素が詰め込まれたものでした。
度肝を抜かれた新要素が巨大ロボ
そして何より、本作で度肝を抜かれた新要素が巨大ロボ…作中の開発者であるからくりじいさん曰く「べりーごっついからくりめか」である「ゴエモン・インパクト」を操る高速ステージと決戦バトルです。
その名はもちろん主人公であるゴエモンその人を写した…というのが悪い冗談としか思えない濁りきった瞳で何処を向いているのかも定かで無い虚ろな眼差しに、仏頂面の方がまだマシなだらしないアルカイックスマイルを浮かべた不細工な下ぶくれ面という恐るべき鉄面皮。
圧倒的に悪い燃費を補うべく敵の前線基地を踏み潰しては燃料を奪い取って猛スピードで敵の前線指揮官を追撃する様はどちらが悪役か分からなくなる程のスリルと爽快感であり、うっかり段差につまづいたり穴に落ちては簡単に爆発四散するポンコツぶりも容赦無くプレイヤーの笑いを誘う恐るべき完成度でした。
圧倒的戦力差を見せ付けながら自らのポンコツぶりに足を引っ張られつつ戦場を蹂躙した後に待ち受けるのが、章ボスとなる敵巨大ロボです。
コクピット視点で大写しになる相手を迎え撃つという演出が、スーパーロボットを実際に操縦しているかのような没入感を与えるものとして、今思い返してもシンプルな中に驚きが詰め込まれた要素として鮮烈に印象付けられています。
容量の都合という所か、全ステージを通じて3戦しか無い事に物足りなさを覚えてしまう程に楽しい、スーパーファミコン史上においても最もエキサイティングな仕掛けの一つであったと言えるでしょう。
日本全国駆け巡り!演出の強化
前作から踏襲された「日本列島を渡り歩く」という演出も更に強化され、南は沖縄から来たは北海道まで、日本文化を愛好するあまり日本を支配しようと思い立ってしまった「奇天烈将軍マッギネス」が仕掛けるトンデモ日本文化の仕掛けられた防衛線を突破してひた走ります。
素っ頓狂ながら本気でアブない戦いを大いに盛り上げるのが、ゲームミュージックというジャンルを作り上げた最高峰の音楽集団「コナミ矩形波倶楽部」に属する面々が送り出したポップでパンクなBGMの数々です。
本作を語る上で絶対に外せない一曲が各章に配置された「お城」ステージ…ボスが待ち受ける難所において流れる曲です。
ディストーションの掛かった重いベースラインからファンファーレのように立ち上がる金管の調べにぶつかり唸りを上げる尺八と三味線のラッシュ…スーパーファミコンの音源とは思えない疾走感溢れるサウンドは、スーパーファミコンというハードに限らず、ゲーム史上においても有数の輝きを放つ名曲であると信じて疑いません。
その存在は今なお記憶の中で燦然と輝く名作となっています。
がんばれゴエモン3 獅子十六兵衛のからくり卍固め
伝説の重みも何のその!要素満載のプレイアビリティを更に積み増し進化の系譜に新たな存在感を刻みつけた!
圧倒的完成度を更なる正統進化によってユーザーの度肝を抜いた第2作より1年足らずとなる1994年、前作のスパンを考えれば畳み掛けるようなリリースとなったのが「がんばれゴエモン3 獅子十六兵衛のからくり卍固め」でした。
この時期になって来るとスーパーファミコンの隆盛から様々なゲームが誕生した事、ユーザーの年齢層変化や文化嗜好の変遷に加え、次世代機を睨んだゲームハード開発競争を予感させる時期となっていました。
箱庭型構造の導入
そんな中にあっての第3作は、過去2作からの基本的な要素となる「探索」と「アクション」の要素を引き継ぎながら、章立ての枠組みを事実上撤廃した、オープンワールドの前身とも言える箱庭型の構造が導入されました。
進行の制御にはアドベンチャー型の筋立てとして「キーアイテム」と会話等による「フラグ制御」が用いられ、物語の進行に応じて行動範囲が広がっていくシンプルながら変化が楽しい仕組みとなっていました。
その為、過去2作と比較して会話劇的な要素が強くなり、キャラ立ちの部分が一気に進展した作品となっています。
一方で過去作から作り上げた強固な骨組みを元に「未来の世界へ飛ぶ」というサイバーパンクな世界観へ踏み込んで行く新境地にも対応出来る懐の深さを見せ付けております。現在と未来という繋がりを経て物語へ影響を与えていく作り込みは、シンプルなアクションゲームとしての作り込みだけではないロールプレイング的な広がりにも対応していける幅広い強さを打ち出したと言えるでしょう。
もちろん自慢のアクション部分についても一切妥協は無く、アドベンチャータッチの「工夫を凝らして進む」感覚を見事に取り入れた「キャラチェンジ」のシステムを採用する事で方々に仕掛けられた多彩な罠を突破していくのが本作における見所となっています。
新キャラの導入とキーアイテム
前作からの3人に加え、本作では遂にファン待望(!)の「くノ一ヤエちゃん」が新たなプレイアブルキャラクターとして追加され、それぞれの特技を活かしたアクションで以て複雑怪奇な仕掛けが施されたステージを文字通り「縦横無尽」に駆け抜けて行きます。
前作では敵から奪った乗り物であったものが、今作では一種のキーアイテムとなる「うぉーかー」に変更され、重量を活かした体当たりや高速ダッシュ、更に道中で追加装備を手に入れる事で火炎放射と冷凍銃の機能を追加する事で強力な攻撃を繰り出すだけでなく、新たな道を切り開いていくものとなりました。
道中に仕掛けられた転送装置と合せて何処で乗り捨て、再び回収するかを検討していくパズル的なギミックにも一役買うシステムとして活躍しました。
正にアトラクション感!満載!!
そして忘れてはいけない「ゴエモン・インパクト」のド迫力バトルも健在です。
更なるパワーアップを経た本作ではよりスーパーロボット感を強化したテーマ曲を背景に、登場(搭乗)シーンではプレイヤーの操作に合せて奇怪なダンスを踊れるように…という小技はさておき。
侵攻パートでは燃費を節約する為か(とは言いつつ相変わらず敵から燃料を補充します)高速での蹂躙ではなく、ゆっくりと重々しい侵攻を行い、敵戦力よりも数倍以上巨大な腕を振り回しながら敵防衛陣地を容赦無く殲滅して行きます。その重量感と嗜虐感溢れる巨大ロボぶりは前作を上回る威圧感…実際どっちが悪役なのかとちょっと悩みたくなるかもしれません。
そんなプレイヤーの小さな悩みを他所に、油断すればあっさり撃退されるポンコツぶりも健在なので油断せずに敵陣を突破すると、前作同様にコックピット視点で戦う決戦バトルが幕を開けます。
基本的な動作に大きな変更は無いものの、本作において目玉となるのは一挙に増加した必殺技の数々です。
追加された「パンチゲージ」と「小判ゲージ」を満タンにして、特定のコマンドを入力すると「百烈パンチ」や「んが砲(口からレーザー光線)」等の強力でド派手な技が発動し、優位な展開を作り出せるのは誰もが一度は夢見た巨大ロボ戦闘のあるべき姿と言えるでしょう。
更には前作から踏襲した必殺兵器「キセルボム」にはピンチの時にのみ発動出来る超必殺技「キセルボムラッシュ」が搭載されており、正しく一発逆転のロマンを感じる要素満載の熱いバトルが楽しめます。
正に「アトラクション感」満載となった本作、謎のタイトル「からくり卍固め」が回収されるまできっちり楽しめる丁寧で魅力たっぷりの作り込みが光る名作です。
黄金期!スーパーファミコン時代の3作
今回は「がんばれゴエモン」シリーズとされる多数の作品から、その方向性を完成させたと言える「黄金期」としてスーパーファミコン時代、第1作から3作までを軸として紹介しました。
このシリーズは成立期となるファミコン時代やスピンオフ的位置づけとなるゲームボーイタイトル、スーパーファミコン時代の最後を飾った「がんばれゴエモンきらきら道中~ボクがダンサーになった理由~」以降ニンテンドー64やプレイステーション等にも幅広く展開したタイトルとなっています。
今回紹介した3作品について、現在の所「ゆき姫救出絵巻」はスーパーファミコンミニに収録されている他「奇天烈将軍マッギネス」と「獅子十六兵衛のからくり卍固め」はNEWニンテンドー3DSの配信が行われています。
いずれもややプレイの障壁が高いと言える所であり今後Switchでの配信などが待たれる所ではありますが、環境が許せば是非遊んで頂きたい名作揃いのシリーズです。
がんばれゴエモン (C) Konami
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