「巨神」。文字通り巨大な神。そう聞いて皆さんはどんな存在を思い浮かべるだろうか。今回ご紹介する漫画『巨神姫戦記』(著 : きしだしき/ 新潮社)は、文字通り巨大な神が主人公のスチームパンクファンタジーだ。とんがった設定の中にどこか懐かしさを感じるこちらの作品。今回はその魅力に迫ってみよう。
大きいことはいいことだ!神も敵も超弩級!
『巨神姫戦記』はタイトル通り、巨神ーー巨大な神様が主人公のファンタジーだ。と言ってもなんのことかわからないので、もう少し詳しく見ていこう。まずはあらすじから。
時は「神代」。未だ神と人とが共存していた時代。この日本神話風の世界で、か弱い人間たちは自然と寄り添いながら細々と暮らしていた。そんな人間たちを脅かす存在が魔獣である。村を襲い、人を食らう魔獣はまさに人類の天敵。そんな魔獣に対抗できる存在。それがそれぞれの村で祀られている「神」である。
これが、大まかなあらすじ。こう書くと、名作ゲーム『俺の屍を越えてゆけ』に代表される和風ファンタジーの王道のように見えるかもしれない。それは確かにそうなのだが、本作には唯一無二の特徴がある。神も魔獣も「デカい」のだ。そう、本作で人類の天敵である魔獣、そして主人公である神、共にデカい。設定などが明かされていないので、正確な大きさはわからないが、神と対峙した時の人間がオモチャの人形のように描かれているので、おそらく数メートルはあるだろう。
物理的に「デカい神様」が同じくデカい魔獣と闘う。こうなると和製ファンタジーであるとともに、特撮怪獣ものや巨大ロボットもののテイストを帯びてくる。これが『巨神姫戦記』の唯一無二の持ち味。和製ファンタジーと特撮もの、人気の二大ジャンルの合体。『巨神姫戦記』はそんなありそうでなかったテイストの漫画と言えそうだ。
主人公はデッカイ神様!人間は何してる?もうひとりの主役
巨大な神がこれまた巨大な魔獣と闘う。和製ファンタジーと特撮怪獣ものを合体させた漫画『巨神姫戦記』。主役はもちろん巨大な神なのだが、彼らは人間を守るために存在しており、人間サイドのメインキャラももちろん登場する。魔獣に対抗できるのは巨大な神というこの世界だが、人間たちはただ神に守られているだけではない。
人間たちは巫(ムラ)と呼ばれる母艦(ビジュアルはハニワっぽいが)で生活し、神の加護を受けるとともに巨神のサポートを担っているのだ。主人公の少年もまたそんな巨神のサポートを担う人間サイドのキャラクターのひとりだ。
主人公の役目は主に巨神専用の武器を作ること。いかに巨大な身体を持つ超常的な存在とはいえ、同じく巨大な力を持つ魔獣とはそのままでは戦えない。そこで、神専用の武器が登場するというわけ。だが、ただでさえ巨大な神をサポートするのは容易ではない。武器は神代を舞台にした和製ファンタジーなだけあって、昔ながらの刀鍛冶で製作するのだが、何せそのサイズは巨大。なんと作業には専用のアーマー(見た目は土偶っぽいが)を用いるのだ。
主人公は幼い頃神に救われたことをきっかけに、刀鍛冶を学び神を支える決意をする・・・というのが、本作を人間サイドから見たメインストーリー。ここから主人公はある事件に巻き込まれ、相棒となる炎の神と出会うのだが・・・そのあたりは実際に本編で確かめてほしい。
ファンタジー?スチームパンク?特撮?ヘンテコファンタジーの向かう先
さて、ここまで『巨神姫戦記』について見てきたが、本作の一番の見どころであるとともに、一番の壁になるであろうポイント。それはやはり本作の世界観だろう。作中では「神代」と言われているが、人間たちは巫(ムラ)と呼ばれる母艦で生活し、神をサポートするための巨大な機械やアーマーも登場する。
「神代」のイメージからすると完全にオーパーツなこれらのアイテム。神だの魔獣だのという設定とは少しミスマッチに感じるが、どうだろうか。他の漫画とおなじく、この世界はそういう世界なのだ!と言われれば「そう」なのだが、本作はやや説明があっさりしているため、戸惑う人も多そうだ。
ただ、独特の世界観は本作の最大の持ち味。慣れないからと言って、切ってしまうには惜しい作品と言えるだろう。始まったばかりでまだまだどこに転がるかわからない作品だが、ゆっくり先行きを見守りたいストーリーだ。
『巨神姫戦記』は、これまでになかった世界観と設定の漫画作品だ。まだまだ不安な要素もあるが、その「どうなるかわからなさ」を見守れるのも今だけの特権だ。今から読み始めて損はない。気になった人はチャレンジしてみてはどうだろうか。
(C) きしだしき 新潮社
思った事を何でも!ネガティブOK!