喧嘩番長×変身ヒーロー=ハードSF?宇宙人から物理学までぶん殴る「破壊魔定光」をご紹介!

男一匹はぐれ道、特攻(ブッコミ)かます喧嘩道、とってとられてやさぐれて、タイマン張るのは…宇宙人?!
1990年代後半から2000年代初頭にかけて、少年~青年誌を彩った暴走族・ヤンキー物の王道を行くような導入から、一転「日常」を乗っ取るように異様な風体のバケモノと怪人が破壊と殺戮の嵐吹き荒ぶ「戦いの日常」へ青少年をご招待する、重火器ステゴロビームにポン刀、変身殺法から宇宙怪獣、SF超技術まであらゆる角度からオトコノコ心をくすぐりまくる全開ごった煮ハードコア・バトルアクション(ポロリもあるよ!)な一作です。

「破壊魔定光」は、一見乱雑な全部乗せメニューにも見える盛り沢山の物語を緻密な構成によってまとめ上げ、見易くも丁寧でこだわりを感じさせる作り込まれた作画によって、拳圧剣筋熱気に爆風といった圧力まで感じさせる迫力は漫画作品数あれど、引けを取らない一つの境地を見せ付けるハイクオリティな作品です。

こだわりは”足の裏”にまで!

緻密なデザイニングで形作られる至高の”ごった煮ハイスピードバトル大全”をとくとご覧じろ!

無限に拡がる大宇宙、地球人類が与り知らぬ高度な知性体の存在と、その営みの中で何やら大変な問題が発生した…そんな壮大な物語の幕開けに続くのは、厳めしく仰々しい殺気全開の漢字が居並ぶゴツい長ランを背負った後ろ姿は正に古風な不良を地で行くケンカ青年、椿定光(つばき・さだみつ)の荒々しくも微笑ましいやり取りが物語の始まりを告げます。
のっけからこの途方も無い落差が対照的に描き出され、ここから始まる混沌とした物語の予感はすぐさま裏切られる事無く、宇宙から飛来する脅威との「日常を削り落とす」熾烈な戦いが幕を開ける事になっていきます。

父親仕込みの武術の才に、ハードなケンカで鍛え上げたケンカ闘法、そして宇宙から来たヘルメット型のニクい相棒「ポンコツ(随行体)」のサポートを受けて、その姿形まで殺戮と破壊へ特化させた凶悪犯罪者群・総称「流刑体」を相手取る戦いは正に御意見無用。
クロスレンジで殴る蹴るは当たり前、飛び交う重火器剣戟、果てはプラズマ、レーザー、巨大な敵の質量攻撃、触手に噛付き何でもござれのハードコアバトルが、重量感とスピード感に溢れる緻密な描写によって、見応えたっぷりに描き出されていきます。

格闘描写を軸として描かれる身体動作の数々・・・腰の入った重量感のある体重移動から繰り出される一撃や、重火器を反動に負けずブチ込む姿は堂に入ったもの。
特に「足の裏」…軍用ブーツや地下足袋、或いは変身スーツ等、多種多様な姿をかき分ける中で、鋭く伸ばされる蹴足の先や、全体重を乗せた踏みつけ等のシーンで重力と衝撃を感じさせる描き込みには、作者である「中平正彦」氏のこだわりを感じさせる描写です。

なお、本作にはまるで昭和期に子供を虜にした某巨大ヒーローや変身ヒーローの読本である「怪物大百科」の体裁をもじった「流刑体百科」がおまけのように付録され、その中には「足跡図」として拓本のようにして設定が載せられているという「足の裏」へのこだわり?を思わせる、中平氏の熱い想いが細部にまで行き渡った作品に仕上がっています。

純情野郎とカタブツオトメは特異点で恋をする!?

LOVEが物理学を木刀でたたっ切る、甘辛ハードにサイエンスな風情がクセになる味わいを醸し出す!

ステゴロ、爆発、ポン刀、触手、ミサイル、レーザー、関節技に超能力、超技術ケンカ道具…これでもかと言わんばかりのラインナップを揃え、画面狭しと暴れまくる御意見無用無差別級ケンカ大全を直感的に訴えかけるハードコアなバトルシーンを描き上げる一方、血で血を洗う苛烈な戦闘が「日常」を削り取り、蝕んでいく内に何が異常で何が通常なのかといった心理的・人間的問い掛けを繊細に描き出して行きます。

本作の醍醐味は、このようなナイーブな描写が単なる演出、キャラクター性の表現に留まらず、深い学術的理解と考察に立脚した理論物理学を軸とした宇宙観を対比させる事で、眼前に降り掛かる災厄へ立ち向かうアクションエンターテインメント作品に、深い宇宙論的洞察を与えるハードSFのエッセンスを巧みに織り込んで見せている部分です。
重力素子…人工的に局所重力を操作する、本作において「ポンコツ(随行体)」陣営の超科学を支える微細機器(ナノデバイス)をして手を伸ばす事が可能になった並行宇宙。

遙かなる夢に迎え入れられたヒトがその領域を垣間見た時、ヒトはまだヒトのままでいられるのか…そんな疑問を投げ掛けるようにして、並行宇宙論の可視化モデルやそこで起きる事が仮定される現象の数々を、恋心とケンカ殺法という「肌感覚」で描き上げる巧みさは、ハードSFに踏み込む作品数あれど、今なお十分に存在感を放つ高い完成度を誇るものと言えます。

理論の積み上げを前提として考える楽しみが取り沙汰される一方で、前提となる理論や仮説そのものがハードルとなって敬遠される事も多いSFというジャンルにあって、確かな理解に裏打ちされた視覚的表現を取り込んだ本作は、他作品に興味を持って進む際の「考え方の基準」ともなり得る「SF入門編」と言っても過言ではないかもしれません。
但し「破壊魔定光を読んだから(SF/物理のアレコレは)大丈夫!」という事ではありませんので悪しからず。

連載中にオリジナルアニメ化

本作はその高いアクション性やデザイン性が評価されたのか、連載中にオリジナルアニメ化されたという経歴を持ちます。
本編連載がその後も長く続いたという事でストーリー的に繋がりは無いアニメ版ですが、実はこのアニメ版のOP曲が今や日本でもかなり知名度の高いであろう楽曲となっています。

日本テレビ系列の人気番組「世界の果てまでイッテQ!」の人気を牽引する「珍獣ハンター・イモト」こと、イモトアヤコ女史がその圧倒的存在感を見せ付けてはお茶の間を賑わせたこのコーナーで流れる勇ましいテーマ曲こそ、このOP曲のオーケストラヴァージョンなのです。

その熱いサウンドが後年このような形で日本全国に響き渡る事になるのを一体誰が予知出来たのか…元ネタを知っていると空気感などを思い起こしてはニヤリとしてしまう、そんなこぼれ話です。

変身宇宙刑事、宇宙怪獣、厳つい当て字の特攻服(トップク)姿に安全靴etc…オトコノコならどれか一つ、一度は憧れた思い出をこれでもかと放り込んでは丁寧に煮込んだデミグラスソースのように濃厚な一作。仰々しいタイトルすら伏線へ織込んでいく清々しいまでの妙技をお楽しみあれ!

(C) 破壊魔定光 中平正彦 集英社/ヤングジャンプコミックス

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