「トイレの花子さん」と言えば、幅広い世代の日本人に広く知られている都市伝説。
学校時代は遥か遠い昔のことになってしまったわたしですが、「トイレの花子さん」の話はよく覚えております。
特に小学校は、学校の七不思議というものが必ずあり、その中に「トイレの花子さん」が入っていたように思います。どこそこのトイレの何番目の個室が花子さんのいる場所という噂があり、とても怖かったものです。
「トイレの花子さん」は、学校の怪談の中で最もポピュラーなものです。
あまりにもポピュラーなので、映画化されたり、アニメ化されるなどして、様々なイメージを持たれていると思います。
もしかしたら、世代によって「花子さん」に対する思いも違うのかもしれませんね。
ちなみに、わたしにとっての「花子さん」は、やっぱり、ちょっと怖いイメージです。
誰かから「トイレの花子さん」の噂を聞かされた日は、低学年の頃など、一人でトイレに行けませんでした。
ある意味、人気者の「花子さん」を、色々な角度から見てみたいと思います。
花子さんのウワサ
「トイレの花子さん」のウワサとはどんなものでしょう?
あまりにも有名なので、誰もが知っているとは思いますが、内容はこういったものです。
誰もいないはずの小学校、校舎3階のトイレ。
3番目の個室の扉をノックして、「花子さんいらっしゃいますか?」や「花子さん遊びましょう」と三回呼びます。
女の子の声で「はい」と小さな返事が返ってきて、トイレの中からでてきて、中に引きずり込まれるというものです。
花子さんの容姿について、最も知られているのは、オカッパ頭に白ブラウス、赤い吊りスカートといったものでしょう。
いわゆる昭和の小学生女子ですね。
わたしが小学生時代に聞いたウワサも、こんなものだったように記憶しています。
花子さんと出会ってしまった後の展開には、他のパターンもあり、現れた花子さんに遊びに誘われ、応じると殺されてしまうというものです。もし遊びの誘いに乗らなければ追いかけてくる・・・どうしたって、怖い目に遭うようです。
できれば出会いたくない花子さんですが、中には興味本位で呼び出してみたい人もいるものです。
そこで、「花子さんの撃退法」があるのです。
出会ってしまった花子さんを撃退する方法は、どういうものかと言えば、「満点の答案用紙を見せたら逃げる」という方法。なんだか、ちょっと可愛いように思われます。
花子さんとは?
「花子さん」ですが、実は、単なる都市伝説ではないようです。
実際にあった悲しい事件がモデルになっていたり、民間信仰との関連もあり、なかなか複雑なルーツを持つ怪談です。
民間信仰「厠神」
花子さんに関係すると思われる民間信仰として「厠神」というものがあります。
「厠神」は文字通り、トイレの神様のことで、江戸時代から昭和初期にかけて、さかんに信仰されていました。
「厠神」を祀るために、紅白の女の子の人形や花飾りをトイレに供えていたようです。戦後、この風習は廃れてしまいましたがトイレによく造花が飾られるのは、この風習の名残とされています。
かつてトイレに供えられた赤と白の女の子の人形が、「花子さん」の白いブラウスと赤いスカートに変化したのではと考えられますね。
モデルとされる事件
花子さん伝説のモデルとなったとされる事件があります。
昭和12年に岩手県で起きた起きた家族の心中事件が由来であると言われています。
その家は六人家族で、父親が不倫をしていたそうです。母親がそのことについて悩み、とうとう一家五人で心中を図ったのでした。まず、母親は長男と次女を自宅で殺害します。その現場を見てしまったのが、花子さんのモデルとされる長女で、自宅から飛び出し学校に逃げ込みます。そこのトイレに隠れたのですが、用務員が見ていました。
長女を追いかけてきた母親が学校に現れ、そこにいた用務員に自分の娘はどこかと尋ねます。
事情を知らない用務員は「トイレの一番奥だよ」と母親に教えてしまったのでした。母親は逃げ込んでいた長女を発見し、自宅に連れ帰ってしまうのです。
その翌日、長女を含めた家族たちの亡骸が発見されました。
なんとも凄惨な事件ですが、これは実際にあったことで、この事件が花子さん伝説の発端になったのではと考えられています。ちなみに、この事件の後に、トイレに付近で殺された長女に似た女の子が目撃されるようになったとのことです。
殺害された時の長女は、オカッパ頭に白いブラウス、赤いジャンパースカートといった姿をしていました。名前は花子ではなかったそうですが、当時、最もポピュラーな女の子の名前だったことから、花子さんという名前で都市伝説かしたのではないでしょうか。
他にもいくつかある
更に調べると、他にも花子さん伝説の起源となったのではないかとされる事件がありました。
福島県のある小学校の三階にある図書室で女の子が本を読んでいました。窓際にいたので、誤って転落し亡くなりました。
その女の子の霊が三階のトイレに出るようになったというものです。
これはあまり具体的な情報ではないので、信ぴょう性に欠ける気がします。しかし、「三」というキーワードが出てきますので、もしかしたら関係があるのかもしれません。
もう一つ、こちらは1954年の東京都文京区で起きた事件です。
小学校二年生の女の子がトイレにいったきり戻らないので、担任の先生とクラスメイトが探しました。すると、学校のトイレで下着を口に詰め込まれ、亡くなっているのが発見されました。
暴行された後に殺されたようです。
なんとも凄惨で、あまりにも辛い事件ですが、当時の学校はセキュリティが今のように発達していませんでしたから、こういったことが起きてしまったのでしょう。
この事件の後、一人でトイレに行かないよう、集団でトイレに行くように子供に言い聞かせる親が増えたそうです。
花子さんがオカッパ頭である理由についても悲しい噂があります。
父親から虐待を受けてできた傷を隠すために、オカッパ頭をしているという説があるのですが、なんとも痛ましく、切ない気がしますね。
花子さんブーム
1980年代から1990年代にかけて、全国的に学校の怪談がブームとなります。
学校のトイレに出現するとされる花子さんも、そのブームに巻き込まれ、まさに「花子さんブーム」のような流行り方を見せ、漫画やアニメ化し、色々な設定が後付けされるなどして、どんどんバリエーションが増えていったのです。
そんな中で、1994年にポンキッキーズの中で放映された、アニメ化した花子さん「学校のコワイうわさ 花子さんがきた!!」では、ただ怖いばかりの悪霊やお化けといった花子さんではなく、子供の守護霊的な存在として描かれるのでした。
その活躍はゲゲゲの鬼太郎よろしく、「オカリナ」や「幽霊しばりアップリケ」を使って人間に仇なす荒ぶる幽霊を退治、出現もトイレではなく「朽ちた公衆電話」となり、トイレの花子さんとしての原型を留めなくなっていきます。
さらにシリーズが進むと、「チューリップの絵が描かれた封筒に花子さんへの用件を書いた手紙を入れ、枕元に置いて寝る」という呼び出し方に代わり、ますます鬼太郎化していったのを覚えています。
ちなみに、この設定での花子さんは複数存在し、呼び出し方によって善悪が変わっていくものだったのも斬新ではありました。
この年代の花子さんの守護霊的な存在は、1995年の「映画版 トイレの花子さん」にも流用されるのですが、決定的な違いは映画版では、あくまでも「花子さん」は、謎の存在であって、直接的に登場しないといった手法がとられます。
そんなブームの中、花子さんの家族や、妹の「ぶきみちゃん」といった新たな設定が加えられ、「花子さん」ブームに拍車をかけていくのでした。
花子さんの衰退
人気を誇った花子さんブームですが、21世紀にはいると、あまり聞かれなくなってしまいました。
かつてトイレの花子さんは誰もが耳にし、恐れたことのある怪談だったものですが、21世紀となると「トイレ」というもの自体が今までとは違う場所になってしまったのです。
それは、トイレは汚く暗い場所ではなくなった為であります。
もちろん、公衆便所など古いトイレは、じめっとして怖い雰囲気が漂って昔の名残が残ります。しかし、学校などのトイレは昔と違い、ずいぶん綺麗で明るく快適になったようです。
お店のトイレ、自宅のトイレ、色々な施設のトイレ。どこも綺麗に整備され、時にはお洒落ですらあり、そこでくつろぐことさえできるような空間となりました・・・こんな場所では、怪談は生まれにくいものです。
かつて花子さんが住んでいた、異界の入り口だった「便所」は、今ではもうほとんど姿を消してしまい、自然と花子さんブームが終わっていったのだと考えます。
快適なトイレは有難いものですが、なにか、寂しい気がしますね。
花子さんよ、永遠に
「トイレの花子さん」の怪談は、薄暗く、おどろおどろしいけれど、どこか懐かしい思い出としてわたしの中に残っています。わたしが小学生の頃、子供は今よりもっと多くて、通っていた小学校もマンモス校で、子供の数が多く、校舎も広く、大きいです。
休み時間になると、子供たちはトイレに行きます。
あっという間に満員になるトイレ。切羽詰まった子供は、どうしても、別の場所のトイレを探します。
ここも満員、じゃああそこ・・・というふうに、遠くへ遠くへとトイレを探し、ついに、誰も来ないような静かなトイレに行きあたります。
わたしにも経験があります。
必死に探して見つけたトイレは、みんながいる場所から離れた旧校舎でした。
そこのトイレは古く、冷たく、タイル張りもうっすらくすみ、鏡が曇っているような場所でした。それでもペーパーはちゃんとあり、水も流れるので利用することはできます。
トイレを使っている最中、怖くてたまりませんでした。
何か変な気配がしないか、誰かから見られているような気がして、早く済ませて逃げたかったのを覚えています。
トイレは、独特な場所です。
トイレを使っている最中、人は最も無防備になると思います。
トイレが何となく怖い場所のように思われるのは、人間としての本能がそう感じさせているのかもしれません。
だとすると、トイレがどんなに綺麗で明るく、快適な場所になったとしても、本質的な怖さは消えないはずです。
そうであるならば、花子さんは、未だトイレに住んでいると考えて良いのではないでしょうか。
そしてまたいつか、花子さんのブームが到来することがあるのかもしれません。
※画像はイメージです。
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