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意外と知らない平安時代の呪術師たち

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平安時代、日本の呪術を担っていたのは陰陽師でした。
「陰陽師」と言ってもそれは元を正せば朝廷の官人の名称、いわば平安貴族を指していましたが、いつの頃からかその意味が職業名にすり替わってしまいます。

あの安倍晴明が良い例ですね。
安倍晴明といったら陰陽師と連想できるものの、貴族の身分があったと言われても戸惑うかと思います。
こうした平安貴族な陰陽師は官人陰陽師と言われ、豊臣秀吉による弾圧が始まるまで格の高い存在でした。

以降は民間に定着し、現代では「呪術廻戦」や「少年陰陽師」、「東京レイヴンズ」といったサブカル作品の題材に用いられるのがせいぜいといったところでしょうか。しかし平安時代の陰陽師には官職とあって絶対的な地位があったのは事実です。
そのため陰陽師以外の呪術師は時には孤立し、時には庶民のなかに紛れ込んでいました。

今回は一部ですが、そんな陰陽師以外の呪術師たちを紹介していきましょう。

目次

刑罰を恐れずに呪詛をした法師陰陽師

平安時代に敷かれていた「律令」には呪詛による殺人を実行した者は謀殺とみなされ、斬首刑に処されていました。
たとえ未遂だったとしても流刑、もしくは数か月の強制労働が課せられていたそうです。
呪詛の実行や成立を判定するには難しいところがあるものの、当時の人たち、特に平安貴族にとっては強盗犯がちらつかせるナイフやトンカチのようなものでした。

貴族としては中流である清少納言ですらも呪詛を受けた節があり、また絶世の権力者だった藤原道長に関わる女房が呪物を家に仕掛けられたという記録が残っています。
しかしながら安倍晴明をはじめとした官人陰陽師たちは「誰かを呪った」という記録や説話はなかったりします。
律令によって定められた刑罰や朝廷に仕えていることを考えれば誰かを呪うなんてことは到底出来なかったのでしょうが、そのかわりに呪詛を率先して実行していたのが「法師陰陽師」たちでした。

法師陰陽師とは貴族ではない陰陽師、もとい庶民な術者たちを指しています。
彼らはどういうわけか僧侶の格好をしていたため、「法師陰陽師」と呼ばれていました。
「法師陰陽師」は庶民をはじめ、下級および中級貴族たちからも依頼を受けていたそうです。呪詛もそうなのですが、喪や年中行事で禊祓が必要だった時に彼ら彼女らは法師陰陽師たちを頼っていました。

何故わざわざ庶民な法師陰陽師に頼っていたか?と言えば、朝廷に仕える官人陰陽師たちは藤原道長といった格式高い貴族たちの依頼で精一杯だったからです。
さて、そんな法師陰陽師の代表者といったら蘆屋道満でしょう。
従来のイメージでは安倍晴明の好敵手にして敵役として知られる道満ですが、実在の道満は禊祓で生計を立てていた法師陰陽師だったようです。

記録によれば高階(たかしなの)光子(みつこ)という中流貴族の女性の依頼をよく受けていたと残されています。
光子はのちに呪詛を仕掛けた首謀者として扱われるものの、この件に道満は関わっていなかったとか。
法師陰陽師と言ってもピンキリで、ごろつきや博徒のような連中もいたそうですが、実在の道満は可もなく不可もなくといったところだったのでしょうか。

天狗の信仰者 人狗(にんぐ)

平安時代における呪術師は官人陰陽師と法師陰陽師がツートップでした。
しかし飛鳥時代や奈良時代では巫(かんなぎ)が国や庶民と身近だった術者だったように、陰陽師ではない術者がいたことが分かっています。

そのうちの1つに「人狗」と呼ばれる術者たちがいました。
「今昔物語集」によれば人狗とは天狗を祀ることで術を行使していた者たちのことで、当時の人々の感覚からすると邪法の使い手だったみたいです。

天狗のなかには愛宕山の太郎坊や鞍馬山の僧正坊のように神様として崇められている天狗もいるものの、天狗を信仰することはイコール仏教を棄てたと見なされていました。
(天狗といったら山伏の格好をしているものですが、山伏は仏教のために苦行を行っているので人狗ではありません。天狗の山伏の格好はあくまでイメージです!)
そのためかひどく嫌われており、「今昔物語集」の語り口も人狗に対しては基本的に辛辣です。

また第64代天皇・円融(えんゆう)天皇が病気に伏した時、修行僧と偽っていた人狗が天皇の病を治癒したというエピソードが「今昔物語集」にはあります。
この人狗は周囲から聖人と称えられており、その評判によって招聘されたわけですが、人狗だとバレたとたん、孤立し、円融天皇ですらも捕縛と投獄を命じました。

まぁ私たち現代人の感覚に当てはめるなら「高名な弁護士が実は詐欺師だった」ということが露見したようなものでしょうから、無理はないかもしれません。
ではこの人狗たちは一体どういうことが出来たのか?といったら

  • 加持祈祷による治癒
  • 呪詛
  • 下駄や草履を子犬に変える、懐から狐を鳴かせて取り出す、牛や馬の尻から体内に入って口から出るといった手品のようなこと

をしたそうです。
先述した天皇を治癒した人狗は「都へ向かう道中、空から多種多様な花を降らせた」ともあることから人狗は「呪術も行える手品師」という印象を受けますね。

消えた職業・・・陰陽師

陰陽師には2種類あり、そのうち正式な陰陽師として認められていたのは安倍晴明のような貴族身分がある「官人陰陽師」でした。
彼らは朝廷に仕える人間として平安貴族が悩まされていた呪いを仕掛けたことはないものの、重い刑罰を恐れずにそれをやってのけていたのが庶民の立場だった「法師陰陽師」たちです。

彼ら以外にも呪術を扱える者として天狗を信仰する人狗や巫、密教僧に仙人などがいました。
ほとんどが職業としては消え、その面影を見出せるのはサブカル作品ぐらいですが、それでも当時の情勢が伺えるのは面白いですよね。

参考:繁田信一「日本の呪術」

※画像はイメージです。

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