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自衛隊新小銃 20式5.56mm小銃(HOWA5.56)を考察

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20式5.56mm小銃はその名称が示す通り、2020年に陸上自衛隊が正式採用とした自動小銃・アサルトライフルであり、それまでの89式5.56mm小銃と同様に豊和工業が設計と製造を手掛けたものである。
陸上自衛隊では89式5.56mm小銃の採用から25年を経た2014年頃から、これを代替する後継の自動小銃の検討を開始したとされており、よりモダナイズされた装備への変更には注目が注がれていた。

具体的にはドイツのH&K社のHK416や、ベルギーのFNハ―スタル社製のFN SCAR等の他国での採用実績もある名だたる自動小銃らとの競合を制して、国産の豊和工業製の20式5.56mm小銃がその座を勝ち得と言う。
20式5.56mm小銃は陸上自衛隊への正式採用が確定するまでは「HOWA 5.56」の名で新型自動小銃の選定に出品されていたが、選定が決定した月翌年の2020年5月、防衛省の発表を以てその名称が確定した。

目次

20式5.56mm小銃のスペックと概要

20式5.56mm小銃は全長851mm(ストック伸張時)、銃身長330mm、重量3.5kg、口径5.56mm、使用弾薬5.56mm×45で30発の箱型弾倉を使用、発射速度は650〜850発/分となっている。

因みに前モデルの89式5.56mm小銃は、全長916mm(固定ストック)、銃身長420mm、重量3.5kg、口径5.56mm、使用弾薬5.56mm×45で20発若しくは30発の箱型弾倉を使用、発射速度は650〜850発/分。

比較としてアメリカ軍のM4カービンは、全長850.9mm(ストック伸張時)、銃身長368.3mm、重量2.68kg、口径5.56mm、使用弾薬5.56mm×45で20発若しくは30発の箱型弾倉を使用、発射速度は700〜950発/分である。

ここから見て取れるように20式5.56mm小銃は、伸縮ストックの採用及び銃身長の短縮化で閉所での取り回しに適したサイズを目指したものとなっており、その意味では近年の潮流を取り入れたと言えよう。
20式5.56mm小銃は競合となったH&K HK416・FN SCARと有効射程や命中精度、耐久性等の銃そのものの品質評価では互角とされたが、兵站・費用面で優位性を認められた事で正式採用を勝ち取ったと伝えられる。

2020年度予算では3,283丁の20式5.56mm小銃が9億円で調達される事になっており、これは1丁あたり274,000円に相当するが、陸上自衛隊では総数15万丁で維持コストも含め総額約440億円程と見積もっている。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%98%B2%E8%A1%9B%E7%9C%81, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons

20式5.56mm小銃の特徴と正式採用の背景

20式5.56mm小銃の外観は、陸上自衛隊の正式採用を共に競ったFNハ―スタル社製のFN SCARに酷似しており、機関部の上部のピカニティレールや伸縮式のストックなどからは特にその印象を強くする。
但し近年の西側諸国の自動小銃・アサルトライフルは、何れも操作系のマガジンキャッチやセレクター・レバー類などの配置はAR-15・M16系統の流れを汲む傾向にあるため、多少なりともデザインが類似するのは否めない。
これらマガジンキャッチやセレクター、ボルトリリース等のレバー類は全て左右両利きに対応したアンビ仕様となっており、コッキング・ハンドルも設定による切り替えが可能なものとなっている。

20式5.56mm小銃は前モデルの89式5.56mm小銃に比して、水による錆や作動不良が起こりにくい仕様となっており、これは2018年3月に陸上自衛隊内に新設された水陸機動団での運用を前提とした為とされる。
水陸機動団は近年南西諸島への圧力を強めている中国軍に対し、その島嶼部における離島の奪還を企図して組織された部隊であり、上陸用舟艇や水陸両用車両AAV7等を用いてその任に従事する事が期待されている。
アメリカ海兵隊に範を取って創設された水陸機動団は、その想定される任務環境において、従来の部隊よりも海水に晒されるため、20式5.56mm小銃もそうした状況下での使用を念頭に置いて設計されたものだ。

因みに件のアメリカ海兵隊がM4カービンを主力小銃に採用したのは2015年と、同銃を1998年から導入したアメリカ陸軍に比べても17年も遅く、それまではM16A4を装備していた。
こうした世界でも有数の実戦経験を誇るアメリカ海兵隊の状況を見ても、如何に敵前への上陸作戦等が少なくなっているかは明らかであり、そこからは20式5.56mm小銃の触れ込みには眉唾感も否めない。

現在の日本が抱えるメタ的な銃火器製造の問題点

太平洋戦争後の日本では自衛隊が使用する銃火器について、そのカテゴリー毎に製造企業を振り分けて割り当てており、20式5.56mm小銃のような自動小銃は豊和工業のみが担当する事が当初より決まっている。
因みに拳銃や短機関銃はミネベアミツミ社の担当でオリジナルからライセンス生産まで対応、軽機関銃や車載用機関銃、重機関銃は住友重機械工業が担当していたが重大な不正が発覚、同事業から撤退を表明した。

住友重機械工業の不正とは生産を担当していた各種機関銃の全てにおいて、テストデータの数値を改竄していたもので、実に40年間以上にも渡って恒常的に組織ぐるみで行われており、その数は5,000丁にも上る。
個人的にこの住友重機械工業の不正とは自らが経済的な利得を得るために行ったのではなく、費用や納期等から止む無く行ったものだと信じたいが、日本の防衛産業における問題点が凝縮された事案のように映る。

そもそも日本の自衛隊が必要とする調達規模では、オリジナルの銃火器を設計・製造してコスト的に採算の合う形とする事は困難にも関わらず、国産でなければいざと言う時に補給に支障をきたしかねないとの理由で続行されてきた。
それでも住友重機械工業の一件を鑑み、これが明らかに強度不足の銃火器を平然と納入し部隊に供給していた点、それらが実用に堪え得ない事実を考えれば、いっそ輸入の方がまだましな気もしてしまう。

そもそも今回の20式5.56mm小銃についても、防衛省側では従来通りに凡そ30年もの継続運用を前提としているが、銃火器の代替サイクルとしては長期間に過ぎ、すぐに陳腐化してしまう事態は避けられないだろう。
他国製の銃火器のライセンス生産であっても品質を担保出来ず、代替サイクルも他国の軍に比べて長きに過ぎる現状にあっては、いっそ割り切って既に使用実績が確実な外国製を購入する方が正解なのかも知れない。

Lance Cpl. Manuel Alvarado, Public domain, via Wikimedia Commons

戦闘機と比べれば、たかが知れているとも感じられる自動小銃の調達価格

今回取り上げた陸上自衛隊の新正式自動小銃、豊和工業製の20式5.56mm小銃は、総数15万丁の調達を行う前提で総額は約440億円であるが、例えば日本が導入するF-35ライトニングⅡの調達価格は1機約130億円弱である。

航空自衛隊では通常滑走路仕様のA型を105機、短距離離陸・垂直着陸が可能なB型42機の合計147機を調達予定だが、これらの3機分強の予算で陸上自衛隊の基幹の装備である筈の自動小銃は賄われる事になる。
そこからすれば態々水陸機動団等の特殊な使用用途まで考慮したとは言うものの、オリジナルで20式5.56mm小銃を製造する事が果たして本当に正解だったと言いきれるのか、非常に疑問が残る事も事実だろう。

featured image:Lance Cpl. Manuel Alvarado, Public domain, via Wikimedia Commons

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