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「いだてん」オリンピックとブルーインパルス

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大河ドラマ「いだてん」が完結しました。
日本人がオリンピックを通して、いかに世界に飛び出していったかを克明に記した前半と、そんなオリンピックに魅せられ、太平洋戦争を経てやっと東京に大会を招致した人々の姿を描いた大作でした。

大河ドラマでは厳しい近代日本とオリンピックを題材にしていたこともあり、なじみが薄かったせいか最終回の視聴率は8.7%と酷評されていますが、コアなファンからは絶賛された名作に仕上がっています。

目次

宮藤官九郎氏の仕事は偉業

今回、宮藤官九郎氏の仕事は、偉業というべきです。
勿論ドラマですからフィクションはてんこ盛りですが、メインストリームの史実はどっしりとそこにあり、埋もれたエピソードを掘り起こし、オリンピックを軸にして近代日本がどう発展してきたかをここまで詳らかにしてきたのですから。

毎回の放送で驚かされたのは、その情報量、密度の濃さです。
オリンピアン、アスリートたちについては勿論のこと、招致活動に奔走する委員や役人、政治家、戦中の時期には軍部、そしてヒトラーやムソリーニまで登場させて世界史までもきっちりと描きながら、市井の人々の暮らしまで事細かに見つめていく、毎回約40分、その秒単位のこだわりと場面転換の巧みさに圧倒されました。

クドカンがもっとも苦しかったのは、情報の取捨選択だったそうです。
これもあれもいれたい、でも尺が足りないから入れられない!
本当はあのエピソードも、このキャラももっともっと出したかった、というほど、彼とスタッフはオリンピックの資料を集め、読み漁り、物語を構築していったのです。

オリンピックと航空自衛隊・ブルーインパルス

そんな彼が“取捨選択”したあとに彼が残してくれたもの・・・ラスト三話にわたって登場した、航空自衛隊・ブルーインパルスです。

航空自衛隊、黎明期の晴れ舞台。
航空自衛隊が発足したのは東京オリンピックから10年前の昭和29年夏でした。

警察予備隊から始まって、何もないところから苦労を重ねて作り上げた組織が平和の祭典に華を添える・・・オリンピックは、彼らにとってまたとないチャンスとなったのです。

旧軍の人材が育てた新しい世代のパイロットたちがその任を背負うことになりました。
重責でしたが、時代は今よりもおおらかで豪快ともいうべき空気がありました。

「いだてん」の作中では編隊長の松下治英(駿河太郎)が「青空に、五つの輪っか!ドーンと描いてみせましょう!」と大見得を切ったのが東京オリンピック開催の一年前。

「五輪カラーの飛行機雲を!青空に発射するんだよ~!」
最終回、一つひとつを丁寧に再現していった開会式のクライマックスで、ぶわぁっと舞い上がる鳩の群れを目で追った先にスモークを引いて飛ぶ白い飛行機と、大きな五輪!

代々木の国立競技場(旧)に入れる人数は限られていましたが。
その日、東京の街中で、みんなが外に出て、車を降りて、上空のあのオリンピックの五輪の飛行機雲を見つめていた、市井の人々の一体感までもみごとに表してくれたのです。

「人」を描いてくれたことへの感謝

これまでの映像作品で、この開会式のフライトを描いているものがそう沢山残されているわけではありません。
記憶に新しいところでは、2011年の“ALWAYS三丁目の夕日‘64”で、一瞬見事なコンビネーションで飛んでいくハチロクが見えたくらいでしょう。

これはそのCGの見事さから十分に称賛される出来栄えではありますが。
そこに映っているのは飛行機雲と機体だけでした。

今回「いだてん」では、嬉しいことに、それを飛ばしていたパイロットたちのエピソードを踏まえて、8割ノンフィクションで物語に盛り込んでくれました。

ブルーインパルスのファンにはかなり知られていたお話でしたが。
ドキュメンタリーなどで紹介された再現ドラマ以外では、こうしたかたちで彼らを描いているものはなかったのです。

空に五輪を描く、と宣言したものの、練習では一回も成功しなかったこと。
前日の天候が悪く「明日は雨だから飛ばないだろう」と早々に残念会を開いてのんだくれていたこと。
当日朝になって晴れていることに気付いて真っ青になった、というエピソードまでも余すところなく盛り込まれ、本番一発で見事にキメたという彼らの豪快なノリが、駿河太郎さん演じる松下治英さんの姿を通して描かれていたことは、古参のブルーインパルス・ファンとしてとても嬉しかったのです。

余談ですが。
ハチロク・ブルーインパルスの時代をご存知の方曰く「松下のおじさんはあんなイケメンじゃなかった!」とコメントされましたが・・・ご本人は、残念ながら2019年の5月にご逝去されていました。

あと少し早ければ、と悔やまれてなりません。
観て頂きたかったなぁ、駿河太郎さんの登場シーン・・・。

長野オリンピック開会式では

前回の東京オリンピックのブルーインパルスは、生まれる前のことなので口伝でしか聞いたことがありません。
友人のご母堂や、子供の頃にこれを見て空自のパイロットを目指したという方のお話は、羨ましい限りでした。

自分の記憶で、テレビではあってもリアルタイムに観た経験があるのは、98年2月の長野オリンピック開会式です。
この時には、世界的巨匠・小澤征爾氏がタクトを振るうベートーベンの第九「歓喜の歌」のクライマックスに合わせて、スタジアム上空を“レベルオープナー”で突き抜けるというプランでした。

後に日本テレビの『スーパーテレビ』というドキュメンタリー番組で特集が組まれています。
この時代はまだ5色のスモークを使用できたので、オリンピックらしいフライトになりました。

実はこの時期、山岳地帯の真ん中に位置する長野の会場は雪の影響もあり、視認性が悪いことから、人員、航空機に加えて、移動式TACANなど…当時の空自の最新の装備までも惜しみなく動員して安全に誘導できるようミッションが組まれました。

最大の問題は長野の会場だけでなく、全世界的に中継を結んで第九の合唱を実施し、衛星中継のタイムラグを考慮しながらの演奏と、そのラストに合わせて時間ピッタリに上空に到達させるというコンマ秒刻みのスケジュールでした。
当日は会場のスタンドから当時の飛行隊長がその誘導指示の任にあたり、見事に成功させましたが、その苦労の様子がしのばれる動画が残っています。

もし演奏時間がずれたら、という心配をしているメンバーたち。
「ミュージシャンにはミュージシャンのプライドってもんが…!」
そんな話をしながらも、最後にはすべての問題をクリアして思い描いていた通りのフライトを実施したミラクル!

不可能だと思われるその緻密さ、精密さがこの現場から生まれるのかと思うと、やはりブルーインパルスのパイロットというその資質はただ者ではなかったのだと実感しますね。

機体の変遷とスモークの色

機体をF-86F→T-2→T-4とスモークの色と変遷します。
東京オリンピックの時代、ブルーインパルスが使用していた機体は朝鮮戦争でその高性能ぶりが実証されたF-86Fセイバーと呼ばれた機体を使用していました。

耐用年数の限界が近づいたころ、国産の高等練習機T-2が開発されたことから後継機種に選定され、1982年から1995年まで使用されることになりました。
この二機種でのアクロバットフライトにはカラースモークを使用することが可能だったのです。

ブルーインパルスのスモークの正体は、スピンドルオイル、一般的にミシン油と呼ばれている潤滑オイルです。
ブルーインパルスが使用する機体には専用のタンクとノズルが装備されており、そこからジェットエンジンの噴出口に向けてオイルを噴射、高熱で燃焼するオイルがスモークになるというシステムを採用しています。

しかし、現行のT-4練習機に切り替わってからは、カラースモークを使用することが難しくなりました。
このカラースモークは、整備員が手作業で、顔料をドラム缶に入ったスピンドルオイルに溶かして混ぜるという大変な作業が必要になるのですが。T-4のエンジンの燃焼温度が前二機種に比べて低いために、完全燃焼しないままにスモークになってしまい、その顔料が地上に降り注いでしまうというトラブルがいくつか報告されたため、長野オリンピックのあった1998年後半からは使用できなくなった、というのです。

ドラム缶の上に大きなザルを置いて、顔料の塊を載せ、少しずつオイルに溶いていくというアナログな力仕事を知る整備員が今どのくらい残っているのだろうか、当時の技術はきちんと伝承されているのか…と思ってしまうのですが…もし、安全に綺麗な色のスモークが再現できる色素があったら、是非見てみたいですね!

しかも、現在のブルーインパルスの定番の技にある“桜”は、五輪を超えて六輪です!
是非、また鮮やかな5色の輪っかを赤坂見附の上空に再現してもらいたいものですね!

まとめ

ブルーインパルスはオリンピック以外でも、大規模なスポーツの大会の開会式などに飛んでいます。
最近では、日本中で大きなムーブメントを巻き起こしたラグビーワールドカップ開会式で調布市の東京スタジアム上空を飛びました。
この時は、滅多にない夕方のフライトということもあり、予行を含めて多くのファンが楽しみました。

演目は日本を象徴する花を表す“桜”です。
また、つい最近こけら落としが行われた新国立競技場ですが、旧・国立競技場が解体される前の平成26年5月31日に行われたファイナルイベントでも、ブルーインパルスはフライバイを実施しています。
来年の東京オリンピック開会式でのフライトの可否はまだ発表になっていませんが。
期待できる要素は沢山ありますね。

航空祭などでブルーインパルスのフライトを見るとき、何万という人が一斉に空を見上げて同じものを見てニコニコ笑っている瞬間、とてもハッピーな気持ちになります。
世代を問わず、誰もが憧れるパワーがそこにはあります。
オリンピックは、沢山の問題をはらみながらも着々と実施に向けて大きな流れが動いています。
どうせなら楽しまなくちゃ!

新国立競技場の中だけでなく、東京中から見える五輪マークが空に浮かび上がるって、想像するだけでワクワクしませんか?
半世紀を経て、もしまた同じ光景が見られたら、どんなにうれしいか。

・・・・・・来夏。
「いだてん」の作中のように、みんながその瞬間空を見上げて「わぁ~!」と笑顔になれることを願っています。

※画像はイメージです。

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