わたしは大学を卒業し就職のため県外へ出て、初めての一人暮らしをしました。
わたしが住んでいた部屋はきれいにリノベーションされていて、住み始めたのはわたしが最初でした。
「きれいな部屋に一番に住めてラッキー!」
最初はそう思っていました。
下見にもいきましたが、風のとおりもよく空気が澄んでいるようで一目で気に入った部屋でした。
実際に住み始めて数か月、特に怪しいことはありませんでした。
さて、仕事をして一人で疲れて帰ってくると、やはり寂しいです。
実家にいれば誰かしらがいて、出迎えてくれていましたから。
だから、毎日のように母に電話していました。
今日あった出来事、うれしかったこと、仕事の愚痴、なんでも話しました。
ある日、いつものように母と電話をしていました。
「わたし、霊感あるのかな。」
何の話題からだったか、ふとそう言いました。
すると、
♬☆sdふぁksけ
電話の音が割れたのです。
「おかしいな。」
と思いましたが、電波が悪いのだろうと、その日は気にせず眠りにつきました。
電気を消して、布団に入ります。
目を開けて暗がりになれてきたころ、その音は唐突に鳴り響きました。
「ここにいるぞ!」
わたしは驚きました。
なぜならそれは、ボタンを押さなければ鳴らないおもちゃだったからです。
袋の中にしまっていたので、刺激を加えるものはないはずですし、部屋にはわたし以外誰もいないはずです。
しかもセリフは数種類あって、ボタンを押すごとにセリフが変わります。
ずっと同じセリフを言い続けるなんて、ありえないのです。
「ここにいるぞ!」
おもちゃは鳴ります。
パシッ
今度は木が割れるような、ラップ音も天井から聞こえてきました。
その日はもう早く寝てしまおうと思いました。
ですが、怖くてなかなか寝付けず、暑いのに毛布をかぶって何とか眠りにつきました。
「○○さんって、霊感あるの?」
「彼氏かっこいい人ね。○○会社に勤めてるんだね。」
「○○さん昨日、めいっこさんと話してたんだね。」
職場では、会社の人からこのような世間話をたくさんされました。
わたしは職場では、あまり自分の話をしません。
「なんで知ってるんだろう?」
という話題もありました。
それはすべて、一人暮らしの家で話していた内容です。
それも不思議なことに、電話をした次の日くらいに話してきて、タイミングもよくぴったりです。
母にしか話していないはずなのに…。
当然窓は締め切っていましたし、テレビもつけていたので、外への音漏れはなかったと思います。
わたしの話す内容も、電話の向こうで話す内容も、誰にも聞かれていないはずでした。
でも…
マンションの壁が薄くて、たまたまわたしのマンションの近くに住んでいる会社関係の人が、会話を聞いていた?
いや、誰かが盗聴器を仕掛けた?
隣接する部屋の人が何かしている?
考えられることはこれくらい?
相変わらず部屋には誰かがいる気配もします。
恐怖で不安でたまりませんでした。
そんなことを思いながら、職場でも自宅でも監視されているような感覚は、わたしが会社を辞め、引っ越すまで続きました。
あのとき「ここにいるぞ!」とボタンを押したのは、誰だったのでしょうか。
なぜ職場の人は、わたしの家での会話内容を知っていたのでしょうか。
未だに謎で、思い出すとぞっとします。
※画像はイメージです。
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