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感染症に畏怖の念を抱いた、人間が生み出したモノ。

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歴史上、人災と競うほど多くの犠牲を出してきた感染症という存在。現代でも身近である感染症は人々に猛威を振るってきたが、時に民俗的・宗教的文化にも多大な影響を及ぼしてきた。
当時未知の存在であった感染症、それらに畏怖の念を抱いた人間が生み出した業深いモノとは?

目次

感染症の歴史

人間と疫病・感染症流行の歴史は存外古く、紀元前に農耕を開始する頃には症例があったとされている。可能性だけで言えばそれ以前の狩猟が主流だった頃にも動物を介した感染症の症例はあったが、その頃の人間は少人数で徒党を組み行動していた…不特定多数の人間間での接触が少ない環境だったので現代で見られるパンデミックと呼ばれる程の爆発的規模の感染と被害には至らなかったといわれている。

歴史を遡って挙げられる世界的に有名な感染症の流行といえば天然痘やペスト、スペインかぜやアジアかぜなど「○○かぜ」という名称で各地で広まった新型インフルエンザなど。時に当時の全人口の25~30%を死に追いやった感染症は19世紀に病原体の研究が進み対処法が確立して以降は発生数や死者数も減り猛威もなりを潜めたが、1970年以降には「新興感染症」と呼ばれる新たに発見された感染症などが発展途上国や先進国を問わずに流行し、都度ワクチンの研究や対処法の確立に追われ現代に至っている。

文化に影響を及ぼす感染症

感染症の治療法が確立していなかった医学進歩途上の時代、死亡率が高い感染症は火事や地震同様の災害として扱われていた。何なら神の怒りや天罰、あるいは鬼や妖怪といった人ならざる存在の仕業だともいわれていた。ひとたび触れれば命を奪われる、死を振りまいていく未知の存在は、人の力では成す術もない人智を超えた化け物のように捉えられていたのだろう。

感染症のような流行り病が流行した場所で同様に広まるのは「病を振りまく悪の存在」の噂だ。ヨーロッパだと14世紀頃にペストが流行した際、かの有名な悪習である魔女狩りが横行した。この時に処刑されたのは魔女であることを疑われた無罪の女性だけでなく、流行り病の治療に奔走した医者も含まれていた。

感染を予防するためにマスクを装着し、重篤患者を最後まで治療し看取る姿は民衆には「死期が迫る者の前に現れる不気味なマスクをつけた死神のような存在」と因果関係が逆に映ったのか。当時のヨーロッパの人口は全体の3分の1まで数を減らした。中には患者だけでなく、病を忌避し畏怖の念を抱いた民衆が生んだ悪の存在や悪習の犠牲者も含まれていたといえる。

流行るのは病だけでなく

歴史上幾度となく感染症の大流行を許し、決して少なくない犠牲者を出してきた人間だがいまだかつて滅びという完全敗北には至っていない。時に感染症に対して鬼や天災のような存在を見出し、成す術のない諦観に打ちひしがれる事もあったが、当時はびこるのは病だけではなかった。

日本でも古くは日本書紀には感染症の流行が記録されているが、江戸時代「お役三病」と呼ばれた感染症である天然痘やはしかが流行した際は、「疫病絵」と呼ばれる錦絵が多く出回った。これは症状を軽くし回復・健康を祈願する魔よけの効果をもたらすとされていた。

天然痘には「疱瘡絵」、はしかには「はしか絵」を描き、中には感染を予防する方法や病に効く食べ物などが描かれているものもあり、病を鬼のような脅威として恐れながらも祈る力で抵抗している気概が読み取れる。
また病が発生した地域には「病を予言する妖怪」や「自身の姿を描いた絵に疫病を払いご利益を与える妖怪」の文献が多数残っている。現代でも「アマビエ」といえばピンとくる人もいるかもしれない。

人間の畏怖が生み出すのは悪習や悪鬼ばかりではない。感染症に抵抗し打ち勝とうとする気持ちが疫病絵やアマビエのような妖怪たちに病を払う力を与えるうちに、医学が感染症を研究し尽くし根絶させる日が来ることを期待したい。

※画像はイメージです。

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