中東の軍事強国「イスラエル」と女性兵士

中東の小国でありながら軍事強国としても知られているのがイスラエルであり、1948年の独立以後今日に至るまで4回にも及ぶ中東戦争等の大規模な戦争を勝ち抜き独立を維持している。
第二次世界大戦前後のナチス・ドイツによる迫害や、そもそも世界中で暗に程度の違いこそあれ排斥される傾向があったユダヤ人がそうした風潮に抗うシオニスト運動の末に起こした国だ。

イスラエルが建国されたパレスチナ地域にはアラブ系の人々も多数居住していたため、それらのアラブ人からしてみればイスラエルの一方的な建国は容認出来ず、長年続く紛争の元となっている。
このあたりの政治的・地理的な要因は日本からすればかなり遠い異世界の出来事のように感じられるが、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教の聖地エルサレムを擁する地の対立は根深い。
そうした周囲を敵に囲まれた形の情勢下で国を守らんとするイスラエル軍には、女性兵士も多数が所属している事でも知られている。

一部に限定された徴兵制を持つイスラエル国防軍

国家としてのイスラエルの軍隊は「イスラエル国防軍」と呼ばれており、陸軍約12.5万人・海軍約8千人・航空宇宙軍約3.5万人の計16.8万人の兵員を持つ3軍から構成されている。
イスラエルの国家としての総人口は約880万人であり、日本が同様に総人口1億2580万人である事と比較すれば、凡そ7パーセントほどであり非常に少ない事は明らかである。
因みに日本の自衛隊は陸上約15.2万人、海上約4.5万人、航空約4.7万人であり、四方を広い領海に囲まれた海上自衛隊を別にすれば国の規模と比してイスラエル国防軍の多さが際立つ。

イスラエル国防軍はこの規模の兵員を確保する為に徴兵制度が存在し、18歳からの兵役の義務があり且つ、これが男女問わずという点が世界でも希有な例として注目されている。
しかしイスラエル国民であれば全てが兵役の対象と言うわけでは無く、イスラエルに在住するユダヤ教徒・イスラム教ドゥルーズ派教徒のみであり、キリスト教徒や他のイスラム教徒は該当しない。

イスラエル国防軍における女性兵士

前述のようにイスラエル国防軍には男女問わず限定された兵役義務があるが、この期間はこれまで男性が2年8ヶ月、女性が2年と異なっていたがこれが急速に変化してきている。
これは2000年に行われた兵役に関する法律の変更に伴うもので、それまで軍の中でも後方支援、具体的には衛生兵や通信兵が主であった女性兵士の位置づけから戦闘部隊にまで拡張された。
この戦闘部隊はイスラエル国防軍初の男女混合部隊「カラカル大隊」であり、これを始めとして2017年迄に合計4つの男女混合部隊が設置され、戦闘部隊の女性兵士の兵役期間は男性同様となっている。

イスラエル国防軍の16.8万人中、徴兵制による兵役従事者はそのうちの約12万人とされ、更にその約4割ほどが女性兵士であり、総数では既に約5万人弱に及ぶものと見られている。
中東の他のイスラム文化圏では伝統的・文化的にに男尊女卑の傾向が強い事で知られるが、こうしたイスラエル国防軍への女性兵士の増加もこの地域では極めて希有な事だと言えるだろう。
尚イスラエル国防軍内において女性兵士が従事可能な部署は、既に全体の約85パーセントに達しており、先の男女混合部隊の増設で飛躍的に高まっている。

https://www.flickr.com/people/45644610@N03, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

女性兵士が7割を占める「カラカル大隊」

「カラカル大隊」はイスラエル陸軍の中で、イスラエル南部のエジプト国境やガザ地区などを主に担当する南部軍の歩兵大隊であり、2009年以後は構成要員の約70パーセントが女性兵士となっている。
2006年に「カラカル大隊」では女性の少尉が狙撃小隊の指揮官となり、また2010年にはアラブ系の女性兵士が戦闘要員として配属されるなど、イスラエル国防軍の中でも先端の取り組みが多い。

「カラカル大隊」の女性兵士は2012年や2014年にはエジプト国境周辺でテログループや犯罪組織との銃撃戦を展開するなど、実戦経験も積んでいることが報じられ世界でも注目を浴びた。
こうした実戦で「カラカル大隊」の女性兵士は、同部隊の標準装備であるイスラエル製アサルト・ライフルのIMI タボール TAR-21を使用していると見られ、同銃はブルパップ式の短い全長が特徴だ。

世界各国の女性兵士の現状

イスラエル国防軍は法改正によるジェンダーフリーの潮流と、小国故の徴兵制の施行から急激に女性兵士の比率が増加しているが、世界的にはどうだろうか。
世界最大の予算の軍隊を擁するアメリカでは、2015年に当時のカーター国防長官が女性兵士への戦闘任務への解禁を表明し、先攻する他国の状況を鑑み歩兵・砲兵部門への登用を進めている。
オーストラリアも2011年に女性兵士の解禁を表明し、すでに全体の約1割にあたる人員が配属されている状況となっている。

フランスでは軍全体の約2割を占める迄に女性兵士の比率は増加しており、潜水艦や憲兵などへの配属以外も認められているものの、戦闘部隊を志願する女性兵士は少なく2パーセントに満たないと言う。
こうしたフランスの現状は大勢を示しているようでもあり、全体として見れば戦闘部門に女性兵士が配属されるのは、やはりまだまだ小国の軍隊が中心とも言えそうだ。

※一部の画像はイメージです。

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