ホラーのみならず、ミステリー作品の題材にも起用される『神隠し』。
起きる場所や規模も様々に世界中で散見される事象だが、果たしてそれは全て神の御業と言って良いものだろうか?
幾つか興味深い点を見つけたので、触れながら整理していく。
神隠しの定義
神隠しとは、主に1人であるが、稀に複数の人間が、忽然と姿を消す事象を指す。
神隠しは伝承の中でなければ当然と言えばそうだが、神が直接「私が人間を隠した」と主張してくることは無いし、失踪していた人間が後に姿を現し「私は神隠しに遭っていた」と証言するケースも極稀だ。
大抵は発見されない或いは、発見された失踪者を見た関係者たちが「彼(彼女)は神隠しに遭ったのだ」とまことしやかに囁き、周囲に知れ渡る。
この伝播の性質からか、神隠しが噂される地方には土地神や妖精などの存在が認知され、一定の宗教や信仰心が根付いている場合が多い。
各国で起こる神隠し
日本でも神隠しの概念は違和感なく根付いており、地方によっては人間を隠すのが天狗のような妖怪だったりと伝承の内容に種類がある。
自身が神隠しに遭ったと主張する人間の存在を皆無としなかったのは、近年でもネット掲示板のオカルトスレなどに「もしかしたら神隠しに遭ってたのかもしれない」と自身の体験談を書き込む者の存在があるからだ。
読めない看板が建つ町で知らない言語を話す人間のような存在に囚われ数か月過ごしたという体験談の真意や、これを神隠しと呼ぶのか?
議論の余地はあるが中々興味深い話ではある。
海外だと神隠しの概念はあるのかといえば、2001年、某有名アニメ映画が全国で上映された際、原題の『神隠し』にあたる言葉が存在しない国が数国あり翻訳に手こずったというこぼれ話もあったが、『人間が失踪した際に不可思議な存在の力が関与したと噂されている事例』自体は存在する。
北欧の地方には赤ちゃんをイタズラに隠してしまう妖精の民話があるし、知名度で言えばバミューダトライアングルで機体ごと消えた事件や、物資を残し乗員全員が消えた幽霊船メアリー・セレスト号などもある。
海外の有名な集団失踪事件には、神ないし人外の不可思議な力が関与しているとも言われるが、並行して軍部や国が真相を隠そうとしているという陰謀論も囁かれるのが特徴ともいえる。
神隠しは何故起きる
国内外の神隠しに対する微妙なニュアンスの違いも比べると面白いのだが、『なぜ人が忽然と消えるのか』、『そもそもどういった人間が神隠しに遭いやすかったのか』という点に着目すると、もう少し違った視点を得ることができる。
国内の神隠しに絞って考察していく。神隠しは伝承や民話にあるような『神が惚れた人間を攫ってしまう』場合を除くと、どうやら身体や知恵の発達が遅い子どもや老人、産後十分に回復できなかった女性などが多く遭遇していたらしい。
・・・さて、ここで既視感を覚えた読者がいると嬉しいのだが、実はこの神隠しに遭う者の条件に類似したソレに関して、以前までに書き散らした紙面の中でも何度か触れたことがある。或いは『迷信』『魔女を裁いた裁判』など、最も色濃く記したのは『生贄風習』で、『生贄に選ばれたのは知恵遅れや五体不満足といった少し欠けた、より神に近しいと解釈された人間』と記した。
こういった条件に当てはまる神に近い人間とは、村や集落ではどのような立場でどのような扱いを受けていたと推測できるだろうか?
集落から人が消え、それを「神の所業だ」と主張する時、「神が故意に人間を隠している」という事になる。神に生贄を捧げる時然り、条件で挙げた人間を神が欲しているという解釈に。
『なぜ人が忽然と消えるのか』・・・もう少し詰めると、『神隠しは誰に必要とされていたのか』。
『神が己に近い存在を所望し贄風習や神隠しを起こしたのか』或いは『村や集落で働き手になれない人間の口を減らす為に人間たちが神の存在を利用したのか』、はたまた全く別の説か。
果たして読者諸君はどう捉え、考えるだろうか。興味が湧いたなら、ぜひ考察して自説を整えてみてほしい。
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