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「カン、カン」を考察〜古い呪いとの繋がりを探る

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インターネットの中で語られる「カン、カン」という怪談をご存じでしょうか。怪物などが登場しないシンプルな構造ではありますが、得体の知れない恐怖感に包まれた怪談です。
ただ読んでいるだけだと気が付きませんが、この作品には古くから伝わる呪いの影が見え隠れします。
今回は、本作のあらすじを紹介し、呪いとの関わりについて見ていきましょう。

目次

「カン、カン」とは

「カン、カン」は2002年に、2chオカルト板「洒落怖」に投稿された怪談です。
本作は、同スレッドに投稿された有名怪談「姦姦蛇螺」や「八尺様」の様に、対抗できないような(ように思われる)強大な怪異が登場する訳ではありません。むしろ、怪異の種類としては少し地味ですが、昔ながらの怪談の雰囲気があります。

子供のとき、髪の毛を洗いながら、誰もいないはずの背後が気になったことはありませんか? また、夜の自宅に不気味さを感じたことはありませんか?
本作は、そんな記憶を呼び起こされるような怪異譚の1つなのです。

「カン、カン」あらすじ

語り部である「私」は、小学生当時、母・姉・妹と共にアパートに暮らしていました。その日は母が体調を崩し、「私」が消灯を担っていました。
いつもより早い就寝に、「私」は寝付けませんでした。そんなとき、「私」の耳に「カン、カン」という耳慣れない音が響きました。しかし、周囲では何も起こっていません。

不思議な音で起きた姉と共に、「私」は原因を探し、居間へ向かいます。居間には、白い着物を着た長い髪の女性が、テーブルの上に座っていました。「私」は恐怖のあまり叫び、母を起こしに向かってしまいます。しかし姉は、その女性をジッと見つめていたのでした。
母は姉に、何を見たのかを尋ねます。しかし姉は、「女の人がいた」というだけです。その様子から「私」は、姉が恐ろしいものを見たと考えていました。事実、姉は「私」が「何を見たか」と尋ねても、「あんたが叫んだから」と明確な答えを話さないのでした。

それから年月が流れ、「私」が高校を受験する頃。再度「私」は、あの音に出会います。今度は、その女を直視してしまったのは「私」でした。その女の目には釘が刺さり、手には鈍器が握られていました。「あなたも、あなた達家族もおしまいね」。
怪異はすぐに「私」を襲います。学校から帰った「私」の耳に、誰もいないと思われる部屋から「カン、カン」という音が聞こえます。思わず逃げ出した「私」は、外から家に電話をかけてみることにしました。それに出たのは、「母と似た声をした、母ではないなにか」だったのです。

「私」は姉を伴い、家に帰ることができました。

「カン、カン」後日談

以前の事件から8年後、「私」は大学生になり、実家の隣県で一人暮らしをしていました。姉は遠く離れた場所で一人暮らしをしているため、実家に暮らしているのは母と妹の2人だけです。

ある日のこと。母から帰省を促された「私」は、嫌々ながら実家に帰ることになります。「私」はそこで、長らく会話をしていなかった姉を話すことができました。

姉は「私」に、姉宅で「カン、カン」というあの音が聞こえたことと、最近母の様子がおかしいことを聞きました。妹からの情報によると、夜中の1時頃に家を出て、10分程で帰ってくることを繰り返しているとのこと。そして、その行動を母自身は覚えていませんでした。

その夜、「私」は妹と共に、外出する母の後を付けました。「私」は、恐ろしい形相で電柱の回りをぐるぐると歩き回る母を見ました。

家に帰った「私」は、真っ暗な家の中に響き渡る「カン、カン」という音を聞きます。電気を点けると、目の前にはあの女性。思わず電気を消すと、背後からたまらなく恐ろしいものが近づいてくるのが分かりました。そしてそれは、「私」の肩をがっしりと掴んだのです。

「カン、カン」考察~丑の刻参りを連想させる~

「カン、カン」はどちらかと言えば淡々とした語り口で、過剰に恐怖や絶望を煽るようなタイプの話ではありません。しかし、読み進めていくごとに、少しずつ不穏な気配が高まっていきます。
不穏な気配が最大まで高まるのは、語り部である「私」が、怪異の正体と思しき女性を見たときです。その女性の特徴を考えてみましょう。

女性は白い着物を着て、目には釘が刺さり、手には鈍器を持っています。そして、彼女が現れるときには、「カン、カン」という音がします。これらの特徴は、日本を代表する呪いを連想させるものです。
釘に鈍器を使う呪いと言えば、「丑の刻参り」です。丑の刻参りは白い着物を着て行うものですし(本来はもっと細かな決まりがありますが)、木に藁人形を打ち付けるときには、カンカンと音がします。

女性はどのような存在なのでしょうか。その正体は、本文では名言されていません。また、彼女が「私」一家の前に現れる理由もはっきりしていません。家に憑いていると思われる描写はありますが、姉の家にも表れたことを考えると、見た人に憑く可能性も考えられます。そうなると、母もまた、彼女を目撃(娘たちよりより強く接触)したのでしょう。

日本の諺に、「人を呪わば穴二つ」というものがあります。「人を害すると自分も同じ目に合う」という戒めの言葉ではありますが、そのまま、呪いに対する言葉として考えることもできます。
「私」や姉が見た女性は、かつて誰かを呪ったのかもしれません。そして、その呪いは彼女を見た人にも、害を及ぼしていったのでしょう。目に刺さる釘は、「見てはいけない」ことを指しているとも考えられます。丑の刻参りは、誰にも見られてはいけないのです。

まとめ:怪異が日常に侵食する恐怖

なんでもない日常のすぐそばに、何か恐ろしいものが潜んでいる。こう考えると、なんだかゾクリとするものを感じませんか? 「カン、カン」は正に、そうした種類の怪談です。

怪異が現れると、途端に「家」という存在が大きく変化します。住み慣れた家から、暗く、得体の知れないものがうごめく恐ろしい空間になるのです。こうした雰囲気を味わうのは、怪談を読む醍醐味といえるでしょう。
暑い夏の夜。じわじわと押し寄せる恐怖感で、少し涼しくなってみませんか?

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