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少し変わった地名の由来はおぞましいものだった!

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事の始まりは、20年近く前の話。
当時、私はある工務店に勤務し浄化槽工事の申請書を役場に提出するため、字切図(明治初年の地租改正に伴って1877年全国的に測量、調整されてできた地籍図)を開いて、社長と相談をしていたのでした。

工事現場は県内の事務所からそう遠くない場所で、仕事上の話が一区切りすると社長がおもむろに「この名前がついた訳を知っているか?」と字切図を指し、そこには「毛下野」というが地名がそこにあった。

目次

毛下野の由来

私は気軽な感じで「わかりません。何か面白い話でもあるのですか?」と聞いてみると。
社長は少し間を置いて、「毛下野の毛は、人の髪の毛を意味する」。

そこで「物凄く長い髪の持ち主がいたという話ですか?」と尋ねると、予想を反して「いや、子どもの髪の毛だよ。狼に食い殺された子どもの頭髪だ」・・・思わず息をのんだ・・・返す言葉が見つからない。

「狼が食い散らした子どもの頭部の髪の毛だけが、村の道に血まみれで吐き出されていたんだ」。
今までにそんな話は聞いた事がなく冗談半分で驚かすつもりなのだろうと思い、「狼がわざわざ、人間の住む集落に来て人を襲う例を聞いた事がありませんが」と反論すると、こんな言葉を発した。

「なぜ、狼が村の子どもを襲ったか。それには理由がある」

子どもを襲った理由

社長は大振りの茶碗に自らお茶をつぎ足し、記憶を掘り起こすように語り始めた。

幾人かの古老から聞いた話を繋ぎ合わせると、狼が自分の子を殺された復讐によるものらしい。随分長い間、村人と狼の関係は良好だった。ところが、長雨が続いた年があり、山中で獲物を捕る事が難しくなった。狼にも子がいたので仕方なく村へ降り、鶏小屋を襲ったのだ。
長雨のせいで村も困窮していた。鶏を食い殺された村人は怒り、罠を仕掛け、罠にかかったのは子狼で撲殺し屍は木につるされた。親狼は子狼の死がわかったのだろうが、数夜に渡り重苦しい遠吠えが聞こえたそうだ。しばらくすると収まり、村人が安心して眠れる夜が訪れたのだった。
しかしある夕方、数人の子どもの姿が行方不明になり、親たちは必死になって探したが見つからない。数日後、おびただしい血の付いた髪の毛が、道に散乱しているのを目撃された。
多分、着物の端切れや髪結い紐の残骸で身元が知れたんだろうな。死んだのは、鶏を食い殺され、罠をかけて子狼を殺した家の子ども達だったのだ。

社長は視線を下げ、お茶をすすった。
「悲劇ですね」私はそう漏らした。
「ああ、どちらも食っていかなきゃならん。人も獣も子を養わなきゃならん」

悲しい伝承

地方に伝わる話には、天候不順での悲劇話がある。人も獣も普段は互いのテリトリーを守っているが、飢饉となるとそうもいかない。互いに子どもを守るため、相手のテリトリーを侵し悲劇が生まれてしまう。
おぞましい地名由来の話ではあるが悲しい伝承でもある。

※画像はイメージです。

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