タツノコプロ 1971年製作の大人向けアニメ？！「アニメンタリー決断」

今でこそ少子高齢化の進む日本では多くのアニメが深夜に放送されるようになり、故に視聴の対象者も大人となっています。しかし1971年にすでに大人向けのアニメ「決断」という作品が放送されていました。

アニメ決断とは？

この「決断」というアニメは、ガッチャマンやタイムボカンシリーズで有名なタツノコプロの手による作品です。正式名称は「アニメンタリー決断」となっています。「アニメンタリー」とは、アニメとドキュメンタリーを合体させた造語であり、太平洋戦争を部隊としています。全26話が当時30分番組として放送され、太平洋戦争における様々な戦いの局面で日本陸軍・海軍の将たちによるどういった「決断」が下されたかを克明に描いた作品となっています。

もちろん1971年の作品のため、アニメとしての映像という部分では昨今の作品とは比べるべくもない事は確かです。しかしこそに描かれるリアルな描写は流石戦後26年しか経過していない、実際に戦地へ出征した世代にも見て貰おうと企画したというだけあって秀逸です。今の作品には望むべくもない力強い無骨さを感じずにはいられない作品です。

効果音にも工夫が凝らされており、作中の登場する爆発音や機械音は実写記録から流用されているというマニア泣かせのものとなっています。この奇跡的な作品が製作された背景は、当時のスポンサーであったサッポロビールの役員達の中に多くの軍隊経験者がいたことだとされています。これらの人たちからの大人の鑑賞に堪えうる戦記物の作成の要望をくみ取り、当時としては希有な大人にも見てもらえる作品として制作されたと伝えられています。

また当時放送された時間帯も、土曜日の19：30～20：00というゴールデンタイムであり今の常識からすると考えられない事にも驚きを隠せません。昨今の作品では、日本の目線から太平洋戦争を描く場合でも戦争賛美と捉えられないように、基本主人公らは戦争に否定的なスタンスを取っているように描かざるを得ない大人の事情があると思います。しかしこの時代故にそうした一元的なイデオロギーから離れ、ある意味淡々と戦争を描くことが出来ている作品だと感じます。是非ミリタリー好きには視聴をお薦めしたい快作です。

各話データ

第1話真珠湾奇襲
第2話ミッドウェイ海戦・前編
第3話ミッドウェイ海戦・後編
第4話マレー突進作戦
第5話シンガポール攻略
第6話香港攻略
第7話マレー沖海戦
第8話珊瑚海海戦
第9話ジャワ攻略
第10話海軍落下傘部隊
第11話バターン・コレヒドール攻略
第12話潜水艦伊-168
第13話第一次ソロモン海戦
第14話加藤隼戦闘隊
第15話ラバウル航空隊
第16話キスカ島撤退
第17話特攻隊誕生
第18話山本五十六の死
第19話ルンガ沖夜戦
第20話マリアナ沖海戦
第21話レイテ沖海戦・前編
第22話レイテ沖海戦・後編
第23話硫黄島作戦
第24話連合艦隊の最期
第25話最後の決断
第26話川上監督の決断

タイトルからお気づきの方もいらっしゃると思いますが、26話は太平洋戦争と関係ない、読売ジャイアンツの監督「川上監督の決断」となります。
第1話直後から戦争美化や右寄りな作品と主に教育団体から抗議が多数あり、その為の措置という噂がありますが実際は制作時間の為らしいです。
また版権の問題があり、再放送や映像ソフト化できずに幻の作品となります。