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巡る恐怖「こんな晩(六部殺し)」を考察~その背景にあるもの

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「恐怖」とは人が生き残るための大切な本能です。同時に人間は「怖いもの見たさ」を抱える生き物でもあります。
昔から多くの怪談が語られ、現在でもホラー作品が人気なのがその証拠。

怪談系の昔話の1つに「こんな晩」と言われるものがあります。今回はこの怪談を深掘りし、考察していきたいと思います。
昔話の中には、少しの真実が含まれているもの。「こんな晩」の中には、どんな真実が含まれているのでしょうか。

目次

「こんな晩(六部殺し)」とは?~基本的なストーリー~

「こんな晩」とは、日本の昔話の1つです。地域特有の話ではなく、日本の各地で類話が残されています。別名として「六部殺し」と題されることもあります。

この昔話のキーワードとなる「六部」とは、全国を行脚して回る巡礼者(僧侶)のこと。彼らは全国66カ所の霊場を巡り、それぞれに法華経を収めることを目的としていました。本当の名前を「日本廻国大乗妙典六十六部経聖」と言い、それが省略され六部と呼ばれるようになりました。

基本的なストーリーは以下のようなもの。

ある夜のこと。貧しい百姓の家に、1人の六部が一夜の宿を借りにきました。家の主人はこれを快く受け入れ、もてなします。

その夜のこと。主人が部屋を覗くと、金を数えている六部がいました。欲にかられた主人は六部を殺し、自分のものとしてしまいました。
主人は六部の金を元手に稼ぎ、金持ちとなりました。やがて子供も産まれましたが、その子供は口がきけませんでした。

ある夜のこと。主人は子供を連れて家の外に出ます。彼が六部を殺したときと同じような気候(月夜など)の晩でした。
いきなり、「お前に殺されたのは、こんな晩だった」と子供が話し始めます。
その顔は、あの六部のものでした。

「こんな晩」にはいくつかの話型があります。
中には、主人が恐怖で死んでしまったり、一家が滅亡してしまったりするものもあります。

妖怪や幽霊よりも不気味な、輪廻する怪談

怪談と言えば、妖怪や幽霊が登場することが多いもの。しかし「こんな晩」は、そのどちらでもありません。殺された六部の怨念であることは確かなものの、幽霊の形はとっていないのです。

「こんな晩」の特徴は、輪廻する怪異であること。殺された六部が子供の姿を借りて、自身を殺した犯人の前に現れます。

これは、六部の怨念が子供に憑依したとも考えられますが、六部が子供に輪廻した(産まれ変わった)と考える方がしっくりきます。なぜならば、子供の異変は突然起こったものではなく、常にあったものだからです(話さない)。

幽霊や妖怪が登場する昔話は多く、こうした存在が非常に恐れられていたことは確かです。しかしそれよりも、「こんな晩」はひと際不気味です。

なぜならば、妖怪や幽霊には明確な対処法が用意されている場合が多く、そうでない場合も分かりやすい「タブー」が設定されていることが少なくありません。つまり、「これをすれば助かる(可能性がある)」、もしくは、「〇〇はしてはいけない」などの決まりを守れば、危険から身を守れるのです。

「こんな晩」はどうでしょうか。

「こんな晩」はごくシンプルな構成で、取るべき対処法も、その怪異を避けるためのタブーも存在していません。「人を殺してはならない」がタブーに当たるかもしれませんが、それは怪異を避けるためと言うよりも、人として基本的な倫理観です。

それが現れたとき、どうすれば良いか分からない。こうした要素が、人の恐怖心を駆り立てる昔話となっています。

「こんな晩」の背景にあるものとは?

どんなに荒唐無稽なものでも、昔話にはほんの少しばかり、真実が含まれているものです。それは教訓であったり、その時の状況であったり様々です。では、「こんな晩」に含まれた真実とは、どんなものなのでしょうか。

「こんな晩」のストーリーラインはごく単純です。殺人という不当な方法で金銭を得た人物が、自身が犯した罪の報いを受ける話、とい考えられます。一家滅亡や主人の死亡で話が終わる場合は、その傾向がより一層強くなります。

この物語の根本に、「悪いことをしてはいけない」という思想があるのは確かでしょう。しかしそれ以上に、「お金持ち、特に成金に対する複雑な気持ち」が見て取れます。なぜならば、「こんな晩」に類する昔話の全てが、六部の金を元手に成り上がる百姓の姿を中心に捉えているからです。

いきなりお金持ちになった人を見たとき、周囲の人々は何を思うでしょうか。気にしない人もいるかもしれませんが、多くの人は羨ましく思ったり、モヤモヤしたりすることでしょう。

そういったマイナスの気持ちが強く働くと、例え正当な理由でお金を得ていたとしても、何かしら「悪いことをしたからお金を得たんだ」と言いたくなってもおかしくありません。
人間が抱く悪感情の代表格である妬み・嫉み。これこそが、「こんな晩」という話を作り上げたものなのかもしれません。

「こんな晩」は、様々なバージョンが存在する怪異系昔話の代表格

「こんな晩」・「六部殺し」という昔話について考察してきました。

「こんな晩」は類話が全国に残されている昔話です。シンプルな話型でありながら不気味さが際立つ物語であるためか、これをもとにした小説なども数多く書かれています。たとえ元の話を知らなくても、「どこかで聞いたことがある」と感じる人は多いことでしょう。

今回は基本的な「こんな晩」についてご紹介してきましたが、地域によって少しずつ話が異なるのも、昔話の重要な要素の1つ。
全国の「こんな晩」を集めて比べるのも、楽しいかもしれません。

※画像はイメージです。

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