チョーク一発クランク回してエンジンスタート、暖機進めて回転上げて、車止め外してゆっくり行進、走り出したらフル回転。V型気筒エンジンの極致とも言えるハイパワーな駆動音が機体(搭載エンジンとチューン)毎に違った音を奏でるイカした作り込みのレシプロ桃源郷「荒野のコトブキ飛行隊」。
西部劇+レシプロ飛行隊ミーツ女の子という、一見破天荒に見せかけた超絶玄人志向のマニアック作品を、若干めんどくさい視点から紹介させて頂きます!
どっちも知ってないと理由不明?西部劇+レシプロという一見謎な世界観
「荒野の~」というタイトル、ひび割れ乾いた感じのタイトルデザイン、いかにもな口笛から始まるOP曲…「これ西部劇だっけ?」と、OPまでの呼び込みを見て理解出来る「西部劇」というジャンルに造詣がある人ならば案外納得もしくは理解出来るかもしれないギリギリの路線を行く「荒野のコトブキ飛行隊」。
世界観としては海の無い乾いた正に「荒野」の世界を舞台とした物語なのですが、その作りと言い雰囲気と言い、明らかに西部劇を意識した作りを全面に押し出している作品です。
そんな世界を我が物顔で闊歩するのは「レシプロ戦闘機」、しかも第二次世界大戦期に主力を務めたものばかりというちょっと不可思議な世界観。一見すると「何でそんな世界?」と作り手の真意を測りかねるかもしれませんが、実はこの二つの要素、意外と親和性があったりします。
例えば西部劇と言えば、見た事がある人ならばガンマン同士の決闘を始めとする、荒くれ者が銃突き付け合う取っ組み合いの世界というステレオタイプがイメージ出来ると思われます。
これがレシプロ戦闘機全盛の時代の空中戦…ドッグファイトとも言われる「格闘戦」の有様と上手く一致すると言えるのです。
恃めるものは己の腕と相棒…磨き抜かれた銃か戦闘機か、といった具合。
更に、西部劇の旧式銃とレシプロ戦闘機は、高級でこそあれ「腕の良い技師のツテがあるならギリギリ個人で管理出来るモノ」という点もあったりします。
こうした「文法」の上で妙な親和性を感じさせる両者を、明らかにマニアックな制作陣が「ついつい」見逃せなかったのかなと思わせる面白さを感じてもらいたい作品ではないかとニヤニヤしながら眺めてしまうのでありました。
レシプロ戦闘機は女性が操るには現実的?
ミリタリーと女性という組み合わせは、今やサブカルチャー業界ではすっかり当たり前となったイメージですが、現実においてやはり筋力や体力諸々の身体機能でハードルが高いとされます。
そんな中で陸海から満を持して(前例は他に色々あるかもしれませんが)女性で占められたレシプロ飛行隊である「コトブキ飛行隊」が躍り出ました。
作品世界観においても、アウトローや組織的な飛行隊は数あれど、女性チームは珍しい中で恐るべき戦績を叩き出し続ける「コトブキ」ですが、そんな強者である彼女達も墜ちる壊れる故障するが割と日常茶飯事な、レシプロ飛行隊の悲哀をシビアに描かれる世界となっています。
つまりは基本路線として割と現実志向な部分を感じさせる本作にあって、女性+レシプロ戦闘機とは、中々「有り得る」路線なのかもしれないと思わせる説得力がありました。
と言うのも…
- 一旦飛んだら基本的に一人で動かす(しかない)
- 被弾したら墜ちる。ここに差をつけるのは装甲と火力だけ
- 腕前に性別はあんまり関係無い
と、意外にも「性差が埋まった世界」になっているフシが感じられたという事にあります。
もちろん制作陣の意図に「してやられ」ているのかもしれませんが、少なくともその説得力を感じさせたいという意図があったのなら、その作り込みにおいて見事な完成度と言えるものではないでしょうか。
最後に
只管マニアックであるが故に、その(多分もっと濃い)制作意図がビシバシ感じられる作品。
ミリタリー好きなら一つの題材を知るものとして、一度は触れておきたい一本として挙げられるでしょう。
(C) 荒野のコトブキ飛行隊製作委員会 (C)「荒野のコトブキ飛行隊 完全版」製作委員会
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