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海上自衛隊の最新鋭護衛艦「くまの」とは?

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2021年時点で建造中の艦艇迄含めた場合、海上自衛隊で最新鋭の水上戦闘艦がもがみ型護衛艦であり、このうちで2番艦にも関わらず最初に進水を果たしたのが「くまの」で、これは昨年2020年11月の事だった。
このイレギュラーは1番艦でネームシップの「もがみ」が建造中に機関部のトラブルに見舞われた為に発生した特異な事例であり、まったくの新設計の護衛艦である事も相まって「くまの」の認知度が高まったとも言える。

海上自衛隊では通常の各国海軍の艦種である駆逐艦やフリゲート艦も全て護衛艦と称しているが、「くまの」を含むもがみ型護衛艦はその区分に従えばフリゲート艦に分類される大きさ・排水量の艦艇である。
従来の海上自衛隊ではこのフリゲート艦の艦種記号を「DE」と呼称していたが、「くまの」らもがみ型護衛艦では「FFM」と言う新たな記号が付与され、フリゲートと多用途・機雷を示すものと説明されている。

目次

護衛艦「くまの」の命名の由来

今回もがみ型護衛艦の2番艦が「くまの」と名付けられたのは、旧帝国海軍の最上型重巡洋艦4番艦の「熊野」を受け継いだものであり、当時の軽巡洋艦に割り当てられた河川名の流れを汲むものだ。
因みに最上型巡洋艦は、当初は軽巡洋艦として建造されたが、後に主砲を大型化し換装した為に重巡洋艦化した艦艇で、元々からの重巡洋艦には当時は「山名」が割り当てられるのが慣例だった。

海上自衛隊となってからは1968年から11隻が建造されたちくご型護衛艦(DE)の10番艦が「くまの」であり、同艦が2001年に除籍されて以後、20年を経て再び同じ名を冠する艦艇となった。

もがみ型護衛艦(FFM)「くまの」が建造された背景

もがみ型護衛艦「くまの」らには前述したように海上自衛隊でも初となる艦種記号「FFM」が用いられているが、これはフリゲート艦を示す「FF」と多用途(マルチ・パーパス)、機雷(マイン)の頭文字と言われる。
元々基準排水量で3,000トン級が想定されていたが、要求される仕様の実現には30パーセント程の大型化が必須となり、近年増強の一途を辿る中国海軍への南西諸島方面での監視・警備任務に対応するものと期待されている。

多用途と称される要因は、対空・対艦・対潜の対処に加えて機雷の掃海能力が付与されている点が大きく、尖閣諸島を始めとした南西諸島の島嶼部に対して、従来は掃海艇が担ってきた役割をも兼務し得る能力を持つ。
艦自体の特徴としてはコンパクトさとステルス性能を追求している事がデザイン上からも窺え、艦橋等の船体上部の構造物が敵からのレーダーの反射断面積を極力少なくするように傾斜を持たせた直線を基調に構成されている。

また運用上では3隻の同艦に対して4組のクルーでのローテーション乗務体制が計画されており、1隻に90名程に省人化された人員で更に稼働率を向上させる取り組みが行われる事が打ち出されている。
これは従来型の個艦毎の乗務体制を改める取り組みとなる反面、全てが同一の設備ではない艦艇に対し実効的なものとなるか否かも議論が分かれているが、乗組員の確保にはプラスに働くとの見方も多い。

もがみ型護衛艦(FFM)「くまの」の仕様と兵装

護衛艦「くまの」は基準排水量3,900トン、満載排水量5,500トン、全長133メートル、全幅16.3メートル、深さ9メートルの艦体を持ち、軸出力で70,000馬力を発生するディーゼルとガスタービン併用のCODAG方式を採用している。
これにより最大速力は30ノットを発揮し、艦載機としては中型であるSH-60K哨戒ヘリコプターを1機搭載しており、これらを約90名と省人化が図られた乗組員数で運用できるように設計されている。

兵装としては対艦用に62口径5インチ(127mm)の単装砲を1基、国産の17式艦対艦誘導弾(SSM-2)の4連装発射筒を2基搭載しており、当初案ではMk.41型垂直発射機16セルも搭載可能だが現時点では未装備である。
対潜用には324mmのMK.2型3連装短魚雷発射管を2基搭載しており、前述のように保留中のMk.41型垂直発射機16セルが装備された場合には、これに収容可能な07式垂直発射魚雷投射ロケットも運用される可能性がある。
対空用には近接防空ミサイルのSea RAMを1基搭載するが、対艦用の62口径5インチ(127mm)の単装砲もこの用途にも用いる事が可能であり、目標によって両者の使用を判断する事になるのだろう。

「くまの」はFFMと言う新たな艦首記号が示すように、対機雷戦闘への装備として専用のOQQ-11ソーナーと無人の機雷排除機と機雷捜索用の無人機の運用能力を付与されており、島嶼部への対応が考慮されている。

「くまの」を始めとするもがみ型護衛艦の位置づけ

「くまの」を含むもがみ型護衛艦は尖閣諸島などの南西諸島方面への中国海軍の増強と進出に対抗すべく、通常時のこうした海域での警戒・監視任務を始めとして、対外的な派遣任務等への対処も念頭に置いている。
「くまの」よりも遥かに大型で建造費用も高額なまや型等のイージス護衛艦と異なり、より多用途で汎用的な任務への対応が見込まれており、DEのあぶくま型、DDのはつゆき型・あさぎり型の代替艦として22隻の建造が有力視されている。

平成25年12月に閣議決定された防衛計画の大綱及び中期防衛力整備計画では、護衛艦の総数を47隻から54隻迄まで増加させる方針が打ち出されており、その増加分の中心を担うのがもがみ型護衛艦になると言えるだろう。
「くまの」らもがみ型護衛艦は、2018年から2021年までの4年間で毎年2隻づつの合計8隻迄が既に予算上からも建造が決定しており、起工から就役までは凡そ2年のペースでその計画が進められている。

「くまの」に見る水上戦闘艦のカタチ

海洋国若しくは軍事大国として一定規模以上の海軍力を保有していない国においては、駆逐艦ですら今や大型の水上戦闘艦であり、「くまの」のようなフリゲート艦が最大の艦艇だと言う組織が多数を占めている。

日本の海上自衛隊でも今後の防衛を考えた際には、尖閣諸島を始めとする南西諸島の島嶼部の守りに最適なサイズで取り回しが容易な、「くまの」を含むもがみ型護衛艦に最適解を求めているのだと思える。
省人化とステルス性をコンセプトの中心に置いた「くまの」は確かに今の時代にマッチした艦容である事は否めないが、個人的にはその外観の無個性さにはどこか一抹の寂しさを感じずにはおれない。

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