くねくねって知っていますか・・あの有名な都市伝説です。
ああいったモノって、ただのネット怪談だと考えられていると思うのですが、意外と全国各地に出没するのかもしれません。
いつもの日課のはずなのに
私は普段、健康のために母と近所をウォーキングしています。
二人とも仕事をしているため、どうしても夜遅くになってしまうのですが、それでもお互いに身体を元気に保ちたくてウォーキングを毎日続けていました。
ある日、私が母と街灯の少ない、真っ暗な道を歩いていた時。
なぜそんな道を通っているかというと、歩数が稼げてアプリの歩数チェッカーで景品がもらえるからです。
この辺りの近所はいわく付きの家や心霊スポットが多く、なんとなく薄気味悪い場所なのですが、昔から暮らしていた私たちは半ば怪異と同居するようにして町で暮らしているので、夜のウォーキングにもあまり恐怖を感じていませんでした。
しかし、その日の夜は何か様子が違いました。
いつも会いに来てくれる近所の猫もおらず、夏だというのにひんやりとした空気に包まれており、私たちは薄気味悪い肌寒さを感じていたのです。
それでも全身で感じる違和感を振り払うようにして道を進もうとすると、50mくらい向こう、切れかけた街灯の光でうっすらと何か黒いモノが揺らめいていました。
ゆらゆら。くねくね。
あれはなに?
最初は私たちと同じように、ウォーキングをしている人が街灯の下で佇んでいるのだと思いました。
けれどもソレは人の形をしておらず・・・。
細長く、半透明の黒いモノが私たちの前でゆらゆら。くねくねと、まるで何かを誘うかのように身体を蠢かせていたのです。
「ねぇ、アレ」
母が私の横で声を震わせました。
私だけじゃない、母もあの黒いモノが見えているのです。
私は直感で理解しました。
そして、引っ越してきた余所者である私たちが、昔から近所の人たちに言われていた、ある言葉を思い出したのです。
『この町は変なモンが多いから。もし会っちまったら後ろを見るな。光を絶やすな。』
『後は人の多いとこさ逃げれば問題ないっぺ』
私はとっさに母の手を掴み、黒いモノから視線を反らすようにして後ろを向き、その場から逃げようとしました。
やってしまった・・・・
『後ろを向いたな』
確かにその時、私はその言葉を耳にしました。
逃げるために後ろを向くのは駄目だった。やってしまった。怪異に自分たちを認識されてしまった。
全身から冷や汗が吹き出し、身体がガクガクと震えています。けれども私は母を守らなければなりません。
スマホのライトを最大にして、私は母の手を引き、少し離れた所にある国道沿いのコンビニを目指して走り出しました。
「お母さん、後ろ向かないで走って」
私は母に声をかけ続けながら必死で走りました。
母は膝が丈夫ではないので無理をさせていることは分かりつつも、それでも後ろから這うようにして『ザッザッ』と近付いてくる音に追い付かれないように、必死に、必死にコンビニを目指して走り続けました。
くねくねだったんじゃない?
普段は国道沿いまで数分ほどの道が、永遠にも感じられました。
それでも光が満ちたコンビニの入り口にたどり着いた時、ぴたりと迫ってきていたモノの気配はなく、私と母は安堵してその場にへたり込んでしまいました。
コンビニで清めの酒を二人で飲んでからは、問題なく家に帰り着くことができたのです。
後日、この話を友人にすると「それってさ、くねくねだったんじゃない」と言われました。
確かにくねくねしていて、思い返せばあの有名な怪談と特徴が似ている気がしました。
もしかしたら、くねくねはただの都市伝説ではなく、似たような怪異や種類のモノが、全国各地にいるのかもしれません。
※画像はイメージです。
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