海上をさまよう光の球

これは今から10年以上前の出来事。当時の私は海上自衛官で護衛艦に勤務していました。
洋上での長い訓練を終え寄港する時に起きた実際の出来事です。

長い訓練を終えて…

私が勤務する護衛艦は母港を出港し、ある洋上でミサイル射撃、洋上給油や溺者救助等の様々な訓練を終えた。

「明日は港に入って陸に上がれる」という少し浮かれた雰囲気の中、この2週間一緒に訓練をしてきた護衛艦A、護衛艦B、護衛艦C、そして補給艦とともに所定の陣形を組んで、速力は前進強速で入港予定地の港に向かって通常航海をしていた。

漆黒の闇と天を覆う星屑

甲板から周りを見回せば漆黒の闇。
見えているのは僚艦の航海灯と天には全天を覆うような無数の星屑。
船乗りしか目にすることができない最高のシチュエーションだ。

私はワッチ(通常航海直)が終わり、前甲板に出でおもむろにポケットからタバコを取り出すと火を付け、紫煙をくゆらした。

思い返せば入隊以来 「いつ辞めてやろうか」 と入隊する度に考えていたが、気づけば艦船勤務も早数年が経過し、後輩隊員も増え、自衛隊を辞めることすら忘れていた。

今は本当にこの仕事に誇りを感じているし、護衛艦の乗組員として仕事も覚えてきてまさに「脂がのっている」と言える状況にあった。

こんなにも天を覆う爛々とした星屑を見ながら、たまに斜めに横切る流れ星に「俺もあんな風に一瞬であっても輝く人生を送りたい」 ・・・なんてセンチメンタルな気持ちになっていたのも、いつものことながら2週間に及ぶ過酷な訓練と明日の入港を控えて安堵の気持ちがあったからだろう。

なぜか目線が離せなくなった僚艦の航海灯

タバコをくゆらせながらぼんやり僚艦の航海灯を眺めていた私だったが、なぜか体を動かす事ができず、視線が外せなくなっている自分がいた。

理由は全くわからない。
ただただ、右45度に位置する護衛艦Aから、なぜか視線が外せないのだ。
「おかしいなぁ。疲れているのかな?」
私自身このよくわからない状況を飲み込めずにいた。

その時である。
“ふわぁ~ふわぁ~”と護衛艦Aの前甲板にある5インチ砲(主砲)のすぐ上空に明るい光球がふわふわと浮いている。

その瞬間、ガクッとした感覚を感じ、自由に動けるようになった私は、慌ててタバコの火を消し艦内に飛び込むように入った。
「なんなんだ!あれは?」

聞けばわかったいつものこと

慌てて艦内に入ると、すぐにベテラン隊員と通路ですれ違う。

私「先輩!護衛艦Aの真上に光の球が!」
先輩「あぁ見ちゃった?有名だよ。護衛艦Aはいろいろあるからねぇ。自殺者も多いし」
私「有名なんですか?じゃああれは?」
先輩「そうそう。そういうことさ・・・」

私は聞いたことがなかったものの、ベテラン隊員なら誰もが知る護衛艦Aの光る球。

・・・その正体が何かは想像にお任せします。

この手の話は自衛隊によくある話ですが、霊感のない私は初めて体験したことでした。


たろすけ
転職が趣味になっています

※写真はイメージです。本文の中の護衛艦とは違います。

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