剣と魔法の世界発、独創過ぎるSFチックアクション!「ロスト・ユニバース」をご紹介!

本作「ロストユニバース」は、90年代後半から00年代へ向けて「ライトノベル」というジャンルを一大コンテンツとして定着させた立役者の一人と言える「神坂一」氏によるSF「っぽい」(氏本人の言)全5巻からなる長編作品です。

無限に拡がる大宇宙、今日も気ままなはぐれ旅…剣と魔法を光線剣と精神物理現象化技術に持ち替えた、Sはスペース、Fはファンタジーと言わんばかりの超技術世界を背景にして、宇宙を駆けるマント男と骨董宇宙船…厄介事よろず請負を生業として、世界変われど変わらないのは男のロマンといった浪花節か任侠かという旅ガラスな物語を軸として展開されます。

当時の「オタク」コンテンツにおいて人気を博していた「RPG」要素を思わせる作劇構成は、寂しい懐事情から怪しい儲け話の誘惑、スラップスティックなギャグからシリアスとコメディが交錯するアクション、果てはハードな「決戦」と、魅力的なキャラクターやアイテムが激しく物語を翻弄する読みやすくも痛快な読後感満載の「アクション」ノベルと言える一作です。そのパワフルで爽快感すら感じる「ビジュアル」を是非ご体感あれ!

目次

90年代ライトノベル

迸る斬新な擬音とアニメ・マンガもかくやな表現力はまるで「字で読むマンガ」!
90年代を駆け抜け今や「世界的知名度」を誇る名手が贈るSF「っぽい」アクション・エンターテインメントをご覧あれ!

本作は今日に至る一大エンターテインメントジャンル「ラノベ(ライトノベル)」を世に広く知らしめ「ライトノベルのテレビ・劇場アニメ化」というメディアミックス体系を確立させていった90年代にあって、その立役者の一人である「神坂一」氏による作品です。
「神坂一」氏と言えば、昨今のリバイバルブームでも度々取り上げられ、今なおその人気は衰える事を知らないばかりか世界各国にその知名度を広げている「スレイヤーズ!」シリーズでその名を知る方も多いと思われます。

本作は「スレイヤーズ!」シリーズの展開と並行する時期にあって開始された同一レーベルからの書き下ろしパッケージ作品であり、氏の得意とするスラップスティックで畳み掛けるようなギャグ展開とハリウッド映画もここまでは中々やらない誇張塗れのド派手な大立ち回りを余人では想像も付かない独創的な擬音語と明瞭な描写力によってこれでもかと叩き付け、同じ流れを受け継ぎながら怒濤のシリアス展開を打ち込んでくる作風で以て「スレイヤーズ!」シリーズからは一変した「SFチック(氏曰くSF識者に怒られそうなのでこう表現したいとの事)」な物語が描かれる作品となっています。

その独創的ながら「目に浮かぶ」或いは「五感に訴えかける」表現からなる説得力は、ライト「ノベル」でありながらまるでマンガやアニメかのように目に浮かぶものとなっています。
キャッチーで魅力的、説明的になりすぎない「文脈の担い手」となるキャラクターもまた、ともすれば広がり過ぎになりかねない作品を力強くまとめ上げ、ご都合主義になりすぎない「危なっかしさ」で以て物語を盛り上げます。

精神力を燃料にあらゆる物理をねじ曲げるような超技術全盛の時代にあって光線「剣」とマントを振りかざす、どんな時代、世界にあっても一人は居そう?な無頼漢の青年ケインを主人公に、危ない仕事のマネジメントと「アルバイト」をこなす敏腕ながら己の装備を強化する事に掛けては趣味全開のオンボロ?宇宙船搭載の美少女AIキャナル、天才的射撃センスと破壊的感性で以て状況を引っかき回す行きずりの美少女探偵ミリィを相棒に、バディ・アクションよろしく物を壊してサイバーパンクな街を駆け、包囲を破って宇宙を走る疾風怒濤のアクションエンターテインメント作品となっています。

1巻毎に完結するエピソードでそれぞれは中編から長編程のボリュームであり、一気に読んでしまえる爽快な読書感を楽しんで頂ける一作です。

サイバーパンクな魔術的世界を味わう

無限に拡がる大宇宙、立ちはだかるは悪の秘密結社を操る「魔王」?!超技術で組み上げるサイバーパンクな魔術的世界、極彩色に彩られた混沌を味わう!

本作は精神物理学…人間の精神力を物理現象へと昇華させる超技術によって一挙に宇宙をその生存領域として広げながら、何らかの理由によってその超技術を遺失した後、その技術を遠く失われた伝説として認識する程度に広大な領域で生きて行く事が当たり前となった世界を舞台として展開されます。

そんな世界にあって、知る人ぞ知る「魔法のような」技術となった「遺失技術(ロスト・テクノロジー)」の実存を知り、星間複合企業として宇宙一帯に知れ渡る表の顔を用いて星系の技術を集め、或いは与せぬ技術を「掃いて捨てる」ようにして暗躍する秘密結社「ナイトメア」…主人公達と因縁浅からぬその総帥こそは、文字通りの「魔王」と化した遺失技術から生まれた知性であり、魔性の存在が僕を殖やすようにして居並ぶのは「魔王の武器」としての名を与えられたいずれ劣らぬ超技術の塊に知性を与えられた強力無比の宇宙戦闘艦達と、世界観こそSFもかくやという背景を持ちながら立ちはだかるのはファンタジー世界における「魔王の軍勢」を彷彿とさせる凝った作りが為されています。
先においてライトノベル作家の「神坂一」氏が、代表作である「スレイヤーズ!」シリーズの展開と並行するように刊行された事について触れましたが、この意匠は氏が作り置いた数々の「構想」から、それらしい物語を作れると判断された「名前」等を引き出して再構成したものであると公言されています。

その中には正に「スレイヤーズ!」においても触れられた「世界を形作る幾柱かの魔王」の名として登場する「赤眼の魔王」と並び本作における「魔王」である所の「闇を撒く者(ダークスター)」、そして魔王の武器たる「烈光の剣(ゴルン・ノヴァ)」とされる名前も登場するなど、当時のファンダムにおいては作品世界をまたぐ「クロスオーバー」の要素に胸を躍らせた読者は決して少なからぬものでした。
残念ながらこの展開に関しては、後に「神坂一」氏本人が言及する所によってクロスオーバーまで見据えたものではなく、構想の中にあった名称を組み立て直したもので今後展開を広げる予定は無いと公言されるものではありましたが、而してその「名前で結ばれた全く姿の異なる複数世界の並行するイメージ」において、ファンへ与えた強烈な印象が薄れるものではなく、今日において多数のライトノベルが生まれる礎となった時期の作品として大きな影響を与えている事を感じずには居られないものとなっています。

作品のイメージ性、ビジュアル性と言える部分を追求し、詰め込まれた描写力によって構築する事で「世界観」をも形成していくという作品性によって「ライトノベル」ひいては「エンターテインメント」の可能性を大きく広げた作品とも言える本作は、ジャンルという枠組みを考える上でも是非ご一読頂きたい作品であると言えるでしょう。

ヤシガニの伝説

本作は原作小説5巻からなる作品として完結しているものですが、今日のインターネット界隈においてはネットミーム化した「作画崩壊」を表わすスラング「ヤシガニ」と共に語られるアニメ版をご存じの方も少なくないかもしれません。

当時、アニメ版「ロスト・ユニバース」は、オープニングから既に未完成のままで放送、本編でもキャラクターが認識できない程の作画や影が描かれないなど、いわゆる作画崩壊の状態で放送されていたのです。
そんななか、前編作画崩壊をしていると有名な、第4話「ヤシガニ屠る」が放送されてしまいます。

原作とのスケジュール調整が上手く行っていない未完結作品のアニメ化、無茶な製作期間の上で当時まだ技術が確立しきれていいないフルCGパート、予算不足などでのレベルの低い韓国スタジオに丸投げ、そこにさらには製作側の軋轢等が原因で、メディアミックスにおける禍根事例として「ロスト・ユニバース」は不本意な理由で悪名を轟かせる事となってしまいます。

しかしアニメーション制作におけるCG演出導入を加速させた野心的作品としての一面も持ち合わせており、90年代を彩ったユーロビート調のテクノ・ポップスサウンドと合わせて現代のアニメ界隈に至るものとなっています。

完結した物語として本稿では原作小説を紹介させて頂くものですが、原作の存在を前提とした上で「更にこうした作品が作られる土台があった」という事実を物語る派生作品としてアニメ版の存在も楽しんで頂ければと思う次第です。

にゅうもんさん
撃つはレーザー、爆ぜるはプラズマ、振って唸るは光線剣!技術的背景を考えるのも楽しいですが、ビジュアルで攻めつつ「それらしさ」を補強していく世界があっても良い…そのせめぎ合いもまたSFの醍醐味だと思うのです。

(C) ロスト・ユニバース 神坂一・義仲翔子/富士見書房・テレビ東京・テレビ東京メディアネット

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