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原作の匂い立つハードテイストを継承「LUPIN THE IIIRD 次元大介の墓標」

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かの高名なる「怪盗紳士」・・・その孫はなんと日本の血を引いていた・・・ともすれば素っ頓狂な触れ込みで「劇画」の世界に降り立って、愛される事今や五十と有余年。

クールジャパンの大看板も軽く着こなし鯔背に微笑む伊達なワル、その名もご存じルパンⅢ世・・・今やその姿は生みの親である故「モンキー・パンチ」氏の原作以上にアニメーションで縦横無尽に走り回る姿が知名度を押し上げていると言えるでしょう。

本作はその「原作」が持つ、オシャレでお茶目なハンサムガイの一面に、触れれば切れる鋭い「影」の部分を踏襲したハードな味わいを前面に押し出したシリーズの一篇です。
いつもとは少し違う凄みのある「ルパンⅢ世」のちょっとアブない深みには、はまり過ぎにご用心?!

目次

その大胆「すぎる」表現こそが「アニメーションならばこそ」!艶めかしくすらある濃密表現が苛烈な一瞬を抉り出す「動く劇画」の世界に浸る!

「LUPIN THE IIIRD=ルパンⅢ世」と言えば、故「モンキー・パンチ」氏の作品を原作とし、そのちょっぴりお茶目でクールを気取った2枚目半の「アニメーション界の」アクションスターとして、今や日本はおろか世界的にもその名と姿が知られるキャラクターと言える一人でしょう。
しかし故「モンキー・パンチ」氏の原作となった漫画において、今日良く知られる軽妙でヒロイックな姿はさる事ながら、その決して明るいとは言えない「闇社会の血を引く者」という影を背負うようにしてそれに拘泥もせず、華やかに刹那的に生きるニヒルなヒールヒーローとしての「生き様」のようなものが彫り込まれた姿が「劇画」と呼ばれた陰影の濃いタッチで力強く描き出されます。

本作「LUPIN THE IIIRD 次元大介の墓標」は、この「劇画」の表現…アクション映画を彷彿とさせる大胆なカットワークや陰影表現、言葉ではなく圧力すら感じさせる日常では有り得ない動作や、或いは動きに言葉を載せていくような「漫画的」表現を「アニメーションだからこそ実現出来る表現」として作り込んでいく「濃い」映像が最大の注目点となる作品です。
この濃密表現を作り上げるのは、緻密な描画によって「艶めかしさ」すら感じさせる俊英「小池健」監督。

特筆すべきは、その躍動する肉体感覚を圧縮された時間を「肌で」感じ取るかのような鋭敏さを持つ「世界”感”」と、それを余すこと無く出力していく卓越した描画力から作り上げられる「スーパースローな表現」です。
本作においては正に一瞬の交錯である「銃撃戦」…それも「最速の早撃ちガンマン」対「必殺の狙撃手」が織り為す、極限の緊張から放たれる暴虐という「静と動」が極めて明瞭且つ猛烈な速度で転換する世界として描かれます。

時には闇夜、影すら動かない静止した世界でわずかに影が揺らめいた次の一瞬、銃口から放たれた一撃は標的をゆっくりと穿ち、根こそぎに破壊し、引き裂いて行く…或いは晴天の空の下、不釣り合いに無骨な金属の塊が巨大な弾丸を大穴から揺らめく炎と共に吐き出し、柔らかな人体を抉り抜き、引き摺り、ゆっくりと破壊していく…そんな「一瞬の中で起きるが故の暴力」を「連続した絵」であるからこそ描き出せる「劇的な動き」として見せ付ける「小池健イズム」とでも表現したくなる映像表現が、故「モンキー・パンチ」氏が作り上げた「ルパンⅢ世」の「影の濃い部分」と見事にマッチングを果たしていると言えます。

2つのイデオロギーが激しく衝突している事を象徴するような世界を舞台に、未だ闇社会を一人で生き抜こうと決意したばかり、抜き身の野心が燃え盛る若き日のルパンⅢ世と、闇社会で生きる故に殺意を凍り付かせたガンマン次元の「影に生き」「照らし出された時には死ぬ」ような表現をご堪能下さい。

映像を支える大胆なストーリーテリング。アニメーションという「世界」なればこその「語らざる者が語る」表現を味わう!

「LUPIN THE IIIRD」というタイトル通り「ルパンⅢ世」を主人公とする物語ですが、一方で「次元大介の墓標」というサブタイトルが表わすようにシナリオの主軸は無愛想な凄腕ガンマンである「次元大介」と、彼の護衛対象を標的とする超一流の狙撃手が繰り広げる「ガンマン対決」である…という、表題からして物語性の富んだ「遊びのある」構成が為されるものとなっています。

物語の背景としても、大怪盗「ルパンⅢ世」が闇社会でその名を轟かせ「始めた」頃、未だ「ルパン一味」が馴染みの関係となる以前という切り口で描き出されており、後の作品でこそ信頼する同業者となったルパンを始めとする関係者には心を許すような姿を見せる次元も、本作においては一匹狼。
闇社会において立ちはだかる者を打ち倒し続けているからこそ生き存えている文字通りの「凄腕」として、他者に心を許しはしない口数も表情も少ない男として描き出されます。

対する狙撃手はと言えば、その超一流の腕前と引き替えに人間性と言える物を削ぎ落とした異相の人物であり、弾丸や手口に独特のこだわりを見せるものの、その射撃は正射「必殺」・・・引き金を引く一瞬まで時が止まり、憎悪も歓喜も無くただ純然たる殺意のみで「待つ」事の出来る機械染みた人間として描かれます。

その両者相「撃つ」戦いは、ただ「一撃」の必殺を巡って音も無く削り合う「目と耳」の戦いであり、世界を「俯瞰して捉える」事の出来る「アニメーション」という技法であればこそその「姿無き圧力」を全編通じてみっしりと詰め込む事が出来たと言えるものかもしれません。

そのシニカルで謎掛けめいた静かで熾烈な物語を隠密裏に駆け回り、語られざる謎を語り「明かし」て見せるのは、我らがトリックスター「ルパンⅢ世」を置いて他に無し…とばかりに、主人公としての役回りを存分に果たして行く事となります。
二人のガンマンが互いの腕と意地を賭けてその一撃を巡る戦いの裏で、言葉無き「不文律」として、この戦いにも影響を及ぼしてきた「影」・・・そこに見え隠れする、オールドファンなら思わず声を上げずに居られない「あの姿」も含めて、静かで濃密な「物語」からは最後まで目が離せない事請け合いです。

原作を彷彿とする「劇画」の風情

本作で特に目を見張るのは、その原作を彷彿とする「劇画」の風情に集約されると言えます。
アニメ版の明るくヒロイックな雰囲気も大きな魅力ではありますが、原作とはその雰囲気において大きな違いと感じられてしまう部分も実は少なくありません。

優劣の問題ではなく、その「ルパンⅢ世」というキャラクター性が大きな懐を持って描かれてしまうという所にあって希有な存在である事を意味するものと言えるでしょう。
その意味において、本作の「濃厚な」雰囲気に興味を持たれた方は、是非この「小池健監督作のルパンⅢ世シリーズ」の他に、原作漫画版のルパンⅢ世も手にとって頂きたいとオススメする次第です。

クールで凄腕だけど美人に弱くて憎めない・・・そんな「国民的トリックスター」が「信頼を寄せる仲間の前でこそ」垣間見せる「闇に生きる」姿とは!原作へ寄せた影の濃いハードなテイストで描かれる、他作品とは一味違った「怪盗一味」の姿をとくとご覧あれ!

KADOKAWA / 角川書店
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モンキー・パンチ (C) TMS

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