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米陸軍で廃止される、M1128ストライカーMGSとは?

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2021年6月、アメリカ陸軍は配備開始が2007年からと比較的新しい兵器であった装輪式自走砲M1128ストライカーMGSの運用を2022年中に中止とすると突如として発表された。
「装輪式自走砲」とは戦車などと異なり足回りに履帯ではなく車輪を装備し、砲塔部には対戦車戦闘も可能なサイズ・威力の主砲を装備した装甲車両の事で、その見た目から「装輪戦車」と称される事もある。

アメリカ陸軍のM1128ストライカーMGSのMGSとは「モバイル・ガン・システム」の頭文字であり、これは機動砲とも訳され、同軍ではこの車両のみで構成される「ストライカー旅団」に合計142両を配備している。
この「ストライカー旅団」を構成するM1128ストライカーMGSをアメリカ陸軍は新型車両などで代替するのではなく、部隊毎一旦廃止する模様で、近年のトレンドとも言われた「装輪式自走砲」に一石を投じたとも言えよう。

目次

そもそもM1128ストライカーMGSとは如何なる戦闘車両なのか?

今回廃止が伝えられたアメリカ陸軍のM1128ストライカーMGSとは、同軍の装輪装甲車・ストライカーシリーズの1車種であり、兵員輸送用の装甲車のM1126 ストライカーICVをベースに派生型として開発された。

M1126 ストライカーICVも、大元はアメリカの軍需企業であるジェネラル・ダイナミックス・ランドシステムズ社がカナダ軍向けに開発した8輪装甲車の「LAV-III」で、これをアメリカ陸軍が採用した車両である。
M1128ストライカーMGSに搭載されている主砲は、イギリスのロイヤル・オードナンス社が開発した105mmライフル砲がベースで、アメリカ陸軍のM-60パットンや、日本の74式の戦車砲としてもよく知られている。

M1128ストライカーMGSは、重量18.77トン、全長6.95メートル、全幅2.72メートル、全高2.64メートルで、主砲の51口径105mmライフル砲は自動装填方式につき、車長・砲手・操縦手の3名での運用が可能である。
「装輪式自走砲」は各国の軍によってその運用のコンセプトが異なるが、アメリカ陸軍ではM1128ストライカーMGSをあくまで歩兵部隊を近接火力支援する車両と位置づけており、本格的な対戦車戦闘は想定していない。

そのため対戦車戦闘と主任務とする車両としては、同じストライカーシリーズにM1134 ストライカーATGMが別に用意されており、そちらで対処する運用が基本となっている。
M1128ストライカーMGSは、最高速度96キロメートル、航続距離530キロメートルを誇るアメリカのキャタピラ社製のターボ・ディーゼルエンジンを搭載しており、空輸も可能で迅速な展開が企図された車両だった。

Sgt. William Tanner, Public domain, via Wikimedia Commons

世界各国の「装輪式自走砲」

アメリカ陸軍は今回M1128ストライカーMGSの2022年中での運用廃止を決定したが、世界各国では無論多数の「装輪式自走砲」が運用されており、以前から採用されている車両も当然のように存在する。

そうした「装輪式自走砲」の主な例としては1978年から配備を開始したフランス軍のAMX-10RCや、1991年に配備を開始したイタリア軍のチェンタウロ等があり、特に前者は中東やアフリカの実戦にも投入されいる。
逆にM1128ストライカーMGSより後に採用されたのもには、その影響を色濃く反映し2016年に陸上自衛隊で採用された16式機動戦闘車や、2011年に配備が開始された中国の11式水陸両用突撃戦闘車などがある。

フランス軍のAMX-10RCは、重量17トン、全長6.24メートル、全幅3.05メートル、全高2.73メートルで、主砲は48口径105mmライフル砲、乗員は4名で最高速度は85キロメートルとなっている。
イタリア軍のチェンタウロは、重量26トン、全長7.40メートル、全幅2.95メートル、全高2.60メートルで、主砲は52口径105mmライフル砲、乗員は4名で最高速度は108キロメートルとなっている。
陸上自衛隊の16式機動戦闘車は、重量26トン、全長8.45メートル、全幅2.98メートル、全高2.87メートルで、主砲は52口径105mmライフル砲、乗員は4名で最高速度は100キロメートルとなっている。
中国の11式水陸両用突撃戦闘車は、重量26トン、全長8.00メートル、全幅3.00メートル、全高2.10メートルで、主砲は105mmライフル砲、乗員は4名で最高速度は100キロメートルととなっている。

M1128ストライカーMGSをアメリカ陸軍が廃止する理由

今回廃止が伝えられたアメリカ陸軍のM1128ストライカーMGSだが、その理由とは主砲である51口径105mmライフル砲に纏わる諸問題が最も懸念された為だと言われている。
M1128ストライカーMGSの51口径105mmライフル砲は、アメリカ陸軍としては初めて採用した砲弾の自動装填システムを備えたものであり、これ故に装填手を不要としていたが早くからその不具合も指摘されていた。

その不具合の解消が十分に図れなかった事に加え、そもそものシステム自体が急速に時代遅れと化してしまい、今後の運用に照らした場合、維持コストの増加に見合う戦力とはならないと判断されたと言える。
またM1128ストライカーMGSの内部は構造的に51口径105mmライフル砲を搭載するにはスペースが狭く、加えてアメリカ陸軍が想定する運用には元々オーバースペックな大型砲であったとも伝えられている。

ベースの兵員輸送用M1126 ストライカーICVには、遠隔操作型無人銃架に12.7mmM2重機関銃等が搭載可能で、これに加えFGM-148ジャベリン対戦車ミサイルを併用する事でM1128ストライカーMGSの代用となる模様だ。

Sgt. Mark Miranda, Public domain, via Wikimedia Commons

M1128ストライカーMGS廃止に見る装輪式自走砲の未来

アメリカ陸軍はM1128ストライカーMGSの運用廃止を決定したが、同じ装輪式自走砲のフランスのAMX-10RC、イタリアのチェンタウロ、日本の16式機動戦闘車、中国の11式水陸両用突撃戦闘車への早急な影響はないだろう。
前述のようにフランスのAMX-10RCやイタリアのチェンタウロは、アメリカ陸軍がM1128ストライカーMGSを採用する以前から配備されており、両国の国情から軽戦車の代用として対戦車戦闘にも重点を置いているからだ。

中国の11式水陸両用突撃戦闘車については正直判断が困難だが、日本の16式機動戦闘車はこれまで北海道への旧ソ連・現ロシア軍の上陸を危惧して戦車の配備を行っていた状況が薄らいでいる事から影響は少ないだろう。
これは現在最大の仮想敵国となった中国が仮に南西諸島に仮に上陸してくるにせよ、大きく重い戦車は考え難く、正に11式水陸両用突撃戦闘車等が送り込まれる可能性が高く、16式機動戦闘車での対応が理に叶うように思える。

featured image:Sgt. William Tanner, Public domain, via Wikimedia Commons

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