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殺人事件の被害者がラップ現象で状況再現~ハイズビル事件~

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19世紀にニューヨーク州ハイズビルの屋敷で起きた伝説の心霊現象。
近代オカルト文化もスピリチュアリズムも、すべてはこの事件からはじまった?!

目次

幽霊さん、あなたはだあれ?

1843年、ニューヨーク州の田舎町ハイズビルの一軒家に、ある家族が引っ越してきた。
ところが住みはじめてまもなく、家の中で奇妙な音が聞こえはじめた。指をパチンと鳴らすような音、ドアを叩く音、誰かが廊下を歩き回る音は毎晩続き、一家は3か月で屋敷を出ていった。
3年後、別の家族が住人になった。やはり不気味な音はたびたび聞こえ、子どもが夜中に冷たい手で顔を触られるという体験もして、やがて転居した。
そして1847年、今度はフォックス一家がやってきた。怪奇現象は、まるで自分の存在を訴えるかのようにいつまでも続いた。

ある日のこと、末っ子のケイトが勇気をだして音の主に話しかけた。
「幽霊さん、聞こえてる? あたし、ケイト。あたしと同じようにやってみてよ!」
ケイトがパチンと指を鳴らすと、すぐにラップ音が応えた。
姉のマーガレットも参加して、音が一度ならイエス、二度ならノーという対話方法で、霊とのコミュニケーションがはじまる。

娘たちのようすに気づいた両親もそばにやってきた。
「あなたは誰なんだ? なぜこの家に住みついている?」
霊は沈黙した。この聞き方では答えようがない。
「あなたは死んだ人間なのか? イエスなら一度鳴らしてくれ」
ひときわ大きい音が一回返ってきた。すかさず夫人が質問を投げかける。
「うちの娘たちの年齢がわかりますか?」
三姉妹のリア、マーガレット、ケイト、一人ひとりの年齢の数の音が響いた。驚いたことに、他界した末娘のぶんまで正確に鳴ったと夫人は証言している。

5年前の殺人事件

それからしばらくたち、一家は近所の住民を500人ほど集めて霊との交信を試みることになった。
名前や地名、霊が言いたいことを聞くために、アルファベットをA、B、Cと順に読んでいき、該当する文字のところでラップ音を鳴らしてもらうという方法をとった。この対話で判明したのは以下の通り。

彼はチャールズ・ロスマという行商人で、妻と5人の子がいること。5年前にこの屋敷に泊まった時、ジョージ・ベルという男に所持金を奪われて殺されたこと。それは火曜日の深夜0時で、包丁で喉をかき切られたこと。遺体は地下室に埋められたこと。きちんと埋葬してほしいこと。

話はまたたく間に方々に伝わり、さっそく大勢で地下室を掘り起こしてみると、土中から出てきたのは人骨、毛髪、歯。残念なことに、それらがロスマのものと特定するまでには至らなかった。
その後、フォックス家では深夜になると、殺害が行われた瞬間の状況が音で再現されるようになった。人間が争う音、うめき声、死体を引きずる音、シャベルで土を掘り起こす音。これが今なお論争の絶えないハイズビル事件の発端である。

フォックス三姉妹の画像

■フォックス三姉妹See page for author, Public domain, via Wikimedia Commons

フォックス姉妹の霊媒能力をめぐる論争

霊と交信できる姉妹のニュースは新聞に取り上げられ、村を越えてアメリカ全土からヨーロッパにまで広がった。
次女マーガレットと三女ケイトは霊媒師として脚光を浴び、交霊会をはじめとする興行で一大交霊ブームをを巻き起こす。彼女たちは学術研究の対象になり、心霊研究家や大学の学術関係者を巻き込んだ真贋論争も勃発。このハイズビル事件をきっかけに心霊科学研究が本格的に行われるようになっていく。アメリカやヨーロッパでは、霊媒師を名乗る者が次から次へと現れた。

興行のパフォーマンスが反響を呼ぶにつれて、金銭もからみだした。霊媒師のマーガレットとケイト、二人のマネージャー的存在の
長女リア。全米各地でのデモンストレーションの結果として、姉妹は莫大な富を手にする。一説には、歳の離れた長姉リアが金儲けの手段として妹たちを利用したとも、そのために妹たちと確執が生まれたともいわれる。

1851年になると、バッファロー薬科大学が「ラップ音の正体は、膝や足首の関節を鳴らしたトリック」とする調査結果を発表。
さらに1888年には、マーガレットも自作自演を認める手記を新聞に発表した。懐疑論者たちが勝利にほくそ笑むなかで、彼女たちを本物の霊能者とみなし、外圧に屈して嘘の種明かし発言をしたとみる者も依然として少なくなかった。

半世紀を経て白骨死体が発見される

マーガレットが告白に至った背景には、プロモーターとして妹たちを支配していた長姉リアへの復讐心があったといわれる。ニューヨーク・ワールド紙に掲載された告白文からは、拝金主義のリアに対する強い憎悪が読みとれる。
またカトリック教会の圧力があったことや、反スピリチュアリズム団体から買収されたという本人の証言も見逃せない。反対派による周到な裏工作があったのだろうか。

わずか1年後、マーガレットは告白を撤回し、ケイトとともに霊媒師として再起する。霊媒の活動を再開したということは、彼女たちが自らの霊能力を信じていた証とも解釈できる。はたして本物の霊媒師だったのか、偽霊媒師だったのかは議論が分かれるところだ。

時は流れ、1904年。ハイズビル事件から56年目になるこの年、フォックス一家のかつての屋敷はすでに廃墟になっていた。
ある日、幽霊屋敷で遊んでいた少年たちが、崩れた地下室の壁に人骨らしきものを発見する。調査の結果、壁は二重壁であったことが判明し、中から一体分の人骨と、「チャールズ」と刻まれた行商人用の錫の箱が見つかった。ここに及んで、やはり事件は心霊が引き起こしたものであり、マーガレットは圧力に屈して告白に至ったとする見方が強まった。しかし、錫の箱に関してはトリックと主張する心霊研究家もいる。

ハイズビル事件の詳細については、文献によって記述に揺れが多い。記録に頼るしかない現代人にとっては、どの情報に信をおけばよいのか判断に迷うところだ。
この出来事が本当に心霊現象だったのか、またフォックス姉妹が霊媒能力の持ち主だったのかどうかについては、今となっては判断することができない。
マーガレットとケイトはいずれも離婚を経験し、アルコールにおぼれ、貧困にあえぎながら、生涯をとじるまで心霊現象は事実だったと主張し続けた。少なくとも彼女たちの運命を狂わせたのがハイズビル事件だったことは疑いようがない。

※アイキャッチ画像はイメージです。
Photo by Ján Jakub Naništa on Unsplash

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